232 / 238
【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖
femtiosex
しおりを挟む
両親と、ひいばあちゃん。大事な家族に番を紹介するため、俺たちは彪束家まで梨李を迎えに行って家へと戻ってきた。
初めこそ緊張して小さくなっていた梨李だったが、ずっと歓迎ムード全開の家族にすぐ打ち解けた。リビングのソファに、ちんまり座って両隣に母さんと、ひいばあちゃん。正面に父さんが座り、楽しそうに話してる。俺たちはリビングのテーブル席からそれを眺めていた。
「やっぱり気に入ったな。」
呟くと、擁と遵が頷く。
俺たちの番が見つかったと知ってからは早く会いたくて仕方がなかったんだろう。事情だけはあの日聞いていた為、心配もあっただろうし。しかし会えば口下手ながらも一生懸命話そうと身振り手振りで必死とくれば。早く深沢家においでと娘のように猫っ可愛がりしている。
ふにゃふにゃと笑う梨李。そこにウルちゃんが篤臣を連れて帰ってきた。
「あ!こんにちは!」
「!こ、こんにちら。」
噛んだ。
かぁっと真っ赤になって俯いた梨李にウルちゃんが微笑む。もじもじしながら近寄ると、小さな手を差し出した。
「貴宮 兎瑠です。三つ子の従兄弟伯父で狗狼の従兄弟です。あ、それと。」
ちらっと後ろにいる篤臣を見る。
「篤臣くんのパートナーです。えへ。」
でれっと脂下がる篤臣に、いらっとする。
いまだにパートナーって呼ばれて喜ぶな。
握手し合って、ふにゃりと笑い合う二人を見て内心身悶えた。二人とも可愛い。でも梨李を得た今なら分かる。これは庇護対象への親愛だ。産まれた時からウルちゃんは護るべきものだと無意識に感じていたから。群れの中のオメガ。篤臣とパートナーになってもそれは変わらない。父さんが今もウルちゃんを群れの一人として当たり前に護ろうとするように。
自覚がないままオメガのウルちゃんを護ろうと思う気持ちが可愛いウルちゃんを独占したいって気持ちにすり替わってた。
子供の頃は、そっちの方がシンプルで分かりやすいもんな。
ひいばあちゃんが端にずれ、間にウルちゃんを座らせる。五人で話し始めた脇をすり抜け、篤臣が俺たちへ声を掛けた。
「元気そうだね。」
「まぁ。」
「はい。」
「うん。」
無愛想に返しても、気にせず椅子を引き座る。すっかり家に馴染んだ行動に俺たちも慣れた。
「不調とかなくて、安心したよ。」
俺たちの能力は、篤臣も知っている。反動とかそう言うのを気にしていたんだろう。
「出来るようになったのは、クシュダートに入ってからだしな。」
「負担がない程度に使えるよう、それなりに気を付けてきましたので。」
「問題ないよ、使うことあんまりないし。」
「そうか。」
「グリュンダーの方が、くるだろ。」
続けると篤臣が苦笑した。
ウルちゃんのタイプは知っている。俺たちが産まれて間もない頃、起こった出来事も。その過程で篤臣が壊れ掛けたことも。
「確かにまぁ。あれは結構きつかったけど。短時間だったからね。」
番を失う。その恐怖はどれほどのものだったろう。今なら分かる。話に聞いていたあの頃よりも、より実感する。俺たちだって梨李を失っていたら。きっと正気ではいられない。
「コーヒーでいいか?」
「え?ああ、うん。」
「アイスですけど。」
「うん、ありがとう。」
「……ミルクと砂糖は?」
「ミルクだけで。」
遵が立ち上がり、キッチンへと向かう。リビングへ瞳を向けると、梨李が弾けるように笑ってた。
初めこそ緊張して小さくなっていた梨李だったが、ずっと歓迎ムード全開の家族にすぐ打ち解けた。リビングのソファに、ちんまり座って両隣に母さんと、ひいばあちゃん。正面に父さんが座り、楽しそうに話してる。俺たちはリビングのテーブル席からそれを眺めていた。
「やっぱり気に入ったな。」
呟くと、擁と遵が頷く。
俺たちの番が見つかったと知ってからは早く会いたくて仕方がなかったんだろう。事情だけはあの日聞いていた為、心配もあっただろうし。しかし会えば口下手ながらも一生懸命話そうと身振り手振りで必死とくれば。早く深沢家においでと娘のように猫っ可愛がりしている。
ふにゃふにゃと笑う梨李。そこにウルちゃんが篤臣を連れて帰ってきた。
「あ!こんにちは!」
「!こ、こんにちら。」
噛んだ。
かぁっと真っ赤になって俯いた梨李にウルちゃんが微笑む。もじもじしながら近寄ると、小さな手を差し出した。
「貴宮 兎瑠です。三つ子の従兄弟伯父で狗狼の従兄弟です。あ、それと。」
ちらっと後ろにいる篤臣を見る。
「篤臣くんのパートナーです。えへ。」
でれっと脂下がる篤臣に、いらっとする。
いまだにパートナーって呼ばれて喜ぶな。
握手し合って、ふにゃりと笑い合う二人を見て内心身悶えた。二人とも可愛い。でも梨李を得た今なら分かる。これは庇護対象への親愛だ。産まれた時からウルちゃんは護るべきものだと無意識に感じていたから。群れの中のオメガ。篤臣とパートナーになってもそれは変わらない。父さんが今もウルちゃんを群れの一人として当たり前に護ろうとするように。
自覚がないままオメガのウルちゃんを護ろうと思う気持ちが可愛いウルちゃんを独占したいって気持ちにすり替わってた。
子供の頃は、そっちの方がシンプルで分かりやすいもんな。
ひいばあちゃんが端にずれ、間にウルちゃんを座らせる。五人で話し始めた脇をすり抜け、篤臣が俺たちへ声を掛けた。
「元気そうだね。」
「まぁ。」
「はい。」
「うん。」
無愛想に返しても、気にせず椅子を引き座る。すっかり家に馴染んだ行動に俺たちも慣れた。
「不調とかなくて、安心したよ。」
俺たちの能力は、篤臣も知っている。反動とかそう言うのを気にしていたんだろう。
「出来るようになったのは、クシュダートに入ってからだしな。」
「負担がない程度に使えるよう、それなりに気を付けてきましたので。」
「問題ないよ、使うことあんまりないし。」
「そうか。」
「グリュンダーの方が、くるだろ。」
続けると篤臣が苦笑した。
ウルちゃんのタイプは知っている。俺たちが産まれて間もない頃、起こった出来事も。その過程で篤臣が壊れ掛けたことも。
「確かにまぁ。あれは結構きつかったけど。短時間だったからね。」
番を失う。その恐怖はどれほどのものだったろう。今なら分かる。話に聞いていたあの頃よりも、より実感する。俺たちだって梨李を失っていたら。きっと正気ではいられない。
「コーヒーでいいか?」
「え?ああ、うん。」
「アイスですけど。」
「うん、ありがとう。」
「……ミルクと砂糖は?」
「ミルクだけで。」
遵が立ち上がり、キッチンへと向かう。リビングへ瞳を向けると、梨李が弾けるように笑ってた。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。





淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる