【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖

trettiofyra

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 篤臣から話を聞いた俺たちは、すぐに梨李の所へ逢いに行こうとした。しかし今は身体が戻りつつある段階で、それに伴いフェロモンの過剰放出が認められているらしい。なんとか話は聞き出せたが、それも祖父母が同席した上で短時間に済ませたものだった。

 仕方なく、許可が出るまで大人しく待つことにした。

 篤臣が帰ると、家族全員で二階へと上がる。俺たちだけは、そのまま三階へと上がった。昔ウルちゃんが使ってた部屋は、今では俺たち三人の部屋になっている。狭くはあるが別に困らない。

「ずっといたんだな、目の前に。」
「そうですね。」
「……。」

 今まで何となく、関わらない方がいいと言う認識しか持ち合わせていなかったゲヘリングとヴェルュク研究所。今では明確に敵意しか湧かない。

 俺たちから番を奪い、隠していた。身体を弄り、精神を支配して実験に使っていた。用済みになったからと偽薬を渡し、フェロモンがコントロール出来ない番を思春期の学生たちの中に放り込む。悪意しかない。

 保健室で間に合って良かったと息を吐く。真っ青になって震えながらも悪態をついていた梨李。もしかしたら、幼少期のトラウマが刺激されていたのかもしれないと思い至る。

 ぼさぼさの茶色の髪はウィッグだった。桃色の髪。菫色の瞳。分厚い眼鏡のレンズは汚れていて顔の大部分を覆っていた。身体は痩せっぽちの、がりがりで。

 俺たちは、本当の番の姿すら、知らない。

「逢ったら真っ先に謝らないとな。」
「はい。酷いことを言いました。」
「……早く逢いたいね。」

 今は彪束家で祖父母と一緒に過ごしているらしい。血縁関係にないものはフェロモンに当てられる。家族で護るしか今は手立てがないらしい。

「この資料を見せてくれたウェガン主席調査官がフェロモン抑制剤の調剤法も保管していた。今フィンレーがネアリチュアに指示して作らせている。」

 篤臣から聞いて、やっと少し安心した。それなら、梨李の周囲を警戒ばかりしなくても良くなる。

「とは言っても、恐らく君たちが逢って互いが番だと認識すれば、フェロモンの過剰放出はなくなるんじゃないかと言うのがウェガン主席調査官の見立てだ。まぁ、だからって試すには危険だから。フェロモン抑制剤が出来て、淼矢 梨李の体調が問題ないところまで回復すれば、会えるようにするよ。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
「……ありがとう。」

 篤臣が、ここまでしてくれるとは。今まで、あれだけ邪険に扱ってきたのに。

 三人でしおらしく感謝を伝えると、殴りたくなるような爽やかな笑顔で告げられた。

「いやいや。これで君たちがウル離れしてくれるなら。」

(こいつ、マジでぶれないな。)

 呆れを通り越して感心する。手を振り帰っていく篤臣の笑顔を再び思い出し、呟いた。

「シュラハトやるか。」
「やりますか。」
「……やろう。」

 何だかあの笑顔に一発食らわせてやりたい。まぁ、本当にやったらウルちゃんが悲しむのは目に見えてるから。やらないけど。




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