【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 12

hundertachtzehn

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 あの恐ろしい爆破シーンを見せられたあと。ウルと新のすぐ前に座っていた男が振り返り、新の腕を乱暴に掴んだ。ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべながら『さぁて、じゃあ楽しませてもらおうかなぁ。』と歌うように話しかけてくる。

 ぞっとして腕を振り払おうとしたが、強くて敵わなかった。ウルもしがみついて何とか外そうとはしてくれたけれど、びくともしない。

『おい、やめとけ。』
『ああ?何でだよ?上納前は構わねえだろ?』
『いつもはな。』
『今回は別だ。ユェルン様と、二人も捕まったんだぞ。』
『監視に回した奴が戻ったらすぐ船に行こう。』
『そうだな、報告しねぇと。』
『絶対機嫌が悪くなるよな。』
『狩りは上手くいったのによ。』
『アゲンツも吹き飛ばしたしな。』
『だからって呑気に遊んでたなんて知られたら。』
『間違いなく殺されるな。』
『……そうか。そうだな。』
 忌々しそうに男が手を離す。

『間が悪いよなぁ。』
『なぁ。』
『せっかくの上物なのによ。』
『こっちはガキだしなぁ。』
『見た目は同じく上物だけどなぁ。』
『ガキには勃たねぇわ。』
『ついでに連れてきたから上納はするけど。売れるかなコイツ。』
『たまにいるじゃん、ペドフェリア。』
『だな。』

 新は共通言語を理解出来るが、ウルは理解出来ないようだった。青ざめた顔で、きょろきょろと視線を彷徨わせているが腑に落ちない顔をしている。

 良かった。意味が分かったらますます怯えるだろうから。

 さっき偶然知ってしまったウルの秘密。幅広の垂れ耳。恐らくロップイヤー。兎。そして狼の狗狼とは従兄弟。つまり。

 タイプがミックスの兎。とんでもない希少種だ。知られればオークションの目玉どころではない。どんな目に遭うか想像もつかない。

 絶対知られないようにしなければ。ウルの手を握ると、ぎゅっと握り返された。見上げてくる瑠璃色の瞳。その中に怯えは見当たらない。

 信じてるんだ。貴宮くんも狗狼くんも無事で、必ず助けに来るって。だったら、せめてそれまでは僕がウルくんを守らないと。

 身を寄せ合い、離れまいと二人くっつく。男たちに無理矢理薬を嗅がされ、意識を失っている間にそのまま船へと運ばれた。やがて二人が目を覚ますと綺麗で豪華な客室の一室で揃いの服を着せられ、首には薄い金属製の首輪が着けられていた。

「これ、なにか細工がしてありそうだね。」
「うん……なんだろ。」
 ウルが首輪に触れる。

「たぶん、逃走防止用の首輪だろうね。」
「ビリビリッてするとか?」
「うん……。」

 電気ショックも充分怖いが新が恐れているのは薬物だった。

「外せないものは仕方ないから、とにかく無事でいられるように気を付けよう。」
「うん、助けが来るまでの辛抱だよね。」
「……ウルくん、本当にごめんね。僕が君のところに行かなかったら。巻き込まずに済んだのに……。」
「ううん。頼ってくれて嬉しかったよ、いつも新くんには助けてもらってたから。」
「ウルくん……。」
「あと、僕の。」
「ストップ。」
「?」
「そのことは、話さないほうがいい。」
 新は声を顰めて警告した。部屋中至る所に監視カメラがあるのを目線で教える。

「多分、見られてるし聴かれてる。口にしない方がいいよ。」
「そ、か。うん。わかった。気を付ける。」
「あと、アイツらに話しかけられても返事はしないで。いい?」
「?そなの?わかった。」

 もし天蒼の言葉が分かるものがいて、歳を聞かれたウルが迂闊にも答えたら。間違いなく手を出される。子供だと思われている方が安全だった。

「お互い離れないようにしよう。」
「うん。」

 こくこくとウルが頷く。それから二人は客室に監禁されたまま、片時も離れずじっとしていた。
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