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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖
trettiotre
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所長室で執務机の天板に両肘をつくと、そのまま両手を組んで額を支えた。
どういうことだ。何故エアレーゲンが効かない?
カルロッソはイライラと顔を擦った。息を吐き、思考を巡らせる。
今から十三年前、当時講演会で世界各国を飛び回っていたカルロッソの元に『娘を診て欲しい。』と声を掛けてきた夫婦がいた。面倒なものが寄ってきたと思ったが、連れられている少女を見た瞬間、情欲のようなものが湧いて戸惑った。カルロッソは元々そう言った欲が薄い。だと言うのに、10歳の少女相手になんて。自分はペドフェリアにでもなったのか?と一瞬思った。だが、話を聞くとそうではなかった。
面白い。
自分が診てあげよう。そう言って様々な実験をした。まだ何も知らない無垢な少女。出掛けると聞けば、男たちを雇い近付けた。フェロモンに当てられた男たちはあっさり我を失い少女に襲いかかった。必死で食い止める両親たち。そんなことを何度か繰り返し、ますます興味が湧いてきた。治療のために引き取りたい。そう申し出たが両親は頷かなかった。そうなれば仕方ない。両親は始末して拉致することにした。その頃、運良く"失われた能力"の一つ、発火を保有するものを見つけていたカルロッソの知人ゼファネ・コルドゥマが手を貸してくれた。自身の実験にもなると言って保有者を使い、一家の乗る車を炎上させたのだ。連れ去った梨李が目覚めた時、両親は事故で亡くなり誰も君を引き取らなかったと告げた。最初こそ殻に閉じこもっていたが、目覚めたディストリクトでは頼れるものは私しかいない。申し出を受け入れ、養子となった。それからは私の顔色を常に伺い、従順に従うようになった。
そうして開発した、エアレーゲン。元は梨李のフェロモン酵素から出来ている。特許権を主張する為に、元になったものは隠し通さなければならない。少し惜しいが彼女の染色体を変異させることにした。同じ症例が過去、この実験により結果を出したことは知っていた。問題は禁忌とされる実験であること。見つかればタダでは済まない。しかし症例自体が少ない為、見つかるリスクはかなり低いと言えた。何より見た目も名前も変わった彼女を誰かが探し出せるとは思えない。それよりも誰かの手に渡り、罷り間違ってエアレーゲンを作られたら困るのだ。せっかくヴェルュクの資金源となりうる発情促進剤。
あとは治験データさえ集まれば薬事承認認可は下りる。
そこまで来たら逆に梨李が邪魔になった。彼女がいなくても酵素は作り出せるのでオリジナルは必要ない。
だったらエアレーゲンの代わりに使おう。
偽薬を渡し、徐々に元ある身体、女性体へと戻していけばフェロモンが出るはず。当てられた学生たちはどう反応するか。露見しずらいよう大国ではなく小国。天蒼あたりではどうだろう。出身国でもあるしな。忘れたはずの本名を名乗るといい。運が良ければ今でも探している淼矢家が気付いてくれるかもしれないぞ?
まぁそのころには男たちに襲われ正気を保てはしないだろうが。
天蒼の学生たちにとっては梨李自身が生きたエアレーゲンになる。
治験データとしては使えないが構わない。使い終わったから返品してやる。
そう思って捨てたのに。
エアレーゲンの治験データが思うように集まらない。もう一度フェロモン酵素を見直す必要がある。偽薬を渡し続けていたから、そろそろ女性体に戻るころだ。フェロモンの放出が始まっているだろう。
早急にリリオラ(淼矢 梨李)を回収しなければ。
どういうことだ。何故エアレーゲンが効かない?
カルロッソはイライラと顔を擦った。息を吐き、思考を巡らせる。
今から十三年前、当時講演会で世界各国を飛び回っていたカルロッソの元に『娘を診て欲しい。』と声を掛けてきた夫婦がいた。面倒なものが寄ってきたと思ったが、連れられている少女を見た瞬間、情欲のようなものが湧いて戸惑った。カルロッソは元々そう言った欲が薄い。だと言うのに、10歳の少女相手になんて。自分はペドフェリアにでもなったのか?と一瞬思った。だが、話を聞くとそうではなかった。
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あとは治験データさえ集まれば薬事承認認可は下りる。
そこまで来たら逆に梨李が邪魔になった。彼女がいなくても酵素は作り出せるのでオリジナルは必要ない。
だったらエアレーゲンの代わりに使おう。
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