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51話 片鱗 3

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 入ったばかりの森を出て、10mほど距離を取る。

(これくらい距離があれば、突然魔物が現れても、魔法が間に合うはずだ)

 意識を外した為か、消えてしまったウインドウをもう一度呼び出す。

(【空間察知】)

 視界には半透明のウインドウが出現する、まばたきして気付いたが、目を閉じるとハッキリと見える。

 ウインドウの背景は濃い藍色、縦横に白く細いラインで区切られていて、森の木々も白いラインで描かれている。

 目を開けると半透明に表示されるが、不思議と視界の邪魔にならないし、画面が見づらい事も無い。

 グリッドは5m分割くらいだろうか、意識するだけで、自分の見ている角度に合わせた立体表示、上から見た俯瞰表示に切り替えられる。
 今見えている範囲は…30mくらいかな?今のところ木しか表示されていない。

 一度"空間察知"を切り、スキル詳細を見る、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【空間察知】
(【D・S】職業スキル)
パッシブスキル。
空間を把握し、広範囲の状況を知る事が出来る。
レベルアップ毎に把握出来る範囲が広がる。

動的存在は、マークによりその向きが確認可能。
マークの色で区別が可能。
 ・赤…敵意のある存在、または使用者が敵として認識している存在。
 ・青…敵意を持たない存在、または使用者が味方として認識している存在。
 ・黄色…上記のどちらに分類されるか、不明な存在。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 これは…
 自分の認識を信じ過ぎて油断していると、近くの青マークが突然赤マークになって襲われたりしそうだな、ニンゲンコワイ。

 出会って無い魔物はたぶん黄色表示なんだろう、向こうが気付けば、敵意を向けて来て"赤マーク"に切り替わるのかな?

 オレの"不意打ち作戦"だと敵対的か分からないな。
 人に敵意を持たない魔物なんて、いるか知らないけど、黄色には【鑑定】を忘れないようにしよう。



(なんだか出鼻を挫かれたけど、大幅な安全性アップだ、使いこなしていくぞ)



 気を取り直し、"空間察知"を使いながら森へ入る。
 気を抜いてはいないが、自分の周囲が安全だと分かるのは精神的負荷がかなり下がる。

 あまり奥に入らないよう、森の外周をなぞるように進んでいくと、察知範囲に黄色い三角マークが、入り込んで来た。
 マークは二等辺三角形になっていて、1つだけ鋭い角("頂角"って言うんだっけ?)が向いている方向のようだ。

 マークはまだ30mは離れている。
 進行方向から推測すると、20mほど離れた場所を、横切って行きそうだ。




 その場でしゃがみこみ、少し待っていると、草をかき分ける音が聞こえて来た、遠く木々の間から見えるその姿を確認する。

 全身焦げ茶色の毛に覆われ、着けているのは腰ミノひとつ、犬のような顔に、手には木製の棍棒。

(…【鑑定】)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コボルド
レベル:9
種族:獣魔
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(かなり弱い個体だな)


 そう、これからのオレの実戦訓練の相手は、コボルドだ。
 ゴブリンと同等かそれ以上の膂力りょりょく、動きは素早く鼻もきく、今回は一体だが、群れる事も多く、また、離れた仲間を呼ぶ習性もある。

 とりあえず、いつもの"不意打ち空間弾"を決める為に、位置を調整しようと、なるべく音を立てないよう、ゆっくり動き出す。


…ササ、カサッ、…………
足裏の感覚が、柔らかい土と草から、突然硬たくなった瞬間、足音が消える。
 足元を見ると、足より一回り大きなサイズの、濃い藍色の板を踏んでいる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
職業スキル【空間蹴り】を習得しました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 音を立てないよう、静かに森を出る。






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