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第15話 知らないエピソード(2)
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4歳頃までは仲が良かったノアとルイス。
それじゃあ、二人の仲に亀裂が入ったのはいつだろう?
「ノア! あのね、あのね!」
「ん?」
そんなことを考えていると、嬉しそうにルイスがおれに話し掛けてくる。
「グッドマン先生がね、今からたくさん本を読めばなれますよって!」
「え、何に?」
ルイスが何のことを言っているのか分からず、聞き返してしまう。
「お医者さん!」
「お医者さん?」
「うん!」
「誰が?」
「ぼくが!」
要約すると、今からたくさん本を読めばお医者さんになれるとグッドマン先生がルイスに言った。
お医者さんになるのはルイスらしい。
「………。えっ! ルイス、お医者さんになりたいのか!?」
「うん! ノアが大きくなったら騎士になるから、ぼくはお医者さんになってノアが怪我したら治してあげるの!」
ノアが将来有望な騎士に見込まれているのはゲームで知っている。
だけど、ルイスが医者になりたいなんて初耳だ。
ゲーム内でもルイーザの学園卒業後の進路は語られてなかったはずだ。
廃嫡&国外追放で平民になるルートでは、ルイーザが平民になって何の仕事に就くかまではストーリーになかった。
ルイーザは平民の暮らしが始まる前に惨殺されてしまうから、ストーリーには不要だったからかもしれない。
「そっか。ルイスはお医者さんになりたいのか……」
初めて知るルイスの将来の夢。
ゲーム内では知り得ないエピソードだ。
(ルイーザのことを知れて嬉しいな)
思わず顔がにやけそうになるのをおさえる。
「うんっ。マテオ兄さまがファフェイス家を継いだら、“スペア”と“オマケ”のぼくたちはいらないからとっとと家から追い出すんだって。だから、ちゃんとした職に就きなさいってお父さまが言ってたよ」
「………」
笑顔で爆弾発言をするルイスに嬉しさが一気になくなった。
……幼い子どもになんてこと教えてるんだ、父親。
それが爵位を継げない子どもが辿る事実だとしても、もうちょっと言い方ってもんがあるだろう。
明らかに4歳くらいの子どもが喋る内容じゃない。
だけど、幼い頃から自分の身の振り方を教え込むのが貴族の教育だとすると、平凡な日本人だったおれの考えは異端になるんだろう。
(そういえば、長男以外の爵位を継げない子どもは爵位によるけど教師や医者、騎士や文官、あとは爵位が高い家の使用人になったりするんだっけ?)
日本でいえば、”お堅い職業”に就くのが多いのかもしれない。
男なら爵位を継ぐ該当者がいない遠縁の養子になって別の家の爵位を継ぐとか、女なら嫁いで跡取りを産むとかだろうか?
ノアが騎士になることはファフェイス家を継がないから決まっているんだろう。
(ノアはこんな小さい時から騎士になることをルイスに言ってたのか)
父親によって勝手に決められたのか、ノアが自分で決めたのかは分からない。
貴族の子どもに生まれたら、産まれた順番も関係してこんなに早く将来が決まってしまうのか。
日本の男子高校生だったおれは将来、具体的にどうなりたいかは大学に進学したらゆっくり考えようと思っていた。
ただおれが呑気だっただけかもしれないけど、そういう考えを持ってたのはおれだけじゃないはずだ。
(此処はダブハーの世界とはいえ、現実なんだな)
おれから見たら、ダブハーは作られたゲームの世界だった。
「ノア、どうしたの?」
おれの手を握るルイスの手は温かかった。
目の前にいるルイスは生きている。
それはつまり……。
(ゲームのように、やり直しは出来ない……)
ルイーザが破滅しても、ゲームみたいにリセットすることが出来ない。
いくらおれが異世界転生でノアになったとはいえ、ループ出来るとは限らない。
4歳頃までは仲が良かったノアとルイス。
それじゃあ、二人の仲に亀裂が入ったのはいつだろう?
「ノア! あのね、あのね!」
「ん?」
そんなことを考えていると、嬉しそうにルイスがおれに話し掛けてくる。
「グッドマン先生がね、今からたくさん本を読めばなれますよって!」
「え、何に?」
ルイスが何のことを言っているのか分からず、聞き返してしまう。
「お医者さん!」
「お医者さん?」
「うん!」
「誰が?」
「ぼくが!」
要約すると、今からたくさん本を読めばお医者さんになれるとグッドマン先生がルイスに言った。
お医者さんになるのはルイスらしい。
「………。えっ! ルイス、お医者さんになりたいのか!?」
「うん! ノアが大きくなったら騎士になるから、ぼくはお医者さんになってノアが怪我したら治してあげるの!」
ノアが将来有望な騎士に見込まれているのはゲームで知っている。
だけど、ルイスが医者になりたいなんて初耳だ。
ゲーム内でもルイーザの学園卒業後の進路は語られてなかったはずだ。
廃嫡&国外追放で平民になるルートでは、ルイーザが平民になって何の仕事に就くかまではストーリーになかった。
ルイーザは平民の暮らしが始まる前に惨殺されてしまうから、ストーリーには不要だったからかもしれない。
「そっか。ルイスはお医者さんになりたいのか……」
初めて知るルイスの将来の夢。
ゲーム内では知り得ないエピソードだ。
(ルイーザのことを知れて嬉しいな)
思わず顔がにやけそうになるのをおさえる。
「うんっ。マテオ兄さまがファフェイス家を継いだら、“スペア”と“オマケ”のぼくたちはいらないからとっとと家から追い出すんだって。だから、ちゃんとした職に就きなさいってお父さまが言ってたよ」
「………」
笑顔で爆弾発言をするルイスに嬉しさが一気になくなった。
……幼い子どもになんてこと教えてるんだ、父親。
それが爵位を継げない子どもが辿る事実だとしても、もうちょっと言い方ってもんがあるだろう。
明らかに4歳くらいの子どもが喋る内容じゃない。
だけど、幼い頃から自分の身の振り方を教え込むのが貴族の教育だとすると、平凡な日本人だったおれの考えは異端になるんだろう。
(そういえば、長男以外の爵位を継げない子どもは爵位によるけど教師や医者、騎士や文官、あとは爵位が高い家の使用人になったりするんだっけ?)
日本でいえば、”お堅い職業”に就くのが多いのかもしれない。
男なら爵位を継ぐ該当者がいない遠縁の養子になって別の家の爵位を継ぐとか、女なら嫁いで跡取りを産むとかだろうか?
ノアが騎士になることはファフェイス家を継がないから決まっているんだろう。
(ノアはこんな小さい時から騎士になることをルイスに言ってたのか)
父親によって勝手に決められたのか、ノアが自分で決めたのかは分からない。
貴族の子どもに生まれたら、産まれた順番も関係してこんなに早く将来が決まってしまうのか。
日本の男子高校生だったおれは将来、具体的にどうなりたいかは大学に進学したらゆっくり考えようと思っていた。
ただおれが呑気だっただけかもしれないけど、そういう考えを持ってたのはおれだけじゃないはずだ。
(此処はダブハーの世界とはいえ、現実なんだな)
おれから見たら、ダブハーは作られたゲームの世界だった。
「ノア、どうしたの?」
おれの手を握るルイスの手は温かかった。
目の前にいるルイスは生きている。
それはつまり……。
(ゲームのように、やり直しは出来ない……)
ルイーザが破滅しても、ゲームみたいにリセットすることが出来ない。
いくらおれが異世界転生でノアになったとはいえ、ループ出来るとは限らない。
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