96 / 238
Hauptteil Akt 8
achtzig
しおりを挟む
ジュードを帰し、クロエをマンションに迎えるとフィンレーはワインとグラスを取り出した。
『付き合ってくれ。』
答えを聞かず、ソファに腰掛ける。注いだグラスをクロエに差し出すと、乾杯もせず口を付けた。向かいに腰掛けたクロエが複雑そうな顔でフィンレーを見つめる。
『フィンレー。』
『……すまない。馬鹿なことをした。』
『……どうしたの。少なくとも私の知ってる貴方はあんなこと今までしなかったわ。』
『ははは、そうだな。そうだった。』
『……。』
『私は君たちが順調なんだと思ってたんだ。』
『……え?』
『まさか、君の前で他の人を恋人だと紹介するとは思わなくてね。』
ぐいっとグラスを空けるとワインを注ぐ。
『……貴方。もしかして私の為に怒ったの?』
『おかしいかい?』
『……。』
『ずっと君たちのそばで。幸せを願って来たんだ。篤臣も君も、私にとっては特別な存在なんだ。大事に思っている。だから君が天蒼に来ていることも知ってた。篤臣を追って来たんだろうってね。だったら、二人は上手くいっているんだと思うじゃないか。そこにまさか……しかもマッシブだ。篤臣は今までメイニーしか作らなかったのに。』
『……そう。』
『信じがたくてね、抑えが効かなかった……。彼にも篤臣にも悪いことをしたよ。』
『……私のせいね。』
『……どういう意味だい。』
『私がつまらない嘘をついて篤臣を巻き込んだせいよ。ごめんなさい。』
『……嘘?』
『そう。私たち、付き合ってなんかないわ。篤臣とはずっと友だちだったの。私が頼んだのよ、メイニーの振りをしてって。』
『ちょ、ちょっと待ってくれ。話が見えない。』
フィンレーがグラスを置き、ソファに凭れる。目頭を抑えると髪を掻き上げた。
『好きな人を諦める為に、その人のそばにいる為に。そうしたの。篤臣はそんな私の我儘に付き合ってくれてただけ。』
『好きな人?一体誰だ?何故私には言わなかった?』
『ねえそれ、本気で言ってる?』
クロエが泣きそうな顔で笑った。フィンレーの胸が軋む。違う。こんな顔をさせたかった訳じゃない。
『私が愛した人は私だけを愛してくれる人じゃなかったの。』
『そうなの、か。酷いな。』
『ふふふ。貴方も酷いと思う?』
『ああ。』
『そう……。』
俯いてグラスを掴むとワインを煽った。フィンレーがぎょっとして身を乗り出す。
『無茶な飲み方をするもんじゃない。』
『お酒の力でも借りないと、口に出来そうにないのよ。』
『……。』
『愛してるの、フィンレー。貴方のことを、ずっと愛してた。』
『……は?』
『でも私はハレムを受け入れられないの。入りたくない。どうしても嫌。無理。しかもずっと貴方を他の誰かと共有するなんて。そんなの嫌、絶対嫌なの。』
ぽたぽたとクロエの瞳から涙が落ちる。
『貴方が私のこと、何とも思っていないことくらい、知ってるわ。だから。』
顔を上げて泣き笑う。
『お願い。私のこと、振って。そしたらもう、諦めて他の誰かとゲレンク-パラを済ませるから。』
言い終わって俯くと、フィンレーの言葉を待った。
沈黙が満ちるリビングで、クロエは両手を握り合わせる。
『言いたいことはそれで全部かな。』
冷たい言葉にすっと背筋が凍った。今まで感じたことのない怒りを、言葉の端々から感じる。
『随分と振り回されたよ。この私が。全く、殊勝な心がけなどするものではないな。』
かたんと立ち上がるとローテーブルを回り、クロエの脇に立った。見下ろされてる気配が怖くて顔を上げられない。何でこんなに怒ってるの。そんなに私から好きと言われて不快だったの?ぽろぽろと涙を溢していると視界がぐるんと回り上下が入れ替わった。フィンレーの肩に担ぎ上げられている。
『なっ!なにするの!』
『だまれ。』
ぱんっと尻をはたかれた。恥辱に震える。
『下ろして!馬鹿!最低!ひとでなし!』
『うるさい。』
そのまま、ずかずかと歩いてベッドルームへと向かう。どうしてそんなところに向かうのか訳がわからない。
『な、何する気よ。フィンレー。』
『犯す。』
『……え?』
『今から蜜月だ。毎日犯して孕ませる。私の子を産ませるから覚悟しろ。』
『どうしてそうなるのよ!』
『私のものにする。いますぐに。』
『だから!ハレムは嫌って。』
『ハレムはヒートを迎えた時に家から持たされたものだ。必要なければ持たなくていい。』
『……え?』
『第一、子を産ませるパートナーを決めたらハレムは解体するつもりだった。』
ベッドにぽいっと放り投げられる。
『パートナーに選んだのは君だった。ゲレンク-パラを申し込もうとしたら君が篤臣と付き合い始めたと言い出したんだ。だからそのままハレムで遊んでいただけだ。』
『そ、んな。』
『ハレムが嫌ならそう言えばいいものを。』
『言える訳ないじゃない!』
『君は変わらないな、変なところで意固地だし素直じゃない。』
つけつけと言われて涙が溢れる。フィンレーが覆い被さり、頬を舐めた。
『まったく。可愛いな。ハレムに嫉妬したんだろう。』
無神経な言葉に怒りが湧く。涙が止まらなくて睨みつけた。
『君は美しい。初めて会った時から欲しかった。私のもので貫抜かれて喘ぐ君を何度も想像したよ。』
品のある端麗な容姿のフィンレーが言うと余計にいやらしい。かあっと頬に熱が昇った。
『私、貴方と違ってそう言うことに詳しくないの。何を言ってるのか分からないわ。』
『ふっ。何を。』
知らん顔してそっぽを向くと、フィンレーが疑うように続けた。
『まさか、処女ではないだろう?』
『!悪い?!』
噛みつき返すと、フィンレーがぴたりと止まった。
『キスすらまだよ!私は愛する人としかしないんだから!貴方とは違うの!たくさんの人として来たんでしょうけど!私は……。』
『クロエ。』
『なによ、せめて私を最後にして欲しいって思っちゃいけないの?私の最初で最後をあげるから、代わりに貴方の最後が欲しいって思っちゃいけないの?いいでしょ、思うくらい。なによ……ばかぁ。』
膝を抱えて泣き出したクロエの頭に溜め息が落とされた。呆れられたのかもと身体が竦む。涙が溢れて止まらなくなった。
『ああ、もう。なんてこと言うんだ。』
『めんどくさいんでしょ。ふんだ。』
捨て鉢になって返すと、ころんとベッドに転がされた。慌てて起きあがろうとすると覆い被さってくるフィンレー。
『君は私を煽るのが上手いね、クロエ。』
『へ?』
『そんな熱烈なプロポーズは初めてだよ。謹んでお受けしよう。』
『し、してない!してないから!』
『ふぅん。自覚がないのか。たちが悪い。』
黄金色の瞳が、きらきらと輝く。
『愛してるよクロエ。私の最後で唯一を君に捧げよう。』
『付き合ってくれ。』
答えを聞かず、ソファに腰掛ける。注いだグラスをクロエに差し出すと、乾杯もせず口を付けた。向かいに腰掛けたクロエが複雑そうな顔でフィンレーを見つめる。
『フィンレー。』
『……すまない。馬鹿なことをした。』
『……どうしたの。少なくとも私の知ってる貴方はあんなこと今までしなかったわ。』
『ははは、そうだな。そうだった。』
『……。』
『私は君たちが順調なんだと思ってたんだ。』
『……え?』
『まさか、君の前で他の人を恋人だと紹介するとは思わなくてね。』
ぐいっとグラスを空けるとワインを注ぐ。
『……貴方。もしかして私の為に怒ったの?』
『おかしいかい?』
『……。』
『ずっと君たちのそばで。幸せを願って来たんだ。篤臣も君も、私にとっては特別な存在なんだ。大事に思っている。だから君が天蒼に来ていることも知ってた。篤臣を追って来たんだろうってね。だったら、二人は上手くいっているんだと思うじゃないか。そこにまさか……しかもマッシブだ。篤臣は今までメイニーしか作らなかったのに。』
『……そう。』
『信じがたくてね、抑えが効かなかった……。彼にも篤臣にも悪いことをしたよ。』
『……私のせいね。』
『……どういう意味だい。』
『私がつまらない嘘をついて篤臣を巻き込んだせいよ。ごめんなさい。』
『……嘘?』
『そう。私たち、付き合ってなんかないわ。篤臣とはずっと友だちだったの。私が頼んだのよ、メイニーの振りをしてって。』
『ちょ、ちょっと待ってくれ。話が見えない。』
フィンレーがグラスを置き、ソファに凭れる。目頭を抑えると髪を掻き上げた。
『好きな人を諦める為に、その人のそばにいる為に。そうしたの。篤臣はそんな私の我儘に付き合ってくれてただけ。』
『好きな人?一体誰だ?何故私には言わなかった?』
『ねえそれ、本気で言ってる?』
クロエが泣きそうな顔で笑った。フィンレーの胸が軋む。違う。こんな顔をさせたかった訳じゃない。
『私が愛した人は私だけを愛してくれる人じゃなかったの。』
『そうなの、か。酷いな。』
『ふふふ。貴方も酷いと思う?』
『ああ。』
『そう……。』
俯いてグラスを掴むとワインを煽った。フィンレーがぎょっとして身を乗り出す。
『無茶な飲み方をするもんじゃない。』
『お酒の力でも借りないと、口に出来そうにないのよ。』
『……。』
『愛してるの、フィンレー。貴方のことを、ずっと愛してた。』
『……は?』
『でも私はハレムを受け入れられないの。入りたくない。どうしても嫌。無理。しかもずっと貴方を他の誰かと共有するなんて。そんなの嫌、絶対嫌なの。』
ぽたぽたとクロエの瞳から涙が落ちる。
『貴方が私のこと、何とも思っていないことくらい、知ってるわ。だから。』
顔を上げて泣き笑う。
『お願い。私のこと、振って。そしたらもう、諦めて他の誰かとゲレンク-パラを済ませるから。』
言い終わって俯くと、フィンレーの言葉を待った。
沈黙が満ちるリビングで、クロエは両手を握り合わせる。
『言いたいことはそれで全部かな。』
冷たい言葉にすっと背筋が凍った。今まで感じたことのない怒りを、言葉の端々から感じる。
『随分と振り回されたよ。この私が。全く、殊勝な心がけなどするものではないな。』
かたんと立ち上がるとローテーブルを回り、クロエの脇に立った。見下ろされてる気配が怖くて顔を上げられない。何でこんなに怒ってるの。そんなに私から好きと言われて不快だったの?ぽろぽろと涙を溢していると視界がぐるんと回り上下が入れ替わった。フィンレーの肩に担ぎ上げられている。
『なっ!なにするの!』
『だまれ。』
ぱんっと尻をはたかれた。恥辱に震える。
『下ろして!馬鹿!最低!ひとでなし!』
『うるさい。』
そのまま、ずかずかと歩いてベッドルームへと向かう。どうしてそんなところに向かうのか訳がわからない。
『な、何する気よ。フィンレー。』
『犯す。』
『……え?』
『今から蜜月だ。毎日犯して孕ませる。私の子を産ませるから覚悟しろ。』
『どうしてそうなるのよ!』
『私のものにする。いますぐに。』
『だから!ハレムは嫌って。』
『ハレムはヒートを迎えた時に家から持たされたものだ。必要なければ持たなくていい。』
『……え?』
『第一、子を産ませるパートナーを決めたらハレムは解体するつもりだった。』
ベッドにぽいっと放り投げられる。
『パートナーに選んだのは君だった。ゲレンク-パラを申し込もうとしたら君が篤臣と付き合い始めたと言い出したんだ。だからそのままハレムで遊んでいただけだ。』
『そ、んな。』
『ハレムが嫌ならそう言えばいいものを。』
『言える訳ないじゃない!』
『君は変わらないな、変なところで意固地だし素直じゃない。』
つけつけと言われて涙が溢れる。フィンレーが覆い被さり、頬を舐めた。
『まったく。可愛いな。ハレムに嫉妬したんだろう。』
無神経な言葉に怒りが湧く。涙が止まらなくて睨みつけた。
『君は美しい。初めて会った時から欲しかった。私のもので貫抜かれて喘ぐ君を何度も想像したよ。』
品のある端麗な容姿のフィンレーが言うと余計にいやらしい。かあっと頬に熱が昇った。
『私、貴方と違ってそう言うことに詳しくないの。何を言ってるのか分からないわ。』
『ふっ。何を。』
知らん顔してそっぽを向くと、フィンレーが疑うように続けた。
『まさか、処女ではないだろう?』
『!悪い?!』
噛みつき返すと、フィンレーがぴたりと止まった。
『キスすらまだよ!私は愛する人としかしないんだから!貴方とは違うの!たくさんの人として来たんでしょうけど!私は……。』
『クロエ。』
『なによ、せめて私を最後にして欲しいって思っちゃいけないの?私の最初で最後をあげるから、代わりに貴方の最後が欲しいって思っちゃいけないの?いいでしょ、思うくらい。なによ……ばかぁ。』
膝を抱えて泣き出したクロエの頭に溜め息が落とされた。呆れられたのかもと身体が竦む。涙が溢れて止まらなくなった。
『ああ、もう。なんてこと言うんだ。』
『めんどくさいんでしょ。ふんだ。』
捨て鉢になって返すと、ころんとベッドに転がされた。慌てて起きあがろうとすると覆い被さってくるフィンレー。
『君は私を煽るのが上手いね、クロエ。』
『へ?』
『そんな熱烈なプロポーズは初めてだよ。謹んでお受けしよう。』
『し、してない!してないから!』
『ふぅん。自覚がないのか。たちが悪い。』
黄金色の瞳が、きらきらと輝く。
『愛してるよクロエ。私の最後で唯一を君に捧げよう。』
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。





淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる