100 / 238
Hauptteil Akt 9
vierundachtzig
しおりを挟む
新はぼんやりと物思いに耽っていた。
一週間前、ウルと篤臣のマンションから本宅へ急いで戻った新が会った由月は、すっかり弱りきっていた。
「藍里がいなくなってしまった。何か知ってることはないだろうか。」
藁にもすがるとは正にこのことだろう。新も何か力になりたいとは思うが、彼女のことで知っていることなど殆どなかった。
「すみません。私どもの店に何度かご来店頂いたことはあるのですが、お会いしたのは一度きりでして。」
有益なことは何も話せず申し訳なさばかり募っていく。
「そうか……。すまない。もう、聞く相手もいなくて。君のことを慕っていたようだったから、何か知らないかと思ってしまった。」
肩を落とし、孫娘を心配する由月は随分と小さく見えた。
「藍里の友だちから連絡があってね。ラ-ガレンを休んでいるが、いつ訪ねても部屋にいないと言うんだ。あの子はずっと一人暮らしをしていて、その……いつからいなくなったのか……。誰も知らないんだ。」
辛そうに話した後、由月は項垂れて帰って行った。友人の憔悴し切った様子に祖父も落ち込んでしまい、新はどう声をかけたらいいのか分からなかった。
確か、SNSのアカウント教えてもらってたっけ。
自分は滅多に投稿しないが店名や商品のタグをつけて投稿してくれている人たちを見つけては、フォローしたりしていた。ログインして藍里のアカウントを検索する。アカウントとIDが一致するのを確認して投稿の履歴を遡って行った。
最新の投稿は……。一ヶ月前くらい、かな。
楽しそうに笑っている藍里を見て、どこにいるんだろうと、ますます心配になった。新の店で買った靴を履き、すらりとした足を晒している。
と、ある投稿でぴたりと指が止まった。藍里と手を握り合い、隣に写り込んだ女。テーブルから上、口元までしか画角に入っていないが、見覚えがある。烏の濡れ羽のように艶やかな髪。抜けるような白い肌。赤く薄い唇。肩や二の腕は驚くほど細く華奢。なのに胸だけは大きい。
どくんどくんと鼓動が早くなる。間違いない、あの女だ。店を出たところで声をかけてきた。あの時あの女はなんと言った?
"聞いていた通りね"そう言った。
藍里さんから僕のことを聞いた?いつ?どこで?この写真を見る限り、かなり親しく見える。でも、年齢的にラ-ガレンの同級生とは思えない。どこで知り合った?
分からない。でも、藍里さんの失踪にあの女が関わっているのなら。
『ねぇ。迎えに行くまで、怪我したりしないでね?』
言われた言葉を思い出し、ぞっとする。
藍里さんは失踪したんじゃない。この女に誘拐されたんだ。
不思議なくらい、はっきりそう確信した。
一週間前、ウルと篤臣のマンションから本宅へ急いで戻った新が会った由月は、すっかり弱りきっていた。
「藍里がいなくなってしまった。何か知ってることはないだろうか。」
藁にもすがるとは正にこのことだろう。新も何か力になりたいとは思うが、彼女のことで知っていることなど殆どなかった。
「すみません。私どもの店に何度かご来店頂いたことはあるのですが、お会いしたのは一度きりでして。」
有益なことは何も話せず申し訳なさばかり募っていく。
「そうか……。すまない。もう、聞く相手もいなくて。君のことを慕っていたようだったから、何か知らないかと思ってしまった。」
肩を落とし、孫娘を心配する由月は随分と小さく見えた。
「藍里の友だちから連絡があってね。ラ-ガレンを休んでいるが、いつ訪ねても部屋にいないと言うんだ。あの子はずっと一人暮らしをしていて、その……いつからいなくなったのか……。誰も知らないんだ。」
辛そうに話した後、由月は項垂れて帰って行った。友人の憔悴し切った様子に祖父も落ち込んでしまい、新はどう声をかけたらいいのか分からなかった。
確か、SNSのアカウント教えてもらってたっけ。
自分は滅多に投稿しないが店名や商品のタグをつけて投稿してくれている人たちを見つけては、フォローしたりしていた。ログインして藍里のアカウントを検索する。アカウントとIDが一致するのを確認して投稿の履歴を遡って行った。
最新の投稿は……。一ヶ月前くらい、かな。
楽しそうに笑っている藍里を見て、どこにいるんだろうと、ますます心配になった。新の店で買った靴を履き、すらりとした足を晒している。
と、ある投稿でぴたりと指が止まった。藍里と手を握り合い、隣に写り込んだ女。テーブルから上、口元までしか画角に入っていないが、見覚えがある。烏の濡れ羽のように艶やかな髪。抜けるような白い肌。赤く薄い唇。肩や二の腕は驚くほど細く華奢。なのに胸だけは大きい。
どくんどくんと鼓動が早くなる。間違いない、あの女だ。店を出たところで声をかけてきた。あの時あの女はなんと言った?
"聞いていた通りね"そう言った。
藍里さんから僕のことを聞いた?いつ?どこで?この写真を見る限り、かなり親しく見える。でも、年齢的にラ-ガレンの同級生とは思えない。どこで知り合った?
分からない。でも、藍里さんの失踪にあの女が関わっているのなら。
『ねぇ。迎えに行くまで、怪我したりしないでね?』
言われた言葉を思い出し、ぞっとする。
藍里さんは失踪したんじゃない。この女に誘拐されたんだ。
不思議なくらい、はっきりそう確信した。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。





淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる