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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖
femtio
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白熱したフォーラムは収拾がつかなくなった。司会の調査官が、中断を告げるとより一層ゲヘリングたちは紛糾した。
怒号のような声が、そこかしこで上がる。これが世界中にその名を知られた高名な医師たちが見せる姿なのか。誰も彼も立ち上がり、拳を突き上げ、唾を飛ばし、好き勝手に言い募る。全ての参加者にはマイクが付けられていて、聞き取りづらい声まで全て拾っていた。だからノイズを除去し、インカムを切り替えて通せば何を言っているのか分かる。
『私に寄越せ。』
『お前たちでは使いこなせない。』
『貴重なサンプルだ。』
『死ぬまで私が使ってやる。』
『緩い実験では、そいつらの真の価値は分からない。』
口々に、違法な実験を匂わせる言葉が聞こえてくる。醜く歪んだ顔。興奮して前のめりになり、ステージに近寄ろうとする。その姿は全て、配信されていた。
世界中に。
冒頭から今まで、ずっと。至る所から狙うカメラによってライブ配信されている。アーカイブも作られ、そちらではテロップや字幕が効果的に付けられていた。
世界中から信頼されていた、医師たち。その呆れた本性。頭に血が上った彼らを、愚鈍なふりを装い調査官が煽る。
『寄越せとは、一体どう言う意味でしょうか?』
『そのままの意味だ!私がその能力保有者を使ってやると言っているんだ!』
『お前たちでは使いこなせないとは?』
『現に使いこなせていないから顎で使われているんだろう!通訳みたいに棒立ちしおって、情けない!』
『貴重なサンプル?サンプルとはどう言ったことを指していらっしゃるのか。』
『サンプルとは実験サンプルに決まってるだろう!そんなことも分からんのか!昔から能力保有者は我らのような優秀なものが所有し、実験を繰り返してきたんだ!』
『死ぬまで私が使ってやるとは、穏やかではありませんね?』
『希少なんだから死ぬまで実験するのは当然だろう!』
『緩い実験とは、どう言う意味でしょうか?真の価値とは?』
『はん!そんなことも分からんのか!まずはどこまで耐えられるか、血を抜き……。』
自分たちの言葉に興奮して余計に昂ってきたらしい。ますます収拾が付かなくなってきた。やがて我慢出来なくなったのか数人が飛び出し、ステージに上がろうとする。
するりと出てくるアゲンツたち。あっさりと腕を取られ、拘束される。そのまま強制退場という形で連れ出された。外に出たら拘束され、押収された証拠を元に尋問が待っている。
連れ出される同胞を見て、幾分頭が冷えたのか残りのゲヘリングたちは次第に静まっていった。インカムを再度切り替える。
『無視できない非人道的な発言が多数見受けられました。これより能力保有者の安全を最優先に考慮し、今回のフォーラムはここで終了させて頂きます。このような結果となり、残念でなりません。どうか、皆様。ご自分の発言や行動を今一度振り返り、一人の人間として。恥ずべき言動は慎んで頂きますよう心よりお願い申し上げます。』
ちくりと刺され、全員が押し黙る。近寄ってきたアゲンツたちにそれぞれ腕を取られ、会場外へと連れ出されていった。抵抗しようにも、元々医師と言う職業はそこまで身体を鍛えてはいない。仮に鍛えていたところでツェアシュテールの特殊部隊、アゲンツに抵抗出来るほどの技量はない。それぞれに不満そうな様子を隠そうともせず、連れ出されていく。
そんな中、あれだけ紛糾していた会場内で他人事のように白けた目で周囲を見つめる男たちがいた。
カルロッソ、ゼファネ、ビルケの三人だった。彼はじいっと穴が開くほどステージ奥に座る二人の男性を見つめていた。
怒号のような声が、そこかしこで上がる。これが世界中にその名を知られた高名な医師たちが見せる姿なのか。誰も彼も立ち上がり、拳を突き上げ、唾を飛ばし、好き勝手に言い募る。全ての参加者にはマイクが付けられていて、聞き取りづらい声まで全て拾っていた。だからノイズを除去し、インカムを切り替えて通せば何を言っているのか分かる。
『私に寄越せ。』
『お前たちでは使いこなせない。』
『貴重なサンプルだ。』
『死ぬまで私が使ってやる。』
『緩い実験では、そいつらの真の価値は分からない。』
口々に、違法な実験を匂わせる言葉が聞こえてくる。醜く歪んだ顔。興奮して前のめりになり、ステージに近寄ろうとする。その姿は全て、配信されていた。
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『希少なんだから死ぬまで実験するのは当然だろう!』
『緩い実験とは、どう言う意味でしょうか?真の価値とは?』
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自分たちの言葉に興奮して余計に昂ってきたらしい。ますます収拾が付かなくなってきた。やがて我慢出来なくなったのか数人が飛び出し、ステージに上がろうとする。
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『無視できない非人道的な発言が多数見受けられました。これより能力保有者の安全を最優先に考慮し、今回のフォーラムはここで終了させて頂きます。このような結果となり、残念でなりません。どうか、皆様。ご自分の発言や行動を今一度振り返り、一人の人間として。恥ずべき言動は慎んで頂きますよう心よりお願い申し上げます。』
ちくりと刺され、全員が押し黙る。近寄ってきたアゲンツたちにそれぞれ腕を取られ、会場外へと連れ出されていった。抵抗しようにも、元々医師と言う職業はそこまで身体を鍛えてはいない。仮に鍛えていたところでツェアシュテールの特殊部隊、アゲンツに抵抗出来るほどの技量はない。それぞれに不満そうな様子を隠そうともせず、連れ出されていく。
そんな中、あれだけ紛糾していた会場内で他人事のように白けた目で周囲を見つめる男たちがいた。
カルロッソ、ゼファネ、ビルケの三人だった。彼はじいっと穴が開くほどステージ奥に座る二人の男性を見つめていた。
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