【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 7

siebzig

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「初めまして。兎瑠の父、桜庭さくらば 兎水うみです。」
 ふんわりした印象の男性が、ぺこりと頭を下げる。40歳を超えているとはとても思えない容姿だった。ウルが幼く見えるのは遺伝らしい。艶々の黒い髪、瞳は透き通った水色で優しい目元をしている。一見してグラスと分かる人好きする容姿だった。俗っぽい言い方をするならばフェイの容姿は派手な傾向にある。目鼻立ちがはっきりしていて人目を惹くものが多いのだ。対してグラスは平凡な傾向にある。万人受けする顔立ちのものが多く、相手に警戒心を抱かせにくい。ウミもそう言った印象だった。

 隣に立つ、癖のある灰色の髪と漆黒の瞳をした美しい女性が微笑む。

「初めまして。兎瑠の母、桜庭さくらば あおいです。」
 ウルの容姿は母似のようだった。こうやって見てみると甥の狗狼と同じ色で雰囲気も似ている。ただ瞳が二重で丸く、くりくりしていて全体的に女性的で可愛らしい。

「こちらこそ、初めまして。ウルさんとお付き合いさせて頂いております、貴宮 篤臣です。」

 篤臣が深々と頭を下げる。何としても気に入られたいと必死だった。

「あの、お付き合いしてるって。本当に?」
 あおいが恐る恐る問いかける。ウルがこくんと頷いた。

「ほんとだよ、お母さん。」
「ウル……。あなた、こんな……。よくやったわ!」
 きゃーっと、あおいがウル目掛けて飛びつく。

「さすが我が息子!こんっな良い男捕まえるなんて!ママの遺伝ね?!」
 ぐりぐりと頬擦りする。

「しかも!こんなマーキングされちゃって!すごいわ!」
「お、お母さん!」
「ぜっっったい逃しちゃ駄目よ?!」
「お母さんったら!」
「あおいちゃん、どぅどぅ。」
 テンション高く息子を抱き抱えて振り回す、あおいを後ろからウミが抱きしめて抑える。

「あおいちゃん、ちょっと落ち着こうか。」
「~ごめんなさい、ウミくん。嬉しくってぇ。」
 ウルを抱きしめたまま、あおいがウミを振り返る。

「だって、あのちっちゃかったウルが。恋人見つけたのよ?クシュダートでも作らなかったのに。」
 泣きそうな、あおいの頭を撫でウミが頷いた。

「そうだね、良かったね。ウルが幸せそうで、お父さんも嬉しいよ。」 
 ウミが愛しそうにウルを見つめる。

「うん、ぼく、すごい幸せなの。篤臣くん大事にしてくれるんだ。えへへ。」

 ミックスであることを隠し、人との関わりを極力避けていたウル。自ずと親しくする相手は限られ、その世界はとても狭かった。希少種であり下位種でもある為、従兄弟である狗狼の庇護に入って生きてきたウル。そんなウルを守るため、ウミやあおいは多くのものを諦め、手離した。狗狼やふみも、持てる力全てを奮って今までウルを守ってきた。

 周囲に支えられ、そのことに対していつも引け目を感じながら生きてきたウル。そのウルがとても幸せそうに笑っている。

「「貴宮くん、ウルのこと宜しくお願いします。」」

 夫婦揃ってウルを抱き抱えたまま篤臣に視線を向ける。

「はい。こちらこそ。」
 力強く答えた篤臣に、三人で笑顔を返した。
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