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Hauptteil Akt 9
neunzig
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悩んだ新はあれから、改めて藍里のSNSをくまなく調べた。そして時間を見つけては、投稿写真の場所を探し訪れたりした。もしかしたら、あの女を見かけたり、又ふいに現れたり、そういうことがあるかも知れない。
だが所詮素人の自分がたった一人で動いたところで、すぐに限界が訪れた。何の情報も得られない。出来ることなど殆どないのだと打ちのめされた。
絶対この女が怪しい。そう感じる。
だがそれだけで祖父や由月に話をするのは躊躇われた。なんの証拠もないのだから。自分の感じた印象、ただそれだけ。そして一方的にかけられた、不快な言葉をなんとなく繋げただけ。自分もあの時一度だけ、会ったきりなのだ。そして何より、何の手掛かりもない。
深沢くんに、相談してみようかな。
ああ見えて世話好きな狗狼は、ウルどころか新のこともクシュダートでは気に掛けてくれていた。大切な従兄弟の友だちだからと軽い気持ちからだったのかもしれないが、お陰で新がフェイに絡まれることは格段に減った。馬は元々大柄なものが多く、グラスでも軽んじられることは少ない。だが新のように華奢で細く、容姿が優れていると話は別だった。ちょっかいをかけられるのは日常茶飯事だったが、そんな日々が一転したのは狗狼が側にいてくれるようになったからだった。誰にも媚び諂わない深沢のリーダー。純血種でもあり上位種。そんな狗狼がウルの友だちだからと新を気に掛けている。それだけで周囲のフェイへは牽制になっていた。
クシュダートでのダブルトップ。もう1人はウルのマッシブ、篤臣だったがここはやはり群れを率いる狗狼の方が何かしら情報を集めやすい立場ではないだろうかと思った。
貴宮くんが彪束の分家筋、貴宮家のリーダーなら違うだろうけど。そうだとは聞いたことないし。よし、今度深沢くんを訪ねて話を聞いてもらおう。もしかしたら僕の気のせいかもしれないし、反対に何か気付いてくれるかも。
新は一人決めると、準備に取り掛かった。もうすぐまた、バイヤーとして天蒼を離れる。その準備をしなければならない。いつものように、一人暮らすマンションで荷造りを始めた。今回は栢杠にある本店のマネージャーも連れて行く。共通言語に少しでも慣れてもらうため、試験的に帯同するのだ。
発つ前にウルくんとクロエさんにも連絡しておこう。
クロエは少し前からホテルを引き払い、マンションに移り住んでいた。まだ詳しい話を聞いてはいないが、どうやらハレムを持つ彼と上手くいったらしい。確かリージョンで暮らしていたはずだが、今は天蒼にいると言っていた。以前クロエから聞いていた話とは随分と違い彼は独占欲の塊らしく、巣に引き込まれて以来殆ど外には出てこない。
会うのは難しいかもしれないなぁ。どう考えても蜜月だよね。
次々と友だちが恋人を作り、幸せそうなのは嬉しいことだが、どうも相手が振り切れてて何となく生々しい。
いつも旅行に履いていく、ショートブーツを玄関に出しながら苦笑した。
だが所詮素人の自分がたった一人で動いたところで、すぐに限界が訪れた。何の情報も得られない。出来ることなど殆どないのだと打ちのめされた。
絶対この女が怪しい。そう感じる。
だがそれだけで祖父や由月に話をするのは躊躇われた。なんの証拠もないのだから。自分の感じた印象、ただそれだけ。そして一方的にかけられた、不快な言葉をなんとなく繋げただけ。自分もあの時一度だけ、会ったきりなのだ。そして何より、何の手掛かりもない。
深沢くんに、相談してみようかな。
ああ見えて世話好きな狗狼は、ウルどころか新のこともクシュダートでは気に掛けてくれていた。大切な従兄弟の友だちだからと軽い気持ちからだったのかもしれないが、お陰で新がフェイに絡まれることは格段に減った。馬は元々大柄なものが多く、グラスでも軽んじられることは少ない。だが新のように華奢で細く、容姿が優れていると話は別だった。ちょっかいをかけられるのは日常茶飯事だったが、そんな日々が一転したのは狗狼が側にいてくれるようになったからだった。誰にも媚び諂わない深沢のリーダー。純血種でもあり上位種。そんな狗狼がウルの友だちだからと新を気に掛けている。それだけで周囲のフェイへは牽制になっていた。
クシュダートでのダブルトップ。もう1人はウルのマッシブ、篤臣だったがここはやはり群れを率いる狗狼の方が何かしら情報を集めやすい立場ではないだろうかと思った。
貴宮くんが彪束の分家筋、貴宮家のリーダーなら違うだろうけど。そうだとは聞いたことないし。よし、今度深沢くんを訪ねて話を聞いてもらおう。もしかしたら僕の気のせいかもしれないし、反対に何か気付いてくれるかも。
新は一人決めると、準備に取り掛かった。もうすぐまた、バイヤーとして天蒼を離れる。その準備をしなければならない。いつものように、一人暮らすマンションで荷造りを始めた。今回は栢杠にある本店のマネージャーも連れて行く。共通言語に少しでも慣れてもらうため、試験的に帯同するのだ。
発つ前にウルくんとクロエさんにも連絡しておこう。
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