【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 7

neunundsechzig

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 それは新が久しぶりに会った祖父とランチを囲んでいた席で出た話が始まりだった。

「お見合い、ですか。」
「ああそうだ。お前のことを気に入っている友人がいてな。覚えているかい?チェス仲間の由月ゆづきだが。」
 添えられたアスパラにナイフを入れながら、祖父が続ける。新はグラスを掴み、水を飲んでから思案した。

 覚えている。確か祖父の誕生日を祝うパーティで紹介されたうちの一人だった。矍鑠とした初老の男性で背が高く大柄、確か新より年下の孫娘を一人、付き添いにして参加していた。

「はい、覚えています。」
「あの時から、会えばお前のことを聞いてくるようになってね。つい先日見合いさせて欲しいと言ってきたんだ。お相手は孫の藍里あいりさんだが。覚えているかい?」

 そちらも覚えている。その付き添いだった孫娘だ。楚々とした印象だった。確か。

「はい。私と同じ馬の純血種の方でしたね。珍しく小柄な方でした。」

 馬は背が高く、大柄なものが多い。新もそうだが彼女も珍しく小柄だった。しかもほっそりとしており、華奢な印象は二人に共通している。自分と同じく純血種にしては珍しいなと思った記憶があった。

「そうだ、その子だよ。今柏杠のラ-ガレンに通っている。お前の二つ年下だ。受けてくれるなら、近々席を設けようかと思うんだが、どうだろう?なんでも藍里さんには内緒らしい。お前のことを慕っているようだから驚かせたいそうだ。」

 祖父は知らないようだが、彼女は挨拶を交わしたパーティ以来何度か新の店に足を運んでいた。とは言っても普段新は店にいない為、偶然会えたのはそのうちの一回だけだった。大抵は取引先と会ったり、バイヤーとして各国を周っている新は、彼女が度々店を訪れては"新さんはいますか"と尋ねてくると聞いて驚いた。"お目当ては靴ではなく、オーナーのようですよ"と店長に揶揄われた記憶がある。

 付き合うかどうかは別として。話はしてみたいかな。

「分かりました。一度お会いしてみようかと思います。」
「そうか!話してみれば相性も分かるだろう。なに、堅苦しく考えることはない。」
 相好を崩して微笑む祖父に苦笑した。口ではこう言っているが、祖父は祖父で藍里を気に入っているのだろう。上手く行って欲しいと思っているのが丸わかりだった。

「お祖父様、会ってお話しするだけです。出来ればお見合いなどと堅苦しい席はやめて下さい。」
「分かった分かった。気楽に話せるよう二人だけにすればだろう?年寄りは付いていかんさ。」
 したり顔で頷く祖父に呆れた。こういう時祖父は、隠れて付いて来たりするのだ。

「信じてますよ、お祖父様。」
「もちろんだとも!」
 大柄な祖父が物陰に隠れても、きっとはみ出してるに違いない。藍里の祖父まで付いてきそうで新はやれやれと頭を振った。
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