推しの双子の兄になったんだけど、破滅する悪役令嬢だからその役割を引き受けてハッピーエンドを目指します!

かがみゆえ

文字の大きさ
上 下
4 / 16

第3話 思い出す情報

しおりを挟む
 .




『heart・in・heart ~あなたの心に触れさせて~ 』

 学園恋愛シミュレーションゲーム
 CERO-C(15才以上対象)
 6800円(税別)




 通称:ダブハー
(理由:タイトルにheartが2つ入っていてダブルハートから略してダブハーになったらしい)
 これはおれ・長谷川優希がハマっていた乙女ゲームの情報だ。
 カセットタイプのゲームソフトでケースの裏に書いてあったあらすじなどは忘れてしまった。
 表紙にはヒロインの周りに派手な髪色をした美少年たちが描かれていた。
 ヒロインのビアンカ(名前変更可)が入学した王立学園で攻略キャラクターの男子たちと恋をしていくというストーリーだったはずだ。

 ダブハーのキャラボイスは豪華声優により、あるお姉さまは聴覚を犯されて発狂する。
 ダブハーのイラストは有名な絵師により、あるお姉さまは夢女子となり妄想を滾らせる。
 他にはヒロインが邪魔だと、攻略キャラと攻略キャラを掛け算して二次創作に没頭するなど乙女ゲームではよく見られる現象だろう。

 おれはクラスメートの女子たちが楽しそうに会話していたから、気になって話に加わったらスマホでダブハーのイラストを見せられたクチだ。
 そして、その中に発見した。
 緑目に腰まである水色の髪色をハーフアップにした儚けな美少女を!


『なにこの子っ、超可愛いじゃん!!』
『えっ。ハセユウ、まさかのルイーザ推し?』
『ルイーザ? この子、ルイーザっていうの!? めっちゃ可愛い!』
『うん。あー、でも、この子はルイーザなんだけどルイーザじゃないみたいな……』
『いや、なにその曖昧な言い方?』
『だって、ルイーザは……』
『シィー! 未プレイの人にネタバレ禁止!』
『ハセユウ。良かったらプレイしてみる? 私ので良かったらカセット貸すよ』
『えっ、貸してくれんの!?』
『うん。私、ある程度プレイして満足したし。売ろうかなって思ってたんだよね。データは初期化してるからすぐに出来るよ』
『ありがとう! マジ助かる!』


 ハセユウっていうのはおれのあだ名だ。
 長谷川も優希もよくある名前だったからね。
 おれは女友だちからダブハーのカセットを貸してもらった。
 こうして、ダブハーをプレイすることになったのだ。
 対応のゲーム機は持っていたから、すぐに家でプレイすることが出来た。
 水色の髪色をした美少女、ルイーザがどんな子なのか知りたくて……。

 ダブハーを思うがままにまずは一周プレイをしてみて、メンタルがゴリゴリに減ったよね。
 ヒロインと攻略キャラによるきゃっきゃっうふふな恋愛ストーリーが待ってると思ったのに、エンドを迎える前に何度か挫折したよね。
 だって、ダブハーの攻略キャラの男子たちって全員、何かしら闇を抱えてるんだもの。
 闇っていうか、様々な理由で心に傷を負っていた。
 異母兄弟がいて、ことごとく比べられたり。
 将来上に立たないといけないというプレッシャーに押し潰されそうになったり。
 親から捨てられて孤児になったり。
 力が強過ぎて化物扱いされたり。
 その他諸々。

(貴族の子どもって大変なんだな……)

 攻略キャラたちの同情せずにはいられない過去とか、良い感じになったヒロインと恋をして良いのかという葛藤とか。
 プレイ中に流れて来る文章を読んで何度叫んだことか。

 ストーリーに引き込まれて攻略キャラたちに感情移入しそうになったけど、おれの最優先はルイーザだった。
 ルイーザがどんな子か知りたくて、おれはダブハーをプレイしたんだ。
 悪役令嬢、ルイーザ・ファフェイス。
 ヒロインであるビアンカが攻略キャラを選択すると、二人の仲を引き裂こうとする女子生徒だ。
 ルイーザは最初、ヒロインに優しく接してくる。
 ヒロインはルイーザと仲良くなって、心を開いていくんだけど、ルイーザは裏でヒロインを貶めようと行動していた。
 しかし、ヒロインが選んだ攻略キャラにより断罪される。
 物語の途中で殺されることもあれば、もうすぐエンディングというところで処刑されたりする。
 一家全滅というエンドもあって、何故かルイーザはヒロインがどのルートへ進んでも破滅へと向かっていくんだ。
 処刑されずに生きている場合もあるけど、幽閉エンドとかもあった。

 ヒロインにはハッピーエンドとか様々なエンドが用意されているのに、バッドエンドにしかならないルイーザ。
 おれが一番衝撃を受けたのは、ルイーザが本当は悪役令嬢じゃなくて悪役令息だったことだ。
 ルイーザ・ファフェイス。
 本名、ルイス・ファフェイス。
 ルイーザはルイスという男性だった。

 ルイスは自主的に女装していたのではなく、性別を偽って生きていた。
 周りにも女性だと認識されていたから悪役令嬢で間違いではないんだけど、そうなった経緯がやばかった。
 ルイスは幼い頃から父親に息子ではなく娘になれと女装を強制させられていた。
 ダブハーの世界では子どもは5歳になる年に教会で神様へお披露目の儀式があるんだけど、あろうことか父親は息子のルイスを娘だと紹介するんだ。

 教会で虚偽の申告は罪になるから、ルイスは娘として生きなくてはいけなくなった。
 どのルートか忘れたけど、そのストーリーが出てきてルイスがルイーザになった経緯を知った時、ルイスの父親へサツ意を抱いたのは仕方ないと思う。

.
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~

北きつね
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。  ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。  一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。  ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。  おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。  女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。

俺の娘、チョロインじゃん!

ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ? 乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……? 男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?  アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね? ざまぁされること必至じゃね? でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん! 「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」 余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた! え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ! 【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ
青春
K市内一と言われる超絶美少女の高校三年生柊美久。そして同じ高校三年生の武智悠斗は、何故か彼女に絡まれ疎まれる。何をしたのか覚えがないが、とにかく何かと文句を言われる毎日。だが、それでも彼女に歯向かえない事情があるようで……。疋田美里という、主人公がバイト先で知り合った可愛い女子高生。彼女の存在がより一層、この物語を複雑化させていくようで。 しょっぱなヒロインから嫌われるという、ちょっとひねくれた恋愛小説。

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

最初から最後まで

相沢蒼依
恋愛
※メリバ作品になりますので、そういうの無理な方はリターンお願いします! ☆世界観は、どこかの異世界みたいな感じで捉えてほしいです。時間軸は現代風ですが、いろんなことが曖昧ミーな状態です。生温かい目で閲覧していただけると幸いです。 登場人物 ☆砂漠と緑地の狭間でジュース売りをしている青年、ハサン。美少年の手で搾りたてのジュースが飲めることを売りにするために、幼いころから強制的に仕事を手伝わされた経緯があり、両親を激しく憎んでいる。ぱっと見、女性にも見える自分の容姿に嫌悪感を抱いている。浅黒い肌に黒髪、紫色の瞳の17歳。 ♡生まれつきアルビノで、すべての色素が薄く、白金髪で瞳がオッドアイのマリカ、21歳。それなりに裕福な家に生まれたが、見た目のせいで婚期を逃していた。ところがそれを気にいった王族の目に留まり、8番目の妾としてマリカを迎え入れることが決まる。輿入れの日までの僅かな時間を使って、自由を謳歌している最中に、ハサンと出逢う。自分にはないハサンの持つ色に、マリカは次第に惹かれていく。

処理中です...