【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖

tjugonio

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 がんっと身体に衝撃が走った。

 番だ。番がいる。近くに。方角は分かる。南西。間違いない。

 三人一斉に立ち上がったことで、母さんが、ぽかんと口を開けて見上げてきた。食事中だったせいで、箸と汁椀を持ったまま問いかけてくる。

「どうしたの?」
「「「番がいる。」」」
「はっ?」
 父さんが素っ頓狂な声を上げた。ひいばあちゃんが「あらまぁ。」と呑気に漬物を噛みながら合いの手を入れる。

「落ち着け、つか座れ。」
「「「でも。」」」
「凡その位置は分かったんだろ?逃げやしねぇよ。それよりお前ら。」

 渋々座ると、父さんが続けた。

「もしかして、三人とも番がどこにいるか分かったのか。」
 頷くと、湯呑みを掴んで、ぐいっと飲み干してから質問が続く。

「いきなり?三人とも?……方角は?」
「「「南西。」」」
「全員おんなじ方角に番がいるのか?偶然にしちゃおかしくねぇか?もしかして相手も三つ子とか?兄弟姉妹なのか……。」
 腕を組んで唸り出した父さんに告げる。

「違う、一人だ。」
「僕たち三人の番です。」
「……三人一緒の番だよ。」

 しん、とダイニングが静まり返る。沈黙を破ったのは、ひいばあちゃんだった。

「要するに、三人に一人の番ってことね?」
「はあぁ?!」
「まさかの一妻多夫?!」
 父さんの顎が外れそうなくらい落ち、母さんが動揺して汁椀を落としそうになる。

「別におかしいことじゃないわよ、昔はあったみたいだし。」

 ひいばあちゃんが、のんびり返す。

「双子や三つ子はねぇ。それこそ趣味嗜好が似るでしょう?でもその中でも似るって言うより同一って言うか。人として別に存在しても、全く同じな双子とかね。普通にいたらしいわ。そうなると、お互いの番も一緒。同じ人になるのよ。だから、この子たちなら、おかしなことじゃないわねぇ。」
「マジかよ。」
「そんな。狼は唯一の番を持つ種ですよね?はなさん。」
「そうねぇ。唯一の番を持つってところは別に間違ってないんじゃない?むしろ、この子たちにとっては、それぞれ別の番を持つ方が唯一から外れるのよ。」

 ひいばあちゃんが続ける。

「そんなだから。ゲレンク-パラには特例制度があるのよ。この子たちみたいなケースはパートナー登録の際、一夫多妻か一妻多夫が認められてるの。」
「いや、特例制度は聞いたことあるけどよ。」
「こういうケースの為に制定されてたなんて。知らなかったです。」
「そうしないと、番を取り合ってシュラハトが起こるようになったから。酷い時には双子同士で死闘にまで発展して社会問題になったのよ。それなら、した方が平和的に解決するでしょう?」

 という言葉に三人揃って反応する。まさにそうだ。俺たちは三人で一人の番を求めてる。それは俺たちにとっては別におかしなことじゃない。だって、ひいばあちゃんの言う通り、俺たちは三人で同一。だから他人から個別に認識されなくても気にならないのだ。存在こそ三人に分かれて生を受けたって言うだけ。

「なるほどな。」

 父さんが頷いた後、顎をしゃくった。

「まぁなんだ。番がみつかったのは良かったじゃねえか。」
「ああ。」
「はい。」
「うん。」
「しっかしお前ら三人の番かぁ。相手どんなだろうな?」

 急に実感が湧いてきて、そわそわした。どんな感じだろう。

「明日から探してみる。」
「向こうも気付いたでしょうか?」
「……楽しみ。」

 母さんが苦笑しながら告げる。

「相手の子、怯えさせないようにね?」

 どう言う意味だよ。めちゃくちゃ可愛がるっての。
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