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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖
fjorton
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それからの日々は、取り立てて何事もなく過ぎていった。
生徒会長なんて、面倒くさいものを押し付けられていた俺は擁と遵も引っ張り込んで適当に熟していた。判断は下すが、実働は副会長以下の奴らにやらせている。そもそも人を使うってそう言うもんだろ?
責任はまるっと引き受けてんだから、文句は出ないしな。
もちろん、指示したこと以外で何かやらかした時は関知しない。そうやってやってきた。その面倒な役割も、今月で終わりという頃。滅多に受け付けない陳情書なるものが提出された。しかも複数。
「なんだこれ。」
「それが……。」
渡してきた副会長の眉尻が下がる。
どれもこれも匿名だった。それ自体はさして問題ではない。大抵自分より上位のものから受けたハラスメントを解決してもらう為に出すのが陳情書だからだ。気になるのはその申し立て内容だった。全て同じ人物に対するものばかりだった。
カウンセラーに困っている。
どこをどう困っているのかは書かれていない。そこが分からなければ動きようがないと言うのに。かといって、無視は出来ない件数だった。文体から同一人物とは思えない。つまり悪戯の可能性は低い。
「お前、カウンセラーとは面識あるか?」
ないだろうとは思いつつ、聞いてみる。例の、国からお達しされたカウンセリングは一年生から順次行われている。赴任してきて僅か三ヶ月。各学年フェイとグラスの一クラスずつしかないとはいえ、それぞれに二十名。計四十名を全て終え、二年生まで進んでいるとは思えない。
「いえ、まだです。恐らくまだ、グラスすら終わってないかと。」
だよな、と頷く。毎日何人と面談しているのか知らないが短時間で終わるとは思えない。場合によっては二度、三度とやるだろう。だとしたら、この陳情書は一年生のグラスから出た可能性が高い。
生徒会室へ一緒に顔を出していた、擁と遵が陳情書を覗き込む。
「どうしますか?擁。」
「……これじゃどうしようもないね。」
腕を組んで唸る。面倒だが、どう困っているのかは把握しておきたい。対処するかどうかは別として、知らないことには判断しようもない。
副会長を見て、陳情書を渡す。
「カウンセラーがどんな人物か、既にカウンセリングを終えたやつらから聞いてこい。書記と庶務連れて行け。」
「分かりました。」
「報告は口頭で構わない。」
「はい。」
任期が終えれば目の前の副会長が次の会長になる。時期的に長引けば、そのまま最後まで関わるのは濫ではなく、次期会長たる目の前の二年生だ。このまま関わらせた方が手間が省ける。
ひらひらと手を振って生徒会室を後にする。それきり、報告を受けるまでカウンセラーのことなど忘れていた。
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責任はまるっと引き受けてんだから、文句は出ないしな。
もちろん、指示したこと以外で何かやらかした時は関知しない。そうやってやってきた。その面倒な役割も、今月で終わりという頃。滅多に受け付けない陳情書なるものが提出された。しかも複数。
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「それが……。」
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「どうしますか?擁。」
「……これじゃどうしようもないね。」
腕を組んで唸る。面倒だが、どう困っているのかは把握しておきたい。対処するかどうかは別として、知らないことには判断しようもない。
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「カウンセラーがどんな人物か、既にカウンセリングを終えたやつらから聞いてこい。書記と庶務連れて行け。」
「分かりました。」
「報告は口頭で構わない。」
「はい。」
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