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【番外編2】Imprägnieren?Auserwählte
とんでもカオスなアフタヌーンティー《side 茉莉》
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「……仕事中ですので。」
関わりたくないので端的に返すと、萌香が眉をヘニャリと下げた。
「そんなぁ。少しだけでもー。茉莉ちゃん冷たぁい!」
「茉莉、萌香ちゃんは皆で仲良くしたいって言ってるだけなんだよ?」
「そうだよ、枝反さん。皆で付き合うって悪くない話だと思わない?なぁ、お前もこっち来て座れって。」
悪い話でしかないわ。腐れ落ちろ。爆ぜて滅しろ。
茉莉までダークサイドに堕ちそうになる。隣の元友人は幽鬼のような形相で最早人を辞めたとしか思えない。
よく、こっち来て座れとか言えるわ。こいつ自殺願望あるの?
「とにかく、話すことは何もございません。オーダーがあれば承りますが、なければお引き取りください。営業妨害です。」
はっきりきっぱり告げると、萌香がムゥッとアヒル口を作って見つめてきた。二人の男に両腕を絡めると、テーブルへと引っ張っていく。
「だったらぁ、終わるまで待ってるからぁ。私ミルクティーとぉ。チーズケーキ。」
「じゃあ俺はホット。」
「茉莉、俺はアイスティーで。」
「……私はカフェオレ。」
「……オーダー承りました。」
オーダーだけね。終わるまで待ったところで誰が話すか。
結局元友人はテーブルに付き、三人と向かい合っての話し合いが始まった。時折聞こえてくる声だけでは内容までは分からない。ただ、わざわざ椅子を動かして一辺に三人が萌香を挟んで窮屈そうに並び、向かいに元友人一人が座る様子はなんだが圧迫面接のようだった。
「おい、なんだあれ。」
「……。」
厨房へ戻った茉莉に狗狼が呆れたように話しかける。どうやら元友人がドアに向かった直後にその場を離れていたらしく、幸運なことに萌香は狗狼に気付いていないようだった。なんと言う野生の勘。本能で厄災を回避している。流石深沢のリーダー。ハラショー。
「女豹です。」
「……いや、あれヒョウじゃねぇだろ。」
「愛称ですよ。」
「絶対違うだろ。」
「じゃ別名NTR。」
「いきなりアダルティだな、おい。」
「オーダー入りました。ミルクティー、ホット、アイスティ、カフェオレ、チーズケーキ一つずつです。」
「……おー。」
なんとなく触れない方がいいと悟ったのか狗狼が肩を竦めて奥へと引っ込む。そのまま見つかりませんようにと茉莉は祈った。狗狼まで粉を掛けられたら堪らない。ふみさんが怖い。
オーダーのドリンク類とチーズケーキをトレイに乗せ、テーブルへと向かうと声を掛けるのも躊躇われるくらい、どんよりと空気が澱んでいた。もう帰ればいいのにと心底呆れる。
「お待たせ致しました。」
それぞれの前にドリンクを並べ、萌香の前にはチーズケーキを置くと、テーブルへ伝票を置き、踵を返す。
「……待ってぇ。茉莉ちゃん。」
悲しそうな声を作って萌香が話しかけてくる。
「あのねぇ。私ぃ、好きになっちゃった人にぃ好きになってもらうってぇ。それってすごい確率だと思うからぁ。わざわざ相手を決めなくてもぉ。いいと思うのぉ。」
話すことはねぇつってんだろ。
無視して歩き出すと、元メイニーが声を上げる。
「待ってよ茉莉!なんで無視するの!せっかく萌香ちゃんが話しかけてるのに!」
頼んでねぇし。
「枝反さん、ちょっと待って。」
「茉莉ちゃん、座ってよ。」
元友人カップルまで参戦してきて眩暈がした。
言い返そうとしたら、ぐいっと腰を引き寄せられ驚いて振り返る。
「ジュード。」
「お待たせ、茉莉。」
大柄なジュードに抱き込まれる。あれほど怖くて苦手に感じていた大きな身体は今ではどこよりも安心する。
「さ、帰ろうか。」
「うん。」
時計を見れば、もうすぐ上がりの時間だった。しかしその前にコイツらを追い出さなければ。二度とここには来ないようにしないと。
改めて声を掛けようとして、視線を向けると萌香が立ち上がり、声を上げるのが同時だった。
「やだぁ!私の番!会いたかったぁ!!」
跳ねるようにして、元友人のメイニーを押し除け駆け寄ってくる。そのままジュードに飛び付いた。
関わりたくないので端的に返すと、萌香が眉をヘニャリと下げた。
「そんなぁ。少しだけでもー。茉莉ちゃん冷たぁい!」
「茉莉、萌香ちゃんは皆で仲良くしたいって言ってるだけなんだよ?」
「そうだよ、枝反さん。皆で付き合うって悪くない話だと思わない?なぁ、お前もこっち来て座れって。」
悪い話でしかないわ。腐れ落ちろ。爆ぜて滅しろ。
茉莉までダークサイドに堕ちそうになる。隣の元友人は幽鬼のような形相で最早人を辞めたとしか思えない。
よく、こっち来て座れとか言えるわ。こいつ自殺願望あるの?
「とにかく、話すことは何もございません。オーダーがあれば承りますが、なければお引き取りください。営業妨害です。」
はっきりきっぱり告げると、萌香がムゥッとアヒル口を作って見つめてきた。二人の男に両腕を絡めると、テーブルへと引っ張っていく。
「だったらぁ、終わるまで待ってるからぁ。私ミルクティーとぉ。チーズケーキ。」
「じゃあ俺はホット。」
「茉莉、俺はアイスティーで。」
「……私はカフェオレ。」
「……オーダー承りました。」
オーダーだけね。終わるまで待ったところで誰が話すか。
結局元友人はテーブルに付き、三人と向かい合っての話し合いが始まった。時折聞こえてくる声だけでは内容までは分からない。ただ、わざわざ椅子を動かして一辺に三人が萌香を挟んで窮屈そうに並び、向かいに元友人一人が座る様子はなんだが圧迫面接のようだった。
「おい、なんだあれ。」
「……。」
厨房へ戻った茉莉に狗狼が呆れたように話しかける。どうやら元友人がドアに向かった直後にその場を離れていたらしく、幸運なことに萌香は狗狼に気付いていないようだった。なんと言う野生の勘。本能で厄災を回避している。流石深沢のリーダー。ハラショー。
「女豹です。」
「……いや、あれヒョウじゃねぇだろ。」
「愛称ですよ。」
「絶対違うだろ。」
「じゃ別名NTR。」
「いきなりアダルティだな、おい。」
「オーダー入りました。ミルクティー、ホット、アイスティ、カフェオレ、チーズケーキ一つずつです。」
「……おー。」
なんとなく触れない方がいいと悟ったのか狗狼が肩を竦めて奥へと引っ込む。そのまま見つかりませんようにと茉莉は祈った。狗狼まで粉を掛けられたら堪らない。ふみさんが怖い。
オーダーのドリンク類とチーズケーキをトレイに乗せ、テーブルへと向かうと声を掛けるのも躊躇われるくらい、どんよりと空気が澱んでいた。もう帰ればいいのにと心底呆れる。
「お待たせ致しました。」
それぞれの前にドリンクを並べ、萌香の前にはチーズケーキを置くと、テーブルへ伝票を置き、踵を返す。
「……待ってぇ。茉莉ちゃん。」
悲しそうな声を作って萌香が話しかけてくる。
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話すことはねぇつってんだろ。
無視して歩き出すと、元メイニーが声を上げる。
「待ってよ茉莉!なんで無視するの!せっかく萌香ちゃんが話しかけてるのに!」
頼んでねぇし。
「枝反さん、ちょっと待って。」
「茉莉ちゃん、座ってよ。」
元友人カップルまで参戦してきて眩暈がした。
言い返そうとしたら、ぐいっと腰を引き寄せられ驚いて振り返る。
「ジュード。」
「お待たせ、茉莉。」
大柄なジュードに抱き込まれる。あれほど怖くて苦手に感じていた大きな身体は今ではどこよりも安心する。
「さ、帰ろうか。」
「うん。」
時計を見れば、もうすぐ上がりの時間だった。しかしその前にコイツらを追い出さなければ。二度とここには来ないようにしないと。
改めて声を掛けようとして、視線を向けると萌香が立ち上がり、声を上げるのが同時だった。
「やだぁ!私の番!会いたかったぁ!!」
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