推しの双子の兄になったんだけど、破滅する悪役令嬢だからその役割を引き受けてハッピーエンドを目指します!

かがみゆえ

文字の大きさ
上 下
1 / 16

プロローグ

しおりを挟む
 .




 それは、起こるべくして起こった最期。

「あぁ、とっても綺麗……」

 うっとりと空を見上げ呟くのは、声が高めなことからおそらく女性だろうか。
 姿は黒いマントを羽織っていて、誰かは分からない。

「………ど、して……おま、えが……」

 うつぶせに倒れ込んでいる人物が身体を震わせながら顔を上げ、黒いマントの人物へ尋ねる。
 黒いマントの人物が誰かなのか分かっているような口振りだった。

「どうして?」

 黒いマントの人物が首を傾げる。

「それを君が聞くの?」

 黒いマントの人物の声色は変わらない。
 楽しそうでも、怒っているようでもなく淡々としていた。

「……ゲ、スが……」

「嬉しい、褒め言葉だよ」

 暴言を吐かれたのに、黒いマントの人物は嬉しそうに肩を上下させた。

 黒いマントの人物の目の前には、息絶えた人間が山となって積み上げられていた。
 暴言を吐いた人物は生きた最後の一人だった。

「さようなら、これでようやく―――…」

 そう言って、その最後の人物へトドメを刺す。
 黒いマントの人物の頬には透明な液体が流れていた。

「……味方は誰もいない。自分以外は敵……。いつも独りぼっち……。生きるためにはこうする道しかなかった……。でも、これが“必然”だったなんて言わせない……」

 頬に流れる透明な液体は美しいのに、その液体を流す2つの瞳からは生気を感じられなかった。

「大丈夫、大丈夫。あとは任せてね」

 空を見上げながら宣言する。
 瞳に生気はなくても、口許は弧を描くことが出来ていた。




 これは、とある物語ストーリーの終わりだ。
 だが、終わりの始まりである。

 ある願いのために足掻いて、足掻き続けた人物がいたということをどうか忘れないでほしい。

.
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

処理中です...