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Hauptteil Akt 13
hundertsechsundzwanzig
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「新くん!新くん!」
ローブの男に付き従っていた男が、突然部屋に入ってきたかと思ったら新からウルを引き剥がした。まるでゴミのようにポイッと床に放り投げられ、立ち上がった時にはベッドの上で男が新に覆い被さっているところだった。必死に掴み掛かると、男は面倒くさそうにウルを見てそのまま出て行った。
何があったのか分からない。一瞬のことだった。新を見ると、身体を丸めベッドに顔を押し付けている。何度声をかけても呻き声だけで返事がない。やがて大量の汗が吹き出し、身体に服が張り付いた。熱があるのかと肩に触れると顔を上げた新を見て、何をされたのか理解した。
真っ赤に頬が染まり、瞳が潤んでいる。唇が半開きになって唾液が垂れていた。そして頭部にぴんと立つ、形の良い白い耳。恐る恐る視線を下げると、服の隙間から長く艶やかな尻尾が出ていた。白く滑らかで輝く美しい毛。フリージアンの耳と尻尾。半獣化してる。
ムタチオンだ。
変異発情促進剤ムタチオン。ウルも知識としては知っている。充分気を付けろと狗狼には何度も口酸っぱく言われていたから。
上掛けを掴んで頭から被せると立ち上がり、パウダールームへと駆け込んだ。ここには監視カメラはない。新と確認した。そっと左耳のイヤカフに触れると手順を思い出す。専用キーがない場合の外し方。緊急の時だけだと言われた。今がその時だ。
ぱちんと音を立て、イヤカフが外れる。同じく手動で針を繰り出した。細く長い針。注入用のボタンも露出させる。何度も練習した。産まれて間もない頃からずっと。
汗を拭うためにタオルを掴むと、その中にイヤカフを包む。部屋にかけ戻るとベッドの上で熱い息を吐き、悶える新から上掛けをずらした。そのまま頭にタオルを被せ、顔中の汗を拭う。その間に手へ滑らせたイヤカフを握ると、傍目には声掛けで顔を寄せたように見せかけて囁いた。
「新くん、ごめん。我慢してね。」
返事も出来ない新が、ウルを見る。にこりと安心させる為に微笑むと、そのまま頸にぷすりと刺した。すかさずボタンを押し、抑制剤を注入する。
「だいじょぶだよ。すぐに治るからね。」
再びイヤカフをタオルに包むと肩を撫で、換えのタオルを取りに戻る風を装いパウダールームにとって返した。入ってすぐ、先程とは逆手順でイヤカフを装着する。新しいタオルを掴むと、新の元へ再びかけ戻った。
顔を覗くと息が落ち着き、頬の赤みも抜けてきていた。耳はまだ出ているが、尻尾は少しずつ収まってきている。変化を監視カメラで知られるわけにはいかないと上掛けを掛け直す。
「お水、持って来るね。」
「……うん。」
キッチンに行くと、グラスを掴み水を注いだ。きっと今頃篤臣も狗狼も心拍がERRORと表示されたことに気が付いて心配しているだろう。改めて装着したから無事なのは伝わるはず。
だいじょぶ。僕はだいじょぶだから。篤臣くん。
心の中で、何度も声をかけ続ける。届かないことは分かっていても、話しかけずにはいられない。ごめんね。でも、ここで新くんに使わなかったら。きっと酷いことをされる。
あの男。フードを被ったあの男に。きっと。
ムタチオンを打つなんて、目的は一つしかない。新を狙っていたことは聞いていた。だから今更種の確認なんかで打ったりしない。新くんを嬲る為だけに打った。許さない。
絶対、許さない。
ローブの男に付き従っていた男が、突然部屋に入ってきたかと思ったら新からウルを引き剥がした。まるでゴミのようにポイッと床に放り投げられ、立ち上がった時にはベッドの上で男が新に覆い被さっているところだった。必死に掴み掛かると、男は面倒くさそうにウルを見てそのまま出て行った。
何があったのか分からない。一瞬のことだった。新を見ると、身体を丸めベッドに顔を押し付けている。何度声をかけても呻き声だけで返事がない。やがて大量の汗が吹き出し、身体に服が張り付いた。熱があるのかと肩に触れると顔を上げた新を見て、何をされたのか理解した。
真っ赤に頬が染まり、瞳が潤んでいる。唇が半開きになって唾液が垂れていた。そして頭部にぴんと立つ、形の良い白い耳。恐る恐る視線を下げると、服の隙間から長く艶やかな尻尾が出ていた。白く滑らかで輝く美しい毛。フリージアンの耳と尻尾。半獣化してる。
ムタチオンだ。
変異発情促進剤ムタチオン。ウルも知識としては知っている。充分気を付けろと狗狼には何度も口酸っぱく言われていたから。
上掛けを掴んで頭から被せると立ち上がり、パウダールームへと駆け込んだ。ここには監視カメラはない。新と確認した。そっと左耳のイヤカフに触れると手順を思い出す。専用キーがない場合の外し方。緊急の時だけだと言われた。今がその時だ。
ぱちんと音を立て、イヤカフが外れる。同じく手動で針を繰り出した。細く長い針。注入用のボタンも露出させる。何度も練習した。産まれて間もない頃からずっと。
汗を拭うためにタオルを掴むと、その中にイヤカフを包む。部屋にかけ戻るとベッドの上で熱い息を吐き、悶える新から上掛けをずらした。そのまま頭にタオルを被せ、顔中の汗を拭う。その間に手へ滑らせたイヤカフを握ると、傍目には声掛けで顔を寄せたように見せかけて囁いた。
「新くん、ごめん。我慢してね。」
返事も出来ない新が、ウルを見る。にこりと安心させる為に微笑むと、そのまま頸にぷすりと刺した。すかさずボタンを押し、抑制剤を注入する。
「だいじょぶだよ。すぐに治るからね。」
再びイヤカフをタオルに包むと肩を撫で、換えのタオルを取りに戻る風を装いパウダールームにとって返した。入ってすぐ、先程とは逆手順でイヤカフを装着する。新しいタオルを掴むと、新の元へ再びかけ戻った。
顔を覗くと息が落ち着き、頬の赤みも抜けてきていた。耳はまだ出ているが、尻尾は少しずつ収まってきている。変化を監視カメラで知られるわけにはいかないと上掛けを掛け直す。
「お水、持って来るね。」
「……うん。」
キッチンに行くと、グラスを掴み水を注いだ。きっと今頃篤臣も狗狼も心拍がERRORと表示されたことに気が付いて心配しているだろう。改めて装着したから無事なのは伝わるはず。
だいじょぶ。僕はだいじょぶだから。篤臣くん。
心の中で、何度も声をかけ続ける。届かないことは分かっていても、話しかけずにはいられない。ごめんね。でも、ここで新くんに使わなかったら。きっと酷いことをされる。
あの男。フードを被ったあの男に。きっと。
ムタチオンを打つなんて、目的は一つしかない。新を狙っていたことは聞いていた。だから今更種の確認なんかで打ったりしない。新くんを嬲る為だけに打った。許さない。
絶対、許さない。
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