【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 12

hundertsiebzehn

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 新を拐うよう、八人の工作員を差し向けたリーウェンは報告を受けイライラと天板に拳を振り落とした。
 戻ってくるよう指示したユェルンが暴走し、アゲンツに捕まったと言う。お陰で折角新を捕まえたというのに、とてもではないが、喜ぶ心境にはなれなかった。

『愚か者が。』
『……如何致しましょう。』
 側近の一人がジッと待つ。

『どこにいるのか分かっているのか。』
『いえ。』

 ユェルンを失うのは惜しい。自分を崇拝しているし、一流の戦闘スキルを持っている。四人の側近は護衛も兼ねているのだ。その中でユェルンのランクは二位だった。今目の前にいる男には劣るが、それでも残り二人より強い。一人で狩りをし、連れ去れるほどの腕力も持っている紅一点。

 ツェアシュテールに捕らわれた工作員たちが今まで拷問を受けたと言う報告は上がっていない。全員然るべき組織や機関に送られ、法的に公正な処罰を受けたことが確認されている。むしろ、こちらの方が口封じに動くことがあった。非人道的な扱いをする組織ではない為、違法な尋問で情報が漏れることはないだろう。ならば一刻も早く救出しなければ。

『居場所を探れ。』
『畏まりました。』
 恭しく、男が首を垂れる。

『まぁアゲンツを誘き出し、吹き飛ばしたのはよくやった。少しは痛い目を見てもらわんとな。』
『……おっしゃる通りです。』
『で、アラタだが。拐ってきたものたちは、味見したのか?』
『いえ。目の前でユェルンが捕らわれ救出出来なかったのですから。リーウェン様のものに手を出す気概はなかったようです。』
『……フン。』

 例え助けに入ったとしてもアゲンツ相手にあの工作員たちでは返り討ちに遭っていただろう。彼らは天蒼に潜伏する際、オークションにかけるものたちの監視兼護送役の為だけに選ばれた、言わば寄せ集めだった。ただでさえ慣れない天蒼での狩り。新に付けられている五人の護衛。確実に拐えと八人も投入したが、護衛がアゲンツだとは思いもよらなかった。いつものようにツーマンセルで向かわせてたらと思うとゾッとする。男たちが空港でユェルンに気付き、一人を新の監視に付けたお陰で拐えたし、護衛がアゲンツでユェルンが捕まったこともいち早く知れた。そこは良かったが。

 ユェルンめ。アラタに目が眩んだな。

 男たちはユェルンが捕まったことで、リーウェンの機嫌が悪くなると予想し新には手を出さなかったのだろう。当たっている。これで慣例通り、先に味見をしていたら八つ当たりで皆殺しにしていた。

『ついでにフェイを一人拐ってきたらしいな。』
『はい。身元は不明です。種も分かりませんが、容姿は目を惹きます。ただ、どうも子供のようです。』
『いくつくらいだ?』
『おそらく、11歳か12歳くらいではないでしょうか。』
『……幼すぎるな。』
『はい。元々天蒼国民は大陸圏のものたちに比べて幼く見えますので、実際はもっと上なのかも知れません。全体的に小柄で痩せており、第二次性徴期を迎えているのか微妙なところです。』
『本人から聞き出せないのか。』
『共通言語を理解してないようです。』
『フゥン。』

 稚児趣味はないので、食指は動かない。だが、そう言う趣味の好事家には良いかも知れない。

『ムタチオンを投与して半獣化させるか。』
『それですが……。もし、第二次性徴期を迎えていないのであれば錯乱する可能性があります。実年齢が分かるまでは、お待ちになった方が懸命かと。』
『それもそうか。』

 売る前にタイプと種を調べ、情報として公開するのは基本だ。必ずフェイかグラスか。種は何か。最低限必要になる。

『まぁ、そちらはお前に任せよう。』
『はい。』
『さっそくアラタを可愛がりたいところだが。ユェルンのことが片付かないことにはなぁ。腹立たしくて、手荒にしそうだ。折角手に入れたのに、傷でも残れば目にする度にイラつきそうだ。』
『であれば、少し様子を見られては如何でしょうか?監禁した部屋には監視カメラを複数台付けております。ササカワ アラタは拐ってきた子供を庇護し決して側を離れようとはしません。このまま二人一緒にしておけば、年齢やタイプ、種などを知る機会が増えるかと思います。』
『なるほどな。』

 頷いたリーウェンはテーブルに置いてあったグラスを掴み、少なくないスコッチを一気に煽った。

『まぁ、いいだろう。当分は遊ばせておけ。』
『畏まりました。』
『ああ、首輪は二人ともに着けておけよ。』
『はい。』

 本拠地からお気に入りのグラスを奪われた時にリーウェンは決めた。今後拐ってきたものたち全員に金属製の首輪をつける。それらはリーウェンの着けているペンダントと繋がっており、一定距離から離れると内部から針が出て致死量の毒薬が注入される仕組みとなっていた。解除にはやはり、ペンダントが必要になる。

 また、あんな風に奪われるくらいなら。

 助け出したと安堵した時に絶望するようにしてやる。目の前で冷たくなっていく骸を抱いて泣き叫べば良い。

 クツクツと嗤った。
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