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Hauptteil Akt 13
hunderteinundzwanzig
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ここに連れて来られて、今日で一週間になる。ウルは日に日に落ち着かない気持ちを堪えきれず、シーツに包まり部屋の隅っこに座り込むようになっていた。新がその隣に座り、二人で立てた膝の間に顎を埋める。
「帰りたいね。」
「うん。」
ウルは小さく頷いた。気が緩むと泣きそうになる。でも、泣いたら新は自分を責める。それにもう、決めたのだ。
泣くのは篤臣くんのところに帰ってから。それまで、泣かない。
ここで感情のまま過ごしても、良いことは一つもない。最悪又、耳が。それどころか尻尾まで出てしまったら、いよいよ誤魔化せなくなる。そうなったら篤臣とはもう会えない。あの胸に帰ることは出来なくなる。
そんなの絶対やだ。
「あのね、ここに僕の知ってる人も拐われてるんだ。」
「……え?」
「藍里さんって言ってね。祖父同士が友人で。」
「そうなんだ。心配だね。どこにいるのかな……。」
「うん……。」
「僕たちみたいに監禁されてるなら、近くにいるかも知れないね。」
新を見つめて問いかける。だとしたら、どうにかして顔だけでも見れないだろうか。
「そうだと、いいな。」
新が辛そうに呟いた。
その時ドアが開き、二人の男が入ってきた。ローブのフードを目深に被った細身でヒョロリとした男と、鍛えられた身体つきの男。清掃や食事以外で人が来るのは初めてで、ウルは新の腕をぎゅっと掴んだ。
『やぁ、はじめましてだなぁアラタ。』
『……。』
『ワレはシュウ・リーウェン。これからお前の主人になる。よろしくなぁ。』
この人、怖い。何を話してるのか分からないけど、見られたくない。
被っていたシーツを持ち上げ新も一緒に包み直すと、視線を遮るようにした。
『おいおい。子供はやることが違うなぁ。隠れたつもりかぁ?』
『リーウェン様。あまり揶揄うと、余計面倒になります。』
『ああ、そうだな。今日はワレのお気に入りに挨拶しに来ただけだ。』
そう言って、足音が遠ざかっていく。と、立ち止まるとついでのように投げかけられた。
『アイリのことが気になっているかと思ったが違ったようだ。』
新がシーツを跳ね除ける。はずみで勢いよく転がり、慌てて起き上がった。フードを被った男を新が睨み付けている。
『彼女はどこだ。』
『はは。やっと口を開いたかと思えば、他の女のことか。ワレがこんなに思っていると言うのに。酷い男だなぁ。』
『答えろ!無事なんだろうな!』
激昂する新を初めて見た。どうして良いか分からない。
『教えて欲しいか?ん?』
揶揄うように笑うフードの男が瞬きの間に目の前に立った。一瞬で距離を詰められ、息を飲む。
『美しいなぁ、アラタ。目が輝いてる。お前を抱く日が楽しみだ。その時アイリに会わせてやる。お前の尻穴に陰茎を捩じ込み、ヨガらせる様をたっぷりアイリに見せ付けてやるぞ。はははは!』
高笑いをしながら、フードの男が部屋を出ていく。後ろにもう一人の男も続き、ドアがバタンと閉められた。ドアノブが存在しないこの部屋は、外からしか開けられない。
「新くん。」
「……ごめん、ウルくん。動揺して。」
俯いて拳を握る新が辛そうで、そうっと手を握った。握り込まれた手を撫でながら、少しずつ解す。
「ありがとう。」
顔を上げた新の瞳から涙が溢れた。拐われてから今日まで、新は一度も泣かなかった。その新が泣いている。
きっと、何か酷いこと言われたんだ。あの人嫌い。大嫌い。
手を引っ張ってソファまで新を促すと座らせ、水を入れる為に備え付けのキッチンへと駆け寄った。新の泣き声が聞こえてきて、ウルも泣きそうになる。
僕が、しっかりしなきゃ。
ぐっと唇を噛み締める。左耳のイヤカフに触れた。助けは必ず来る。篤臣も狗狼も絶対諦めない。だから僕も諦めない。何があっても絶対。
グラスを掴み、水を注ぐと新の元に駆け寄った。隣に座るとグラスをテーブルに置き、ぎゅっと抱きしめる。
「だいじょぶだよ、新くん。だいしょぶ。」
「ウルくん……ウルくん……。」
新の声が胸に刺さる。大事な友だち。ウルの親友。秘密を知っても変わらず一緒にいてくれた。大切な新をこんなに泣かせた。
あの人、許さない。
こんなに怒りを覚えるのは、初めてのことだった。
「帰りたいね。」
「うん。」
ウルは小さく頷いた。気が緩むと泣きそうになる。でも、泣いたら新は自分を責める。それにもう、決めたのだ。
泣くのは篤臣くんのところに帰ってから。それまで、泣かない。
ここで感情のまま過ごしても、良いことは一つもない。最悪又、耳が。それどころか尻尾まで出てしまったら、いよいよ誤魔化せなくなる。そうなったら篤臣とはもう会えない。あの胸に帰ることは出来なくなる。
そんなの絶対やだ。
「あのね、ここに僕の知ってる人も拐われてるんだ。」
「……え?」
「藍里さんって言ってね。祖父同士が友人で。」
「そうなんだ。心配だね。どこにいるのかな……。」
「うん……。」
「僕たちみたいに監禁されてるなら、近くにいるかも知れないね。」
新を見つめて問いかける。だとしたら、どうにかして顔だけでも見れないだろうか。
「そうだと、いいな。」
新が辛そうに呟いた。
その時ドアが開き、二人の男が入ってきた。ローブのフードを目深に被った細身でヒョロリとした男と、鍛えられた身体つきの男。清掃や食事以外で人が来るのは初めてで、ウルは新の腕をぎゅっと掴んだ。
『やぁ、はじめましてだなぁアラタ。』
『……。』
『ワレはシュウ・リーウェン。これからお前の主人になる。よろしくなぁ。』
この人、怖い。何を話してるのか分からないけど、見られたくない。
被っていたシーツを持ち上げ新も一緒に包み直すと、視線を遮るようにした。
『おいおい。子供はやることが違うなぁ。隠れたつもりかぁ?』
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『ああ、そうだな。今日はワレのお気に入りに挨拶しに来ただけだ。』
そう言って、足音が遠ざかっていく。と、立ち止まるとついでのように投げかけられた。
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新がシーツを跳ね除ける。はずみで勢いよく転がり、慌てて起き上がった。フードを被った男を新が睨み付けている。
『彼女はどこだ。』
『はは。やっと口を開いたかと思えば、他の女のことか。ワレがこんなに思っていると言うのに。酷い男だなぁ。』
『答えろ!無事なんだろうな!』
激昂する新を初めて見た。どうして良いか分からない。
『教えて欲しいか?ん?』
揶揄うように笑うフードの男が瞬きの間に目の前に立った。一瞬で距離を詰められ、息を飲む。
『美しいなぁ、アラタ。目が輝いてる。お前を抱く日が楽しみだ。その時アイリに会わせてやる。お前の尻穴に陰茎を捩じ込み、ヨガらせる様をたっぷりアイリに見せ付けてやるぞ。はははは!』
高笑いをしながら、フードの男が部屋を出ていく。後ろにもう一人の男も続き、ドアがバタンと閉められた。ドアノブが存在しないこの部屋は、外からしか開けられない。
「新くん。」
「……ごめん、ウルくん。動揺して。」
俯いて拳を握る新が辛そうで、そうっと手を握った。握り込まれた手を撫でながら、少しずつ解す。
「ありがとう。」
顔を上げた新の瞳から涙が溢れた。拐われてから今日まで、新は一度も泣かなかった。その新が泣いている。
きっと、何か酷いこと言われたんだ。あの人嫌い。大嫌い。
手を引っ張ってソファまで新を促すと座らせ、水を入れる為に備え付けのキッチンへと駆け寄った。新の泣き声が聞こえてきて、ウルも泣きそうになる。
僕が、しっかりしなきゃ。
ぐっと唇を噛み締める。左耳のイヤカフに触れた。助けは必ず来る。篤臣も狗狼も絶対諦めない。だから僕も諦めない。何があっても絶対。
グラスを掴み、水を注ぐと新の元に駆け寄った。隣に座るとグラスをテーブルに置き、ぎゅっと抱きしめる。
「だいじょぶだよ、新くん。だいしょぶ。」
「ウルくん……ウルくん……。」
新の声が胸に刺さる。大事な友だち。ウルの親友。秘密を知っても変わらず一緒にいてくれた。大切な新をこんなに泣かせた。
あの人、許さない。
こんなに怒りを覚えるのは、初めてのことだった。
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