【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 10

fünfundneunzig

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 新と残されたジュードは、席を勧められ座ることにした。大きな身体は、そこに立っているだけで圧迫感がある。均整の取れたがっしりとした体躯。橙色の髪は耳にかかる程度の長さで、漆黒の瞳は黒々としていた。長身で肩幅が広く胸板も厚い。主人のフィンレーも体格に恵まれているが、ジュードと比べると細身に見える。

「なんだか、すみません。仕事以外のことで護衛まで。」
 新が申し訳なさそうに謝る。ジュードは緩く頭を振ると答えた。

「いえ。私はイーサン様の指示全てが仕事となりますので。お気になさらず。」
「そうですか。あ、良ければ何か召し上がって下さい。ここのコーヒー美味しいですよ。」
「いえ、本当にお気になさ。」
 言いかけてぴたりと口を噤む。ゆっくりと太い首が回り、ぴたっと視線が止まった。

「もし良かったら、オーダー伺いますが。」

 にっこり笑った茉莉を凝視する。茉莉は茉莉で笑顔が引き攣っていた。なんでこの人こんな見てくんの?え?怖いんだけど。

 遠目からも分かる大柄な男性に正直竦み上がっていた。篤臣の隣にいたフィンレーはまさしく高貴!といった風情の美青年で好みより些か外れてはいたが、イケメンに違いはなかった。しかしジュードは違う。元々大柄な男性は好みではないので見ていなかった。近寄って初めて整った容姿だと気が付いたし、なんなら良い匂いもすると思わず辺りを嗅いでしまったが怖いものは怖い。

 穴が!穴が開く!こっわ!

 とジュードの上着、内ポケットで携帯がぶるっと震えた。取り出して画面を確認する。

「笹川さん。到着したようです。」
「あ、じゃあ、挨拶を。」
「いえ、結構です。このまま見えない所で付きます。」
「そ、そうですか。分かりました。」
「では。私はこれで。」
「はい。ありがとうございました。」
 慇懃に頭を下げると立ち上がる。

 そのまま、茉莉の前に立った。

「あなたは?」
「え?」
「こちらの店員でしょうか?」
「え、あ、はい。バイト……です、け、ど。」
 首が痛くなるくらい大きい。怖い。なんか顔が影になっててよく見えない。え?これどんな顔して聞いてんの?私なんかした?怒ってる?

「そうですか。」
 頷くと身を屈め、茉莉の顔を覗き込む。あまりの近さに固まった。じいっと見つめられる。え、なんか、瞳が。

 すんっと音がした。

「見つけた。」
「?はい?」
「ではまた。失礼します。」
 上体を起こすと、一言告げて去っていった。よく分からなくて茫然と見送る。

「笹川さん、あの人なんですか。」
「いや、僕もよく知らなくて。」
「怖い!なんか怖い!なんかこう!がっぷり噛みつかれそうだった!」
「ソウダネ……。」

 新は気が付いてしまった。ジュードが茉莉を見た一瞬、全部意識をそちらに向けたことを。

 あれ、絶対一目惚れだよねぇ。

「一撃で人殺せそう。」
「枝反さん、それはどうかと。」
「絶対瞳からなんか光線飛ばせますよ。おーこわ。」
 ぶるぶるっと震えて茉莉が戻っていく。どうしたものかと新は嘆息した。

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