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Hauptteil Akt 15
hunderteinundvierzig
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ずっと廊下が騒々しい。何か揉めている音と気配、声が聞こえる。ウルはすんっと鼻を鳴らした。集中して嗅いでみる。胸がどきどきと高鳴った。もしかしたら。
マグノリアの匂い。それからシダーの匂い。
「篤臣くん!狗狼も来てる!」
飛び上がってシーツを放り投げるとドアに駆け寄った。ドアノブがない為、こちらからは開けられない。手が痛くなるくらい、ドアを叩いた。
「ウルくん!助けが来たの?!」
「うん!匂いがする!篤臣くんの匂い!狗狼のもした!」
ずっとウルを守るため、マッシブだと誤解されても狗狼は従兄弟にマーキングすることをやめなかった。リーダーの匂い。間違いない。
「篤臣くん!狗狼!ここだよ!ここ!」
「狗狼くん!貴宮くん!」
二人で必死にドアを叩く。手が痛くなってきて、そろそろ限界かと言う頃ドアが荒々しく押し開かれた。二人して尻餅をつく。
驚いて瞳を瞑っていたら、乱暴に腕を掴まれた。ぞっと悪寒が走る。
『来い!』
瞳を開けて驚く。見たこともない男だが、声で分かった。
「はなしてぇ!」
ウルが叫ぶ。
『黙れ!!』
背後からグッと首に腕を回され、締め上げられた。身体がぷらんと宙に浮く。自重で喉が締まり、息苦しい。
苦しいよ、痛いよ。
「ウルくんを離せ!」
『このガキを殺されたくなかったら付いてこい!』
「離せってば!離せ!」
新がローブにしがみつき、腕を解こうとする。だがリーウェンは細身の割に力が強かった。ローブを掴んだまま、蹴り倒される。そのまま外れ、ハラリと床に広がった。
『大人しく付いてこい!今この場でガキを殺してお前だけ連れて行ってもいいんだぞ!』
新がびくりと肩を揺らす。ウルの口端からは唾液が垂れ、顔は真っ赤だった。気道が塞がって息が出来ないのだ。
『や、やめて。ウルくんを離して。』
『駄目だ。このガキがいればお前はワレの言うことを聞くだろう?だから連れて行く。』
ウルの命を盾に脅すと言われ新は悲鳴を上げた。
『僕だけでいいだろ!』
『うるさい黙れ!』
「う、うぇ。」
ますます締め上げられて、もがいていたウルの腕がだらりと落ちる。
『分かったから!死んじゃう!死んじゃうよ!』
叫ぶ新の腕を掴み引き寄せた時、側近の一人が飛び込んできた。そのままリーウェンの側につく。後を追って篤臣たちも駆け込むと、締め上げられたウルと捕まった新を見て動きを止めた。
「ウル!ウル!」
「あ、あつ、う、ぇ。」
首を絞められ、顔が真っ赤になったウルを見て篤臣の中で何かが壊れた。ぶわりと威圧が噴き出し、どんどんと増して行く。
『ウルを離せ。』
『なんだあ?このガキか?ん?そんなに大事か?』
ウルを締め上げ、新も捕まえたリーウェンはニタリと笑った。後ろには側近の中でも一番腕が立つ男がいる。コイツがいれば、屋上デッキにあるヘリで空へと逃げられる。腕の中には人質が二人。偉そうなことを散々言っていたが手も足もでまい。ユェルンを殺したと言ったな?だったらそれ相応の報いを受けさせてやる。
ウルの頬にベロリと舌を這わせる。こんな子供に興味はないが弱味となるなら利用してやる。最後は目の前で殺して捨てていってやろう。
「きさまぁ!!!」
篤臣の耳が変わり、服の間から尻尾が現れる。しかし半獣化だけでは収まらなかった。瞳孔が縦長に変わり、上下に牙が現れる。爪まで伸びた篤臣を見て、フィンレーが息を呑んだ。
『まずい。グリュンダーだ。』
稀に上位種に現れる凶暴化のことをグリュンダーと呼ぶ。フィンレーも見るのは初めてだった。
リーウェンが愉快そうに笑い声を上げた。
『おい、相手してやれ。』
『……はい。』
声を掛けられた側近の男が淡々と答える。篤臣が低い唸り声を上げた。
マグノリアの匂い。それからシダーの匂い。
「篤臣くん!狗狼も来てる!」
飛び上がってシーツを放り投げるとドアに駆け寄った。ドアノブがない為、こちらからは開けられない。手が痛くなるくらい、ドアを叩いた。
「ウルくん!助けが来たの?!」
「うん!匂いがする!篤臣くんの匂い!狗狼のもした!」
ずっとウルを守るため、マッシブだと誤解されても狗狼は従兄弟にマーキングすることをやめなかった。リーダーの匂い。間違いない。
「篤臣くん!狗狼!ここだよ!ここ!」
「狗狼くん!貴宮くん!」
二人で必死にドアを叩く。手が痛くなってきて、そろそろ限界かと言う頃ドアが荒々しく押し開かれた。二人して尻餅をつく。
驚いて瞳を瞑っていたら、乱暴に腕を掴まれた。ぞっと悪寒が走る。
『来い!』
瞳を開けて驚く。見たこともない男だが、声で分かった。
「はなしてぇ!」
ウルが叫ぶ。
『黙れ!!』
背後からグッと首に腕を回され、締め上げられた。身体がぷらんと宙に浮く。自重で喉が締まり、息苦しい。
苦しいよ、痛いよ。
「ウルくんを離せ!」
『このガキを殺されたくなかったら付いてこい!』
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新がローブにしがみつき、腕を解こうとする。だがリーウェンは細身の割に力が強かった。ローブを掴んだまま、蹴り倒される。そのまま外れ、ハラリと床に広がった。
『大人しく付いてこい!今この場でガキを殺してお前だけ連れて行ってもいいんだぞ!』
新がびくりと肩を揺らす。ウルの口端からは唾液が垂れ、顔は真っ赤だった。気道が塞がって息が出来ないのだ。
『や、やめて。ウルくんを離して。』
『駄目だ。このガキがいればお前はワレの言うことを聞くだろう?だから連れて行く。』
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『僕だけでいいだろ!』
『うるさい黙れ!』
「う、うぇ。」
ますます締め上げられて、もがいていたウルの腕がだらりと落ちる。
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叫ぶ新の腕を掴み引き寄せた時、側近の一人が飛び込んできた。そのままリーウェンの側につく。後を追って篤臣たちも駆け込むと、締め上げられたウルと捕まった新を見て動きを止めた。
「ウル!ウル!」
「あ、あつ、う、ぇ。」
首を絞められ、顔が真っ赤になったウルを見て篤臣の中で何かが壊れた。ぶわりと威圧が噴き出し、どんどんと増して行く。
『ウルを離せ。』
『なんだあ?このガキか?ん?そんなに大事か?』
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ウルの頬にベロリと舌を這わせる。こんな子供に興味はないが弱味となるなら利用してやる。最後は目の前で殺して捨てていってやろう。
「きさまぁ!!!」
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『おい、相手してやれ。』
『……はい。』
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