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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖
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『そろそろ、商品化を考えておりまして。その為に治験データが欲しいと思っていたんですよ。お声がけ頂き、ありがとうございます。』
『いやいや。話しを聞いてから、ずっと。興味があってねぇ。"失われた能力"とは違いますが、中々面白いものですから。治験データさえ揃えば、ムタチオンとは違って問題なく認可が下りる。』
『そうなれば今後、資金調達が容易になりますね。』
『結果あなたの貢献が認められ、今よりもっと研究に没頭することが出来るでしょう。』
応接室の柔らかな一人掛けソファにそれぞれ座り、葉巻を燻らせながら話しを進める。ここはディストリクトにあるヴェルュク研究所。その施設内にある所長室で白髪の男二人は、ゆったりと煙を吐き出しながら話しを続けた。
『商品名は、エアレーゲンにしようかと思っています。』
『ほう、いいですね。こう言っては何ですが、ムタチオンとは違って響きに品がある。』
『はははは!そうですか?なんでも昔はフェロモンを指して、そう呼んでいたようです。』
『良いではないですか、分かりやすい。』
『では、それで。』
『ええ。しかし楽しみですねぇ。無害の発情促進剤となれば、皆飛びつくでしょう。』
『快楽は抗いがたい欲求の一つですからねぇ。かなりの需要が見込めます。』
『いやはや、本当に。あなたがサンプルに気付き、いち早く手に入れてくれたお陰です。しかも、あの時の実験で私のサンプルまで従順に従うようになりました。ご一緒に出来て良かった。』
見え透いた賛辞でも、気分は良い。今後サンプルをどうするつもりなのか、少し語ることにした。
『そのサンプルですが個体として、もう粗方絞り尽くしてしまいましてねぇ。エアレーゲンが出来上がった今、むしろ邪魔なんですよ。研究が外に漏れでもしたら堪りません。』
『確かに。それはそうですね。では廃棄処分に?』
『ええ。とは言っても、ただ捨てるのはやはり勿体無い。珍しいサンプルに違いはありませんから。ですので、エアレーゲンの代わりにサンプル本体をね、使おうかと思いましてね。』
『なるほど。最後の最後まで使い切り結果を出してこそと言うわけですか。研究者の鑑ですね。』
『はははは!よして下さい。貴方も同じことを躊躇なくされる方でしょう?』
『それもそうですね、はっははは!』
『となると、研究者の性といいますか。なるべく早く次のサンプルが欲しいのですが。"失われた能力"を保有するものは、なかなか見つかりません。』
『そこが悩ましいところですね。こちらにいるサンプルも、もう長くはありません。私もアレが死ぬ前に新しいサンプルが欲しいのですが。』
『失われたと言われるだけあって、見つけるのは運任せ。全く。この世界を発展させるための研究だと言うのに。ままならないものです。』
『そうですね。』
お互い葉巻を楽しみ、窓の外を見つめる。濃い緑の隙間から差し込む木漏れ日に目を細め話は続いた。
『いやいや。話しを聞いてから、ずっと。興味があってねぇ。"失われた能力"とは違いますが、中々面白いものですから。治験データさえ揃えば、ムタチオンとは違って問題なく認可が下りる。』
『そうなれば今後、資金調達が容易になりますね。』
『結果あなたの貢献が認められ、今よりもっと研究に没頭することが出来るでしょう。』
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『商品名は、エアレーゲンにしようかと思っています。』
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『では、それで。』
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『確かに。それはそうですね。では廃棄処分に?』
『ええ。とは言っても、ただ捨てるのはやはり勿体無い。珍しいサンプルに違いはありませんから。ですので、エアレーゲンの代わりにサンプル本体をね、使おうかと思いましてね。』
『なるほど。最後の最後まで使い切り結果を出してこそと言うわけですか。研究者の鑑ですね。』
『はははは!よして下さい。貴方も同じことを躊躇なくされる方でしょう?』
『それもそうですね、はっははは!』
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『そこが悩ましいところですね。こちらにいるサンプルも、もう長くはありません。私もアレが死ぬ前に新しいサンプルが欲しいのですが。』
『失われたと言われるだけあって、見つけるのは運任せ。全く。この世界を発展させるための研究だと言うのに。ままならないものです。』
『そうですね。』
お互い葉巻を楽しみ、窓の外を見つめる。濃い緑の隙間から差し込む木漏れ日に目を細め話は続いた。
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