【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖

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 "失われた能力"。現代において、そう呼ばれるものを保有する人間は稀だと言う。俺たち三人はその稀なケースに当てはまってしまったらしい。父さんが危惧した共感と言う能力がそうだった。

 あの後、家はちょっとした騒ぎになった。まだ5歳だった俺たちは、父さんから話を聞いた母さんに抱きしめられ、泣かれた。やがてあの時の、おっさんの伝手で詳しい検査が行われると、間違いなく俺たちは能力を有していると判定された。名称は父さんの見立て通り、共感。特定の相手と言語を介さず意思の疎通を図ることが出来る能力。昔はそれなりに保有者がいたらしいが段々と減っていって今では殆ど存在しないという。故に"失われた能力"と呼ばれ、その存在は秘匿されることが多いらしい。

 俺たちが説明されたのは、ここまでだった。これ以上は成長してから詳しく話すと父さんに言われ、俺たちはそれ以降も今まで通りの生活を送ることになった。

 ひいばあちゃんと父さん、母さんに囲まれてカフェの上で六人暮らし。たまに従兄弟叔父のウルちゃんが遊びに来る毎日は俺たちにとって平和そのものだった。

「ウルちゃん、遊ぼう。」
「遊びましょう、ウルちゃん。」
「遊ぶ……。ウルちゃん。」
「えへへ、いいよ?何して遊ぶ?」

 ウルちゃんは父さんと同い年とは思えないくらい小さくて細くて可愛い人だ。いつもいい匂いがして柔らかい。俺たちはウルちゃんが大好きだった。

「俺もまざろうかな。」

 こいつは違う。ウルちゃんのパートナー、ヒョウの篤臣。こいつはウルちゃんにベタ惚れで、暇さえあればマーキングしまくって、くっついている。来なくていいのにウルちゃんが行くところに、いつもいる。でも、除け者にしようとしたら、ウルちゃんが悲しそうにしょんぼりするから。

「特別だぞ。」
「仕方ないです。」
「……。」

 むっつりしながら三人で睨みつける。ウルちゃんが、おろおろする横で篤臣がにっこり笑って俺たちを見下ろした。

「ありがとう、ウルは俺の大事な大事な大事なパートナーだからね。そのウルが大事にしてるんだから。君たちのお守りくらい喜んでするよ。」

 やっぱりこいつ、むかつく。三人でぐるぐる喉を鳴らして睨み上げる。こいつにウルちゃんは勿体無い。身体が出来たらシュラハトで奪い返してやる。三人で頷き合った。

「みんな仲良くしてよぅ。」

 ウルちゃんが俺たちを抱きしめて頬擦りする。チャンスとばかりにしがみついた。

「ウル!なにしてんの!」
「え?なにって……。」
「駄目だよ?!ウルが抱きついていいのは俺だけなんだから!」
「……お前はガキ相手になに言ってんだ。」
「深沢!お前の子供たちだろ!止めろよ!」
「あほか。」

 すりすりすりと高速でウルちゃんに擦り付く。あいつのマーキングに上書きしてやる。
 擁と遵も一緒に擦り付いた。

 すりすりすりすりすりすりすり。

「ああ!こら!やめろ!」
「「「ウルちゃん、すき。」」」
「え?あは!僕も好きだよー。」
「ウルちゃん?!」

 ざまみろ、ヒョウヤロー。ウルちゃんは俺たちのもんだからな。

 こんな毎日がずっと続くと、俺たち三人は信じてたし、そうならないとは思いもしなかった。

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