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Hauptteil Akt 11
hundertsechs
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深沢の懸念が当たっているかもしれない。
焦燥に駆られて篤臣はフィンレーに連絡を取り、会おうとした。だが携帯は繋がらず、何とかジュードを捕まえても『申し訳ございません。主人に伝えまして、折り返し連絡致します。』と返される。じりじりとしながら、時間だけが過ぎていった。マンションにいるだろうと訪ねてみてもクロエしかおらず、すれ違いが続く。いよいよ明日の昼過ぎに新が帰国するとなって、やっとフィンレーを捕まえた。
オフィスに乗り込み、問い詰める。
『フィンレー。』
『ああ、すまない。篤臣。なかなか時間が取れなくて。』
目頭を抑え、溜め息を吐くフィンレーは本当に疲れ切っているように見えた。勧められる前に向かいのソファに腰掛ける。
『色々対応に追われていた。』
『俺はサポートじゃないのか?話してくれないと何も出来ないだろう?』
『確かに。そうだな。それで?君の方は何かあったのか?』
『ああ、新くんのことでね。』
『笹川くんの?確か明日帰国予定だが、何があった?』
『単刀直入に聞く。新くんをデコイにするつもりかい?』
『……なぜ、そう思うんだ?』
『深沢から言われたんだ。ツェアシュテールならそうするだろって。あいつは恐ろしく勘がいい。君が最高責任者だとは思ってないが、属しているだろうって当たりをつけてる。』
『ほぅ。凄いな。分かってて護衛を譲ったのか?状況判断も的確じゃないか。』
『……認めるんだな。』
『言い訳させてもらえるなら、保険として考えていた。』
『何人付けたんだ?深沢は五~六人だと言ってたが。』
『当たりだよ、五人。一小隊付けた。』
『足りないのは分かってるよな?』
『ああ。』
『フィンレー。言っただろう?彼は大事な友だちなんだ。俺だけじゃない。ウルにとっては親友で、クロエにとってはここで初めて出来た大事な友だちなんだ。』
『分かってるよ。だが、ツェアシュテールを率いる私にとっては一度しか会ったことのない青年だ。もちろん、護ると約束するがヘンディルを潰すことは私に課せられた責務なんだ。全うする為に手段は選べない。』
『……君とクロエが上手くいったのは新くんがクロエを支えたからなんだけど。』
『……どう言う意味だ。』
『そのままの意味だよ。クロエが覚悟を決めて君に想いを告げる手助けをしたのは彼だ。話を聞いて支えになった。つまり、新くんは君にとっても恩人てわけだ。』
『……。』
フィンレーが渋面を作ったのを見て、肩を竦める。
『深沢からの伝言だ。帰国した後はアゲンツを下げろって。護衛はこちらで手配すると。』
『……そうくるか。』
『あいつは庇護欲の固まりみたいなやつだから。懐に入れたら何が何でも抱え込んで護ろうとする。君のことは信用ならないってさ。』
『当たっているだけに耳が痛いな。』
『言われるまで君がそんなことするなんて考えもつかなかった。』
『……責めないのか。』
『あいつとはまた、立場が違うだろう?ツェアシュテールを率いているんだ。君が望んで選んだ手じゃないことくらい、分かってるつもりだよ。』
『篤臣……。』
『さっきも言ったが俺は君のサポートだ。気持ちとしては同士だと思ってるがね。一緒にヘンディルを潰すと決めている。これは俺の意志だ。だから、巻き込むと決めたんなら覚悟を決めてくれ。中途半端にしないで欲しい。』
『……ああ。ありがとう。』
『で?君の方は?何があった?』
『女の足取りは依然として掴めていない。外見を変えてる可能性がある。それと、船が完成したらしい。問題はその装備だよ。』
『装備?』
『ああ、EMLが至る所にある。船底にはセンサー探知機能まで付いていて近寄ると自動でMKが作動する仕組みらしい。ヘリで強襲されたのが余程腹に据えかねたんだろう。空も海もどちらも、近寄るなら撃ち落とされる。死体さえ残らない。』
『重装備だな……。』
『しかもどうやら、オークション会場も船に切り替えるようだ。元々各国点々としていたし、使った会場を二度使うことはなかったが。今後は船に籠って護りを固め、顧客を厳選していくようだ。会場探しをしている動きがないからおかしいとは思ってたんだ。』
『籠られたら、いよいよ面倒だな。』
『そうだ。給油や物資の運び入れも全て海上でやるつもりだ。ヘンディルが陸に上がるのは狩りの時だけになる。』
『……どうする?』
『こちらもいい加減、手を拱いているわけにはいかないんでね。使えるものは使うよ。』
『てことは、何か策があるんだな?』
『ああ。その為にこの一週間、奔走した。』
『そうか。で?聞かせてくれるんだろ?』
『もちろん。篤臣はパートナーだからな。』
『仕事の上でって意味だろうけど。その呼び方は誤解を招く。』
『ははは!クロエと同じくらい、君は私の特別だよ?カテゴリが違うけど。』
『違ってて安心したよ。』
何となく、茉莉が喜びそうだなと苦笑した。
焦燥に駆られて篤臣はフィンレーに連絡を取り、会おうとした。だが携帯は繋がらず、何とかジュードを捕まえても『申し訳ございません。主人に伝えまして、折り返し連絡致します。』と返される。じりじりとしながら、時間だけが過ぎていった。マンションにいるだろうと訪ねてみてもクロエしかおらず、すれ違いが続く。いよいよ明日の昼過ぎに新が帰国するとなって、やっとフィンレーを捕まえた。
オフィスに乗り込み、問い詰める。
『フィンレー。』
『ああ、すまない。篤臣。なかなか時間が取れなくて。』
目頭を抑え、溜め息を吐くフィンレーは本当に疲れ切っているように見えた。勧められる前に向かいのソファに腰掛ける。
『色々対応に追われていた。』
『俺はサポートじゃないのか?話してくれないと何も出来ないだろう?』
『確かに。そうだな。それで?君の方は何かあったのか?』
『ああ、新くんのことでね。』
『笹川くんの?確か明日帰国予定だが、何があった?』
『単刀直入に聞く。新くんをデコイにするつもりかい?』
『……なぜ、そう思うんだ?』
『深沢から言われたんだ。ツェアシュテールならそうするだろって。あいつは恐ろしく勘がいい。君が最高責任者だとは思ってないが、属しているだろうって当たりをつけてる。』
『ほぅ。凄いな。分かってて護衛を譲ったのか?状況判断も的確じゃないか。』
『……認めるんだな。』
『言い訳させてもらえるなら、保険として考えていた。』
『何人付けたんだ?深沢は五~六人だと言ってたが。』
『当たりだよ、五人。一小隊付けた。』
『足りないのは分かってるよな?』
『ああ。』
『フィンレー。言っただろう?彼は大事な友だちなんだ。俺だけじゃない。ウルにとっては親友で、クロエにとってはここで初めて出来た大事な友だちなんだ。』
『分かってるよ。だが、ツェアシュテールを率いる私にとっては一度しか会ったことのない青年だ。もちろん、護ると約束するがヘンディルを潰すことは私に課せられた責務なんだ。全うする為に手段は選べない。』
『……君とクロエが上手くいったのは新くんがクロエを支えたからなんだけど。』
『……どう言う意味だ。』
『そのままの意味だよ。クロエが覚悟を決めて君に想いを告げる手助けをしたのは彼だ。話を聞いて支えになった。つまり、新くんは君にとっても恩人てわけだ。』
『……。』
フィンレーが渋面を作ったのを見て、肩を竦める。
『深沢からの伝言だ。帰国した後はアゲンツを下げろって。護衛はこちらで手配すると。』
『……そうくるか。』
『あいつは庇護欲の固まりみたいなやつだから。懐に入れたら何が何でも抱え込んで護ろうとする。君のことは信用ならないってさ。』
『当たっているだけに耳が痛いな。』
『言われるまで君がそんなことするなんて考えもつかなかった。』
『……責めないのか。』
『あいつとはまた、立場が違うだろう?ツェアシュテールを率いているんだ。君が望んで選んだ手じゃないことくらい、分かってるつもりだよ。』
『篤臣……。』
『さっきも言ったが俺は君のサポートだ。気持ちとしては同士だと思ってるがね。一緒にヘンディルを潰すと決めている。これは俺の意志だ。だから、巻き込むと決めたんなら覚悟を決めてくれ。中途半端にしないで欲しい。』
『……ああ。ありがとう。』
『で?君の方は?何があった?』
『女の足取りは依然として掴めていない。外見を変えてる可能性がある。それと、船が完成したらしい。問題はその装備だよ。』
『装備?』
『ああ、EMLが至る所にある。船底にはセンサー探知機能まで付いていて近寄ると自動でMKが作動する仕組みらしい。ヘリで強襲されたのが余程腹に据えかねたんだろう。空も海もどちらも、近寄るなら撃ち落とされる。死体さえ残らない。』
『重装備だな……。』
『しかもどうやら、オークション会場も船に切り替えるようだ。元々各国点々としていたし、使った会場を二度使うことはなかったが。今後は船に籠って護りを固め、顧客を厳選していくようだ。会場探しをしている動きがないからおかしいとは思ってたんだ。』
『籠られたら、いよいよ面倒だな。』
『そうだ。給油や物資の運び入れも全て海上でやるつもりだ。ヘンディルが陸に上がるのは狩りの時だけになる。』
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『こちらもいい加減、手を拱いているわけにはいかないんでね。使えるものは使うよ。』
『てことは、何か策があるんだな?』
『ああ。その為にこの一週間、奔走した。』
『そうか。で?聞かせてくれるんだろ?』
『もちろん。篤臣はパートナーだからな。』
『仕事の上でって意味だろうけど。その呼び方は誤解を招く。』
『ははは!クロエと同じくらい、君は私の特別だよ?カテゴリが違うけど。』
『違ってて安心したよ。』
何となく、茉莉が喜びそうだなと苦笑した。
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