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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖
elva
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『やぁ、久しぶりだね。』
『おう。なんだ、獅子ヤロー。』
『……意外にも君のその傲岸不遜なところ、嫌いじゃないよ。』
『おいマジか。変態とは知らなかったわ。』
リビングのソファでタブレットに映し出されたフィンレーと会話しながら狗狼は首筋を撫でた。逆立つようなそんな感覚。これは群れに何か起こると、勘が告げている。
『この前、濫たちが定期検診を受けただろう?』
『ああ。』
『結果について、気になる点があるらしくてね。』
『……それを何でお前が親の俺より先に知ってんだ。』
『それについては申し訳ない。ネアリチュアはグウェイン家の支援で成り立っているからね。犯罪に巻き込まれる恐れがあると判断した場合、患者やその家族よりも先に私へ情報が降りてくる仕組みになっている。納得出来なくても、そこは了承してもらいたい。』
言い訳せず、無理も押し通さず、了承が欲しいと謙ってくる。フィンレーのこう言う、そつないところが、むかつくのだ。
『気になる点ってのはなんだ。』
『どうも、検診の数値に不審な点が見られるらしい。調査官たちは彼らが能力を抑えているのではないかと見ている。』
『……は?』
『実際はもっと、高い能力を有しているにも関わらず三人が調整して決めた設定値を出しているのではないか、というのが調査官たちの見立てだ。』
『……根拠は?』
『あまりにも分かりやすく、想定の範囲内でしか能力が向上していないからだよ。頭打ちと言ってもいい。だが幼少期からのデータを分析すると、三人の能力は今回の測定値よりも高いと予想される。』
もしそれが本当なら。いや、あいつらなら、やりそうだな。意図は分からんが。
『で。』
『正確な能力が把握できなければ当然こちらのバックアップも、ずれたものとなる。だから君の方から彼らに確認して欲しい。なるべく急いでくれ、ゲヘリングが動き出した。』
『は?どう動いてんだ。』
『自国のクシュダートやラ-ガレンに客員教諭として赴任している。ゲヘリングがいないとされる国には直接ヴェルュクから所員が派遣されているようだ。その対象国リストには天蒼も含まれている。』
『……。』
『天蒼自体は然程大きくない国だ。そのせいか、今までやつらの関心は薄かった。なのにここにきて、わざわざヴェルュクから所員を派遣する対象国リストに入っているのは匂う。』
『はん!』
その意見はまぁ、分かる。
『そう言うわけで、取り急ぎ確認を。ゲヘリングは全員表向き優秀な医師たちばかりだからね。国からしてみれば、知識人が学生たちにその叡智を惜しみなく教授してくれるわけだ。断る理由はない。どの国も進んで受け入れている。』
『はー。たくよぉ!めんどくせえなぁ!』
分かったから、ちっとばかし待ってろ。
そう言って返事も待たずに回線を切った。まだ首筋が騒めく。嫌な予感が当たりそうだと息を吐いた。
『おう。なんだ、獅子ヤロー。』
『……意外にも君のその傲岸不遜なところ、嫌いじゃないよ。』
『おいマジか。変態とは知らなかったわ。』
リビングのソファでタブレットに映し出されたフィンレーと会話しながら狗狼は首筋を撫でた。逆立つようなそんな感覚。これは群れに何か起こると、勘が告げている。
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『ああ。』
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『……それを何でお前が親の俺より先に知ってんだ。』
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言い訳せず、無理も押し通さず、了承が欲しいと謙ってくる。フィンレーのこう言う、そつないところが、むかつくのだ。
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もしそれが本当なら。いや、あいつらなら、やりそうだな。意図は分からんが。
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『は?どう動いてんだ。』
『自国のクシュダートやラ-ガレンに客員教諭として赴任している。ゲヘリングがいないとされる国には直接ヴェルュクから所員が派遣されているようだ。その対象国リストには天蒼も含まれている。』
『……。』
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『はん!』
その意見はまぁ、分かる。
『そう言うわけで、取り急ぎ確認を。ゲヘリングは全員表向き優秀な医師たちばかりだからね。国からしてみれば、知識人が学生たちにその叡智を惜しみなく教授してくれるわけだ。断る理由はない。どの国も進んで受け入れている。』
『はー。たくよぉ!めんどくせえなぁ!』
分かったから、ちっとばかし待ってろ。
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