129 / 238
Hauptteil Akt 12
hundertdreizehn
しおりを挟む
「あ……。あ、やだ。やだ。」
ウルの目の前で、燃え上がるペントハウス。バンの中でフロントガラスをスクリーンに変えて投映されていたのは、ウルや新の救出に現れた篤臣たちが中に入って間もなく、轟音とともに吹き飛ぶペントハウスのライブ映像だった。
隣にいる新が、ウルをぎゅっと抱き締める。五人の男たちは、楽しそうに笑い声上げた。
『はははは!派手に散った散った!』
『GPSなんて付けやがるからだ、全く。』
運転席の男がハンドルを叩き笑う。隣の助手席に座る男が手にしたドローンのコントローラを得意げに揺らした。
その後列に座る三人の男たちが口々に囃し立てる。
『派手にドッカーンって!お前相変わらずエゲツねぇな!』
『アゲンツ吹っ飛ばせるんなら、気合いが入るってもんよ。』
『だな。しっかし護衛付けてたのは聞いてたけど、まさかアゲンツとはな。』
『念の為、攫う前に空港で監視させといて良かったぜ。目の前でユェルン様が捕まったって連絡には肝が冷えたけどな。』
何を言っているのか分からないが、酷いことを言っているのは伝わる。ウルは意識を必死に保とうとした。
大丈夫、篤臣くんは大丈夫。だって強いもん。豹の純血種だもん。上位種だもん。
大好きな篤臣が、ウルを残して死ぬわけない。
耳が出そうになって、咄嗟に頭を抱え込んで蹲った。バンの中は暗く、ウルと新は最後列に二人だけで乗せられていた。だから注意してこちらを見なければ気付かれない。小さくなったウルに被さるようにして新が頭を抱え込んだ。
「……ウルくん……。耳が。」
驚いただろうに、声を抑えて伝えてくる新に泣きそうになる。
ああ、出ちゃった。知られちゃった。
「大丈夫だよ。皆強いから。絶対大丈夫。」
励ます新の手も声も震えていて、ウルは頷きながらぎゅっと抱き返した。
「うん。うん。」
しっかりしなきゃ。自分に出来ることは、ミックスで兎だと知られないこと。無事でいること。それから。
そっと左耳に着いたシルバーのイヤカフに触れる。ヘンディルの工作員たちはアゲンツが護衛に付いていた新にGPSが付いているだろうことは予測出来ても、ついでに拐ったウルまで着けていることは予想出来なかったらしい。二人揃って着替えさせられたが、イヤカフがGPSだとは気付かれなかった。
新しく乗り換えられた移動用のバンには元々ジャミング機能が搭載されているらしく、今はどこにウルがいるのか篤臣たちには分からないだろうけれど。
きっと、どこかで繋がる。隙ができるはず。それまで、気付かれないようにしなくちゃ。
こくりと唾を飲み込むと、新の服を握りしめる。次第に耳が戻り、ウルは息を吐き出した。
ウルの目の前で、燃え上がるペントハウス。バンの中でフロントガラスをスクリーンに変えて投映されていたのは、ウルや新の救出に現れた篤臣たちが中に入って間もなく、轟音とともに吹き飛ぶペントハウスのライブ映像だった。
隣にいる新が、ウルをぎゅっと抱き締める。五人の男たちは、楽しそうに笑い声上げた。
『はははは!派手に散った散った!』
『GPSなんて付けやがるからだ、全く。』
運転席の男がハンドルを叩き笑う。隣の助手席に座る男が手にしたドローンのコントローラを得意げに揺らした。
その後列に座る三人の男たちが口々に囃し立てる。
『派手にドッカーンって!お前相変わらずエゲツねぇな!』
『アゲンツ吹っ飛ばせるんなら、気合いが入るってもんよ。』
『だな。しっかし護衛付けてたのは聞いてたけど、まさかアゲンツとはな。』
『念の為、攫う前に空港で監視させといて良かったぜ。目の前でユェルン様が捕まったって連絡には肝が冷えたけどな。』
何を言っているのか分からないが、酷いことを言っているのは伝わる。ウルは意識を必死に保とうとした。
大丈夫、篤臣くんは大丈夫。だって強いもん。豹の純血種だもん。上位種だもん。
大好きな篤臣が、ウルを残して死ぬわけない。
耳が出そうになって、咄嗟に頭を抱え込んで蹲った。バンの中は暗く、ウルと新は最後列に二人だけで乗せられていた。だから注意してこちらを見なければ気付かれない。小さくなったウルに被さるようにして新が頭を抱え込んだ。
「……ウルくん……。耳が。」
驚いただろうに、声を抑えて伝えてくる新に泣きそうになる。
ああ、出ちゃった。知られちゃった。
「大丈夫だよ。皆強いから。絶対大丈夫。」
励ます新の手も声も震えていて、ウルは頷きながらぎゅっと抱き返した。
「うん。うん。」
しっかりしなきゃ。自分に出来ることは、ミックスで兎だと知られないこと。無事でいること。それから。
そっと左耳に着いたシルバーのイヤカフに触れる。ヘンディルの工作員たちはアゲンツが護衛に付いていた新にGPSが付いているだろうことは予測出来ても、ついでに拐ったウルまで着けていることは予想出来なかったらしい。二人揃って着替えさせられたが、イヤカフがGPSだとは気付かれなかった。
新しく乗り換えられた移動用のバンには元々ジャミング機能が搭載されているらしく、今はどこにウルがいるのか篤臣たちには分からないだろうけれど。
きっと、どこかで繋がる。隙ができるはず。それまで、気付かれないようにしなくちゃ。
こくりと唾を飲み込むと、新の服を握りしめる。次第に耳が戻り、ウルは息を吐き出した。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる