【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 9

dreiundachtzig

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『篤臣、その、すまない。君のマッシブに謝罪する機会をもらえないだろうか。』
 フィンレーが言いにくそうに言葉を紡ぐ。隣にはクロエが座り、後方にはジュードが立っていた。

 ウルが仲良くしたいと言わなければ、聞く耳を持たなかっただろうな。

 篤臣はじっとりした瞳で目の前に座る親友を見つめた。翌日の正午には連絡をもらい、クロエも同席して謝罪したいと言われ、理由は分からないがとりあえず話を聞くことにした。ウルに会わせるかどうか、それから決めることにする。

 そうして訪れた、料亭の個室にて。

 現れた篤臣に席を薦めると、フィンレーが冒頭の台詞を口にした。黙って続きを待つとクロエが頭を下げる。

『私がつまらない嘘をついて貴方を巻き込んだせいよ。ごめんなさい、篤臣。フィンレーは貴方と私が上手くいっていると思ってたの。でも実際には貴方はウルさんと付き合っていて同棲してるでしょう?私を裏切ったと思ってあんな態度をとったみたい。』
『……。それだけじゃないだろう?』
『ああ。その。実は私はずっとクロエのことを想っていて……でも相手が親友の君ならと諦めようとしたんだ。そこに君が別の人を恋人として紹介したから……頭に来て……。』
『……そうか。』
『すまない。』
『本当にごめんなさい。』
『いや……。俺も悪かった。フィンレーの気持ちを知らなかったとは言え、君に嘘をついてしまった。すまない。辛い想いをさせてしまった。』
『篤臣……。』
『瞳の前でメイニーとして振る舞う俺たちに傷付くこともあったと思う。申し訳なかった。』
『……。ああ。』
『あの、私が悪いの。二人とも、ごめんなさい。』
 居た堪れなくなったクロエが割って入る。篤臣とフィンレーが同時にクロエへ視線を向けた。

『それはそうだな。』
『否定しない。』
『~なんでよ!』
 殊勝に謝りはしたが、責められると釈然としない。クロエが吠えると二人が苦笑した。

『ウルだけど驚きはしたが怒ってはいない。フィンレーとは仲良くしたいそうだ。』
『……天使か?』
『でしょ?!ウルさんて、ぜんっぜん擦れてないの!』
『なんで君が自慢するんだ。』
『だってもうお友だちだもの!』
 フィンレーに胸を張るクロエへ篤臣は突っ込んだ。

『その感じだと、二人は上手くいったのか?』
『っ!』
 途端にクロエが真っ赤になって固まる。

『ああ。熱烈なプロポーズを受けてね。謹んでお受けしたよ。』
 にっこり笑って答えたフィンレーにクロエが悲鳴を上げた。

『してないわ!』
『したじゃないか。』
『してないったら!』
『あんなに可愛らしく泣きながら愛してると言ったのに?』
『へー。』
 篤臣がにやにや笑う。

『他には?』
『他に?ああ、それは秘密だよ。やっと手に入れたメイニーからの睦言だよ?勿体無くて言えないな。』
『言ってないったら!』
『クロエ、そろそろ観念しろ。』
 フィンレーにぴしゃりと告げられクロエがむっと唇を尖らせる。

『なによ!貴方だって私のこと、あ、あい、あいし……って言ったじゃない!』
『言えてないよクロエ。』
 ほれほれ、しっかり言わないかとフィンレーに揶揄われてクロエが羞恥で涙目になる。

『そう言う顔は私だけに見せるように。』
 機嫌良く微笑んだフィンレーがクロエの顎を掴むと鼻先にちゅっとキスをした。

『随分と健全なお付き合いのようだな。』
『まぁね。』
『ふぅん。』
『篤臣には感謝してるよ。こんなに美しいクロエに手を出さずにいてくれて、ありがとう。』
『他の男性を恋慕う女性に手を出すほど愚かではないよ。』
『クロエが君を選んだことは結果として良かった。もし他の男だったらと思うとぞっとするね。』
『分かるよ。俺もウルに手垢が付いてないと知った時は狂喜乱舞したね。過保護な従兄弟に心から感謝した。』
『二人とも勝手よね。自分たちは散々食い散らかしてきたくせに、相手には処女性を求めるなんて。』
 ぷりぷりしながらクロエが料理を突き回す。それに関してはぐぅの音も出ない。分が悪いと悟った篤臣とフィンレーは、そっと話を逸らした。

『……ウルと話して時間を作るよ。』
『ああ、すまないが頼む。』

 それ以上の軽口は止めて、料理に手を付ける。クロエがちらりと二人を見て、笑った。
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