【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 15

hundertsechsundvierzig

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 あれから、たまに悪夢を見る。

 助け出された後、実家に戻った私は、そこからラ-ガレンに通っている。昼間は普段通り、友だちと他愛のない、おしゃべりをして遊んだり課題をこなしたり。

 でも夜、ベッドへ横になった途端思い出すのだ。薄布越しに繰り広げられる数々の悍ましい行為。

 誰かの悲鳴や泣き叫ぶ声。部屋中に響く男の哄笑。肉の打つ音。不快な水音。そして毎回話しかけてくる、ひび割れたような声。

 あの男は側近に殺されたと聞いた。ざまあみろと思った。背中を預けていた相手に殺されて、惨めな奴と思った。

 だから、早く私の頭の中から出ていってよ。

 いつも顔を隠していたから、どんな顔だったのか知らない。だから街中で、似た背格好の人を見かけると硬直してしまう。そしてそんな日は必ず悪夢を見る。

 いっそ目の前で殺されたユェルンみたいに、死んだ後でも良いからどんな男か見たかった。

 そしたら、あいつはもういないって嫌でも脳が認識するのに。

「藍里さん?」

 柔らかい声に、はっとして顔を上げる。テーブルを挟んで向かいには憧れの新さんがいた。お互いヘンディルに拐われて、予定していたお見合いが流れていたから。会うのは本当に久しぶりなのに。なんでよりにもよって、あいつのことなんか。

「あのさ、僕、今カウンセリングに通ってるんだ。」
「……カウンセリング。」
「うん。大したことじゃない、もう終わったことなんだって思っても次の瞬間やっぱりあのことを考えてしまうんだよね。そんなことを繰り返してたら、何だか時間が勿体ない気がしてきて。」
「……時間、ですか?」
「そう。なんで僕の時間を、あいつらのせいで浪費しなきゃいけないんだって。そう思ったらさ。死んだあいつらに振り回されてるのが我慢できなくて。少しでも早く、元の生活に戻りたいって。思ったんだよね。」

 なんて前向きなんだろう。

 自分は見て見ぬ振りをして、蓋をして、忘れようとばかりしてきたのに。そんなことをしても、いつか弾みで蓋が開いたら。きっとドロドロに腐っててこびり付いてて。今以上に厄介なのに。

「……私も、考えてみます。」
「うん。色んな方法があるよね。人によって合う合わないもあるし。でも選択肢が増えれば、いいかなって。」
「はい。」

 ああ。やっぱり私、この人が好きだ。
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