【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 14

hundertfünfunddreißig

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 プランA'とは元々フィンレーが用意していた作戦だった。本来、こちらを採用するつもりだったのだ。それはとても単純で尚且つ効果的なものだった。

『矛盾の語源を知ってるかい?』
 合流地点近くのホテル。そのスイートルームで発したフィンレーの言葉に、狗狼は訝しげな顔をした。

『あれだろ?絶対何でも切れるって触れ込みの矛と、絶対何でも防げるって触れ込みの盾を並べて売ってましたって言う。』
 狗狼の大雑把な返答を聞いてフィンレーは満足そうに頷いた。

『そう、それだよ。絶対切れる矛と絶対防げる盾。じゃあどちらが本当に絶対の性能を誇るのか。どちらもおかしいから矛盾。これが語源だ。』
『で?』
『シュウ・リーウェンは船の防御力に絶対の自信を持っている。空も、海も。近づくものはみんな、撃ち落とし、沈めてやるってね。でも、残念ながら絶対はそうそう存在しない。特に、人が絡むとね。そして人が絡まない事象など自然以外にほぼない。』
『つまり?』
『いかな鉄壁の防御力を備えようとも、必ずあるんだよ。穴がね。』
『へー、なにしたんだ?』
『私にあるのは名と人脈と資金だ。それらを上手く使えばいい。今回は技術だね。ステルススーツを作った。』
『なんだそれ。』
『センサー探知機能に認識されないスーツだよ。それを着て潜れば、船に容易に近付ける。』
『まじかよ。お前えげつねぇな。』
『ははは。そうかい?想像したら楽しくないか?この船には絶対誰も近寄れない。そう思い込んでいるところに、数百人の特殊部隊が突入してくるんだ。驚くだろうね。』
『そっちでも良かったじゃねぇか。俺らも紛れ込めたし。』
『言っただろう?安全性と確実性を取ったって。』
『あー。まぁそうか。客として潜入出来て上手くいくなら怪我人は出ねぇわな。』
『そう言うことだ。オークションで由月 藍里さんを落札して穏便に助け出し、アシェル家のバトラーにヤン・ユェルンの引き渡しをさせている間に、桜庭くんと笹川くんを救出する。ヤン・ユェルンに気を取られている間にそのまま撤収。その後、オークション帰りの顧客全員を拘束。落札された被害者たちを救出したのち、船を沈める。理想としてはこうだけど。如何せん物事はそう単純ではないし、上手くいくことの方が少ない。だから補完として元々の作戦をプランA'として使うことにした。』
『プランBではないんだな。』
『プランBだと補完ではないからね。全く別の策になる。』
『ふぅん。』

 二人のやり取りを、篤臣は黙って見つめた。フィンレーは狗狼に説明しながらも、篤臣にも聞かせているのだ。気を張るな。やりようはいくらもある。

 必ず、助け出せる。その為に、ここにいる。

 親友の気持ちが嬉しくて、篤臣はやっと少しだけ息が吸えた気がした。
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