【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 13

hundertzweiundzwanzig

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 あれから篤臣は、ウルの心拍を確認する毎日を送りながら回復に努めていた。

 傷が深く多くの血を流した為、なかなか医者から許可が下りない。動けないならせめてとウルの着ていた服や愛用のブランケットを巣材にして、ベッドに持ち込んでいた。しかし、それらからも段々と匂いが薄れてきている。

 会いたくて堪らない。

 フィンレーは話をした二日後にはジュードを伴い、クロエと共にディストリクトへと発った。無事到着したと連絡は受けたが、それ以降は途絶えている。協力者との交渉が難航しているのかも知れないが、進捗が分からないので気持ちばかりが焦った。

 狗狼は篤臣と共通言語で会話しているが本人の言う通り、問題なく出来ている。懸念していた通り、口が悪すぎるのでそこは矯正が必要になると言うのは想定の範囲内だった。必然的にベッドの住人と化している篤臣が、その役割を受け持っている。

 食べて、寝て、ウルの心拍を確認して、狗狼との共通言語のレッスンしかすることがない篤臣は、ふとした時に余計なことばかり考え込むようになっていた。

『おい、貴宮。』
『あ?ああ。』
『まだ連絡ねぇのか。』
『……そうだな。』
『あのよ。仮に上手く行ったとして、オークションはすぐ開かれんのか?』
『どう言う意味だ?』
『俺らはすぐにでも救出に向かいたいわけだろ?でも、客として乗り込むならオークションまで待たなきゃいけねぇじゃねぇか。それまでウルや新が無事なのか分かんねぇだろ?てれっと待ってていいのかっつってんだ。』
『ああ。そのことか。』
 不機嫌そうな狗狼に苦笑する。恐らくフィンレーも話そうとはしたはずだ。だが、新をデコイにしたことで狗狼はフィンレーを毛嫌いしている。必要な話なら篤臣から聞けばいいと無視し続けたのだろう。

『ヘンディルの船が少し前に完成していて、天蒼から撤退するって言う情報は掴んでいたんだ。完成披露も兼ねて、大々的にオークションが開催されるということも併せてね。工作員たちは新くんを拐うためだけに残ってた。』
『なるほどな。』
『目的は達したから、あとは船で予定通り盛大にオークションを開くだけだ。開催は……来週の木曜日だと聞いている。』
『分かった。』
『……ウルの御両親はどうしてる?』
『あ?ああ、お前のおかげで、ばあちゃんも、ふみもいるし。ガキたちもいるからな。大分気が紛れてる。』
『……そうか。』
『救出する日が分かったから伝えとくわ。』
『ああ。』
『アイツら全員ぶっ潰してやる。』
『ああ。』

 だからフィンレー、頼む。

 早く連絡をくれ。気が狂いそうだ。
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