9 / 16
第8話 長谷川優希という人間(2)
しおりを挟む
.
海水を掛け合う水遊び、砂でお城を作る、ビーチバレー、ビーチボールでドッジボール、ビーチ・フラッグス、水着のお姉さんを眺める。
高校生にしては海水浴で結構な種類を遊べていたんじゃないだろうか。
当初の目的であるナンパが無理だったから『やることがなくなった……』と意気消沈していたが、遊び出したらおれたちは楽しくなっていた。
そんな中、ライフセーバーが誰かと揉めているのを目撃した。
どうやらライフセーバーは遊泳禁止エリアへ行こうとする親子連れを注意しているらしかった。
父親と小学校低学年くらいの男の子が2人。
父親らしい男がライフセーバーに怒鳴っているのを見て、『ああいう人たちって何処にでもいるよな。おれたちはああならないようにしような』と反面教師にしようと心に誓った。
怒鳴られても引かないライフセーバーに、父親は子どもを連れて怒りながら海の家へ向かって行った。
『今日は天気が良いけど、波が高い』
海の家で男性店員が教えてくれた情報を元に、遊泳禁止エリアへ行かないのは絶対だけどおれたちは海で泳ぐの自体を
やめようと話し合っていた。
理由は、波が高いと溺れる確率が高くなるからだ。
ナンパや海で泳ぐ以外でも海水浴は充分楽しめることを知ったおれたちの中で不満を抱く奴はいなかった。
持参した浮き輪を膨らませていた友だちは残念そうにしてたけど、仕方ないと納得していた。
それが崩れたのは……なんだったっけ?
ちょっと此処からが曖昧だ。
………あぁ、そうだ。
砂浜鬼ごっこをしてたら、遊泳禁止エリアへ向かっていく例の親子連れを見たんだ。
もう一度ライフセーバーに注意してもらおうと思ったけど、移動したのかさっきまでいた場所にいなかった。
放っておこうと意見が出たけど、発見しちゃったんだから危ないと声掛けくらいはしておこうとおれたちは後を追ったんだ。
おれたちが例の親子連れに声を掛けると、分かっていたが父親に怒鳴られた。
子ども2人は楽しそうに遊泳禁止エリアで遊んでいた。
子ども2人に注意すると『うるせぇんだよ、ばーか!』と父親に似たのか子どもも口が悪かった。
それでもめげずに海の家で言われたことを伝えて、要件が済んだおれたちは急いでその場から去った。
親子連れに忠告はした。
後は何かあったら、自己責任だと放っておいた。
それから何分も経たない内に、遠くで叫び声が聞こえた。
何事かと叫び声がした方を見ると、遊泳禁止エリアだった。
目を凝らして観察すると、子ども2人が溺れていた。
ライフセーバーを呼んで来ると走っていく友だち。
空のペットボトルを持って海水を入れ始める友だち。
おれ含めた残りは遊泳禁止エリアへ急いで向かう。
おれは友だちの浮き輪を持って行った。
『声を出すなーっ!』
『今、助けが来るからなーっ!』
『息を吸えーっ! 息を出すなーっ!』
子どもに聞こえているか分からないけど、おれたちは叫んだ。
『掴まれ!』と海水の入ったペットボトルを子どもの近くに投げる友だち。
自分の子どもが溺れている中、父親は呆然と見ているだけ。
友だちが投げたペットボトルを子どもの一人は掴んで何とか浮くことが出来た。
だけど、もう一人の子どもは沈んでしまった。
呼んだはずのライフセーバーはまだ来ない。
ダメだと分かっていたけど、見ていられなかった。
『ハセユウ!』
『優希!』
浮き輪を持って、おれは遊泳禁止エリアに飛び込んだ。
おれの父方の実家が漁師町で、おれは小さい頃から泳ぐのが得意だった。
あぁ、特技はこれといって何もないと思ったけど、おれにも泳ぐという特技があったな。
だけど、プールで泳ぐのと海で泳ぐのは違うから水泳部ではなかった。
祖父母から嫌というほど海の怖さは教えられていた。
溺れた人を発見した時の対処方法も教えてもらっていた。
友だちも海水を入れたペットボトルを瞬時に用意して浮くものを作ったり実行していた。
遊泳禁止エリアで溺れたのは、自業自得。
だけどそれは大人に当てはまることで、子どもの場合は親がしっかり教えなければならなかったことだ。
他人がいくらダメだと言っても親が良いと言ったら、子どもはやって良いと思ってしまう。
ライフセーバーに注意されている父親を見ていても、父親がオッケーを出したから子どもは遊泳禁止エリアに入った。
小学校低学年くらいなら分別はつくだろうと思ってはいけない。
人間は溺れて沈んだら、自力で浮き上がることはほぼ不可能だ。
それが子どもなら尚更。
息を吸って肺が膨らんでいれば身体が浮くが、息を全て吐き出したら沈んでしまう。
今思うと、無謀な行動だっただろう。
『早く子どもを助けなきゃ!』という気持ちが先立って、おれは遊泳禁止エリアに飛び込んだんだ。
飛び込む時に、手ぶらじゃなかったのは褒めて欲しい。
.
海水を掛け合う水遊び、砂でお城を作る、ビーチバレー、ビーチボールでドッジボール、ビーチ・フラッグス、水着のお姉さんを眺める。
高校生にしては海水浴で結構な種類を遊べていたんじゃないだろうか。
当初の目的であるナンパが無理だったから『やることがなくなった……』と意気消沈していたが、遊び出したらおれたちは楽しくなっていた。
そんな中、ライフセーバーが誰かと揉めているのを目撃した。
どうやらライフセーバーは遊泳禁止エリアへ行こうとする親子連れを注意しているらしかった。
父親と小学校低学年くらいの男の子が2人。
父親らしい男がライフセーバーに怒鳴っているのを見て、『ああいう人たちって何処にでもいるよな。おれたちはああならないようにしような』と反面教師にしようと心に誓った。
怒鳴られても引かないライフセーバーに、父親は子どもを連れて怒りながら海の家へ向かって行った。
『今日は天気が良いけど、波が高い』
海の家で男性店員が教えてくれた情報を元に、遊泳禁止エリアへ行かないのは絶対だけどおれたちは海で泳ぐの自体を
やめようと話し合っていた。
理由は、波が高いと溺れる確率が高くなるからだ。
ナンパや海で泳ぐ以外でも海水浴は充分楽しめることを知ったおれたちの中で不満を抱く奴はいなかった。
持参した浮き輪を膨らませていた友だちは残念そうにしてたけど、仕方ないと納得していた。
それが崩れたのは……なんだったっけ?
ちょっと此処からが曖昧だ。
………あぁ、そうだ。
砂浜鬼ごっこをしてたら、遊泳禁止エリアへ向かっていく例の親子連れを見たんだ。
もう一度ライフセーバーに注意してもらおうと思ったけど、移動したのかさっきまでいた場所にいなかった。
放っておこうと意見が出たけど、発見しちゃったんだから危ないと声掛けくらいはしておこうとおれたちは後を追ったんだ。
おれたちが例の親子連れに声を掛けると、分かっていたが父親に怒鳴られた。
子ども2人は楽しそうに遊泳禁止エリアで遊んでいた。
子ども2人に注意すると『うるせぇんだよ、ばーか!』と父親に似たのか子どもも口が悪かった。
それでもめげずに海の家で言われたことを伝えて、要件が済んだおれたちは急いでその場から去った。
親子連れに忠告はした。
後は何かあったら、自己責任だと放っておいた。
それから何分も経たない内に、遠くで叫び声が聞こえた。
何事かと叫び声がした方を見ると、遊泳禁止エリアだった。
目を凝らして観察すると、子ども2人が溺れていた。
ライフセーバーを呼んで来ると走っていく友だち。
空のペットボトルを持って海水を入れ始める友だち。
おれ含めた残りは遊泳禁止エリアへ急いで向かう。
おれは友だちの浮き輪を持って行った。
『声を出すなーっ!』
『今、助けが来るからなーっ!』
『息を吸えーっ! 息を出すなーっ!』
子どもに聞こえているか分からないけど、おれたちは叫んだ。
『掴まれ!』と海水の入ったペットボトルを子どもの近くに投げる友だち。
自分の子どもが溺れている中、父親は呆然と見ているだけ。
友だちが投げたペットボトルを子どもの一人は掴んで何とか浮くことが出来た。
だけど、もう一人の子どもは沈んでしまった。
呼んだはずのライフセーバーはまだ来ない。
ダメだと分かっていたけど、見ていられなかった。
『ハセユウ!』
『優希!』
浮き輪を持って、おれは遊泳禁止エリアに飛び込んだ。
おれの父方の実家が漁師町で、おれは小さい頃から泳ぐのが得意だった。
あぁ、特技はこれといって何もないと思ったけど、おれにも泳ぐという特技があったな。
だけど、プールで泳ぐのと海で泳ぐのは違うから水泳部ではなかった。
祖父母から嫌というほど海の怖さは教えられていた。
溺れた人を発見した時の対処方法も教えてもらっていた。
友だちも海水を入れたペットボトルを瞬時に用意して浮くものを作ったり実行していた。
遊泳禁止エリアで溺れたのは、自業自得。
だけどそれは大人に当てはまることで、子どもの場合は親がしっかり教えなければならなかったことだ。
他人がいくらダメだと言っても親が良いと言ったら、子どもはやって良いと思ってしまう。
ライフセーバーに注意されている父親を見ていても、父親がオッケーを出したから子どもは遊泳禁止エリアに入った。
小学校低学年くらいなら分別はつくだろうと思ってはいけない。
人間は溺れて沈んだら、自力で浮き上がることはほぼ不可能だ。
それが子どもなら尚更。
息を吸って肺が膨らんでいれば身体が浮くが、息を全て吐き出したら沈んでしまう。
今思うと、無謀な行動だっただろう。
『早く子どもを助けなきゃ!』という気持ちが先立って、おれは遊泳禁止エリアに飛び込んだんだ。
飛び込む時に、手ぶらじゃなかったのは褒めて欲しい。
.
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる