【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖

nitton

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『つまり、淼矢家とは彪束家に嫁した君の父方の祖母の実家だと。そういうことかい?』
『ああ。祖母の兄が淼矢家を継ぎ、そこの息子夫妻が十三年前事故で亡くなった。当時現場から行方不明になったのが一人娘の淼矢 梨李だ。』
『かなり遠いね。』
『そうだね、だから俺も今回名前が上がるまで、そんなことがあったなんて知らなかったよ。』
『気が付いたのは氷午さんかい?』
『ああ。君からゲヘリングの動きを聞いて天蒼国内での動きを調べていたら、深沢からも連絡が来てね。気になる人物がクシュダートに赴任して来たって。時期が合うから念の為、調べようと人を使ったら、まぁ分かるだろ?伯父さんには筒抜けなんだ。』
 肩を竦めた篤臣を見て、フィンレーは苦笑した。さもありなん。

『で、君は氷午さんから淼矢 梨李について調べるように言われたと?』
『まぁ、そうだね。』
『だったらディストリクトへ行くはずでは?どうしてリージョンに来たんだい?私に話すだけなら別に電話でも良かっただろう?』
『……それは、ネアリチュアで少し調べたいことがあるんだ。まぁ君が許可してくれるなら、だけれど。』
『ふむ。まさか、淼矢 梨李は"失われた能力"の保有者だったとか?』
『いや、違う。ただ、そうだな……。当時彼女は原因不明の症状に悩まされていたと聞いている。それについて、ネアリチュアなら何か分からないかと思って。』
『どんな症状なんだ?』
『暫定的にと呼んでいたらしい。』
『ほう。』
『6歳頃から発症したと聞いている。血縁関係にない異性のみ、匂いでヒートを誘発するらしい。それも制御不能だ。』
『……それは。恐ろしいな。』
『ああ。当時殆ど家から出せなくなっていたと聞いている。亡くなった夫妻は高名な医師と聞けば、何とか診てもらえないかと世界各国を回っていたらしいよ。』
『……高名な、医師。ね。』
『ゲヘリングに繋がると考えるのは、穿ちすぎかな?』
『いや、私でも疑うよ。"失われた能力"でなくても、聞いたことのない症例だ。奴らの関心を十分引きそうだね。』
『残念ながらね。だから、ネアリチュアに聞いてみたいんだ。そう言った症例を知っているか。』
『そう言うことなら、すぐにでも手配しよう。』
『助かるよ。』

 フィンレーの執務室。着いた早々篤臣はウルを専門医に預け、ネアリチュアへの訪問を打診した。これは本家彪束家リーダーから貴宮家リーダーたる篤臣に課せられた仕事だ。例え僅かなものでも何か掴んで帰りたい。

 もしかしたら、見つかるかもしれない。その可能性はある。篤臣にとって遠いとは言え血縁者と言える、淼矢 梨李が。

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