【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

文字の大きさ
上 下
97 / 238
Hauptteil Akt 9

einundachtzig

しおりを挟む
 ウルの瞳がぱちっと開く。篤臣はぐったりと力が抜け、額同士を合わせた。

「良かった。ウル。」
「篤臣くん。」
「気分は?どっか気持ち悪いとか、ない?」
「ん、だいじょぶ。」
「おいで。」

 ベッドに横たえたウルにぴたりと寄り添っていた篤臣は、首の下に腕を差し込むと胸に抱き寄せた。すりすりとウルが頬擦りする。

「びっくりしたー。」
 呑気な声に気が抜ける。

「あの人、誰だったの?」
「……フィンレー・グウェイン。」
「……そっか。フィンレーってリージョンでのお友だちの?」
「そう。」
「……クロエさんの、好きな人?」
「うん。」
「なんか、怒ってた?」
 むむむっと眉を顰め、ウルが唸った。

「いや。多分、動揺したんだと思う。いきなりマッシブで同棲してるって紹介したから。」
「……そっかぁ。むー。」
「ウル?」
「怒ってなかったんなら、これから仲良くなれるかなぁ?」
「……無理に仲良くしなくてもいいよ。」
 ちゅっと唇に吸い付く。

「でも、篤臣くんの親友でしょ?」
「まぁ。そうだね。」
「だったら仲良くしたいなぁ。僕、篤臣くんと新くんが仲良くて嬉しいもん。おんなじ。フィンレーさんと僕が仲良くしたら、篤臣くんも嬉しくない?」
「それは……まぁ。」
「じゃ、僕頑張る。」
「ウル。」
「ただ、威圧は耳と尻尾出ちゃうから、やめて欲しいなぁ……バレちゃう。」
「確かに出てたね、耳。気付かれてないから大丈夫だよ。」
「……篤臣くん、見た?」
「うん、見た。垂れ耳可愛すぎた。すぐ引っ込んじゃったけど。」

 意識を手放した時点で半獣化は解けていた。一瞬だけ現れたウルの垂れ耳はあんな状況じゃなければ存分に堪能したかった。

「威圧浴びちゃうと出ちゃうの。少しなら我慢出来るけど。フィンレーさんの凄かった。」
「怖かったよね?ごめんね?」
「うん……確かに怖かったし、反射的に半獣化しちゃったけど。だいじょぶだよ。僕には篤臣くんがいるもん。」
 きゅっと抱きついてきたウルの小さな頭を撫でる。

「今まではね、避けられなくて威圧浴びちゃっても何とか意識保ってないといけなかったんだ。その間に何されるか分からないから、混乱しててもなんとか踏ん張ってたの。とりあえず逃げて隠れなきゃって。でも……変だよねぇ?そんなこと考える前に、すこんて気絶しちゃった。篤臣くんの側だから安心して気が抜けちゃってるのかなぁ?」

 胸が詰まった。
 そんなふうに。無意識に。自分を信じて全部預けてくれるウルが愛しい。

「それは嬉しいね。」
「ほんと?めんどくない?」
「全然。もっと手が掛かってもいいよ。」
「!!!じゃもっと甘える~!」
 嬉しそうに笑ったウルを見て、泣きそうになる。

 君がずっと笑っていられるように。俺がずっと側にいる。絶対離れない。

「愛してるよ、ウルちゃん。」
「えへへ。僕も。篤臣くん大好き。」
「もっと甘えてね。」
「篤臣くんも、僕に甘えてね。」
 ちゅっちゅっとお互いの唇に吸い付く。そのまま、抱き合ってお昼寝した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...