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Hauptteil Akt 7
fünfundsechzig
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三人で二階に上がると、ふみが驚いた顔で迎えた。
「どうしたの?お店は?」
「閉めた。ふみ、貴宮とちょっと込み入った話をする。子供たちは?」
「え?あぁ、今からベランダで沐浴するところ。」
「そっか。後で詳しく説明すっから。悪い、ばあちゃん。ふみと子供たちに付いててくれ。」
「分かったわ。」
はなとふみをベランダに出すと、狗狼はリビングのソファに向けて顎をしゃくった。
「詳しく話せ。」
「ああ。」
フィンレーがツェアシュテールの最高責任者であることと情報源であること。そして今天蒼に身元を偽って入国していること。この三点だけは明かせない。それ以外で知り得た情報を全て狗狼に話して聞かせた。
「……くっそ。面倒なことになったな。」
「ああ。」
「ウルもそうだが、叔父さんも危ねぇな。どうすっかな。」
「叔父さん?」
「ウルの父親だよ。お前の話だと下位種も危ねぇんだろ。」
「ああ、そうか……。そうだな、ウルだけじゃないな。」
「ヘンディルを潰すかこの国から追い出すまでか。先が見えねぇじゃねぇか!あー、ちくしょう!」
狗狼がわしゃわしゃと頭を掻きむしる。篤臣が両拳を握りしめた。
「ヘンディルは、必ず潰す。」
「……おい、お前何するつもりだ。」
「何って仕事だよ。貴宮のリーダーとしてツェアシュテールに協力している。」
「マジかよ。お前いつリーダーになったんだ。」
「……帰国してすぐだ。」
「ウルは?知ってんのか?」
「……まだ言ってない。」
「お前なぁー。」
狗狼が溜め息を吐く。と篤臣が叫んだ。
「話して逃げられたらどうする!」
「おいこらポンコツ!大概にしろ!」
「知ったら貴宮の家に遠慮するかもしれないだろ?!身を引くとか言われたら?!そんなの絶対嫌だ!」
「……妄想すげぇな。おい、話戻すぞ。」
冷たく返されて、篤臣はバツが悪そうに俯いた。
「お前がヘンディル潰すってんならオレも一枚噛ませろ。」
「……お前ならそう言うと思ったよ。」
「とりあえず、ウルと叔父さんを隠すか。」
「そのことだが二人とも俺が預かる。」
「?どこに。」
「俺のマンション、防犯上俺が住む最上階フロアの下二階分は空けているんだ。住民専用エレベーターは居住フロア以外停まらないよう設定されている。ウルは俺のフロアに、すぐ下のフロアにウルの両親を匿おう。」
「マジか。正直助かる。本家で匿えれば一番いいが実際には難しいからな。」
ウルの父親は元々栢杠から少し離れた山奥に一人隠れて住んでいた。そこへウルの母親がフィールドワークで訪れたのが出逢ったきっかけだった。二人は密かに愛を育み、やがてウルが生まれた。息子がミックスであることを隠す為、二人はウルと離れそのまま山に住むことを選んだ。三人は毎年決まった時期に人目を避け、親子水入らずで山に籠り過ごす。ちょうどもうすぐ、ウルが山に向かう時期だった。
「色々準備が必要だな。叔父さん夫婦にはオレが話す。」
「分かった。悪いがウルは休ませる。今後の対策と方針が決まるまで外には出さない。ホールに立ってたら、どこで目をつけられるか分からないからな。」
「それでいい。枝反に連絡してバイトの日を増やしてもらうから、こっちは気にすんな。」
「ああ。」
お互い頷き合う。狗狼が立ち上がり、ベランダへと向かった。その場で説明している間、篤臣は思案した。
急に決まったが、すぐにウルの両親が住めるよう手配しなければ。住んでもらって初めて必要なものも出てくるだろう、希望はおいおい聞くとして。ウルとはゲレンク-パラを済ませ、パートナーにするつもりだから、いずれ彼らは義理の両親となる。今後のことも考えると、出来れば良い印象を持って貰いたい。
少々暴走気味に考え込んでいると、はなが近寄って来た。篤臣の前に立つと、左手を取りぎゅっと両手で包み込む。
「貴宮くん、話は聞いたわ。ウルを、娘夫婦をお願い。」
小さな身体を丸めるようにして頭を下げる、はなの肩に空いている右手を乗せると安心させるように、ぽんぽんと叩いた。
「はい、任せて下さい。」
「……ありがとう。」
そんな二人を、狗狼とふみが子供たちを抱き抱えて見つめていた。
「どうしたの?お店は?」
「閉めた。ふみ、貴宮とちょっと込み入った話をする。子供たちは?」
「え?あぁ、今からベランダで沐浴するところ。」
「そっか。後で詳しく説明すっから。悪い、ばあちゃん。ふみと子供たちに付いててくれ。」
「分かったわ。」
はなとふみをベランダに出すと、狗狼はリビングのソファに向けて顎をしゃくった。
「詳しく話せ。」
「ああ。」
フィンレーがツェアシュテールの最高責任者であることと情報源であること。そして今天蒼に身元を偽って入国していること。この三点だけは明かせない。それ以外で知り得た情報を全て狗狼に話して聞かせた。
「……くっそ。面倒なことになったな。」
「ああ。」
「ウルもそうだが、叔父さんも危ねぇな。どうすっかな。」
「叔父さん?」
「ウルの父親だよ。お前の話だと下位種も危ねぇんだろ。」
「ああ、そうか……。そうだな、ウルだけじゃないな。」
「ヘンディルを潰すかこの国から追い出すまでか。先が見えねぇじゃねぇか!あー、ちくしょう!」
狗狼がわしゃわしゃと頭を掻きむしる。篤臣が両拳を握りしめた。
「ヘンディルは、必ず潰す。」
「……おい、お前何するつもりだ。」
「何って仕事だよ。貴宮のリーダーとしてツェアシュテールに協力している。」
「マジかよ。お前いつリーダーになったんだ。」
「……帰国してすぐだ。」
「ウルは?知ってんのか?」
「……まだ言ってない。」
「お前なぁー。」
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「話して逃げられたらどうする!」
「おいこらポンコツ!大概にしろ!」
「知ったら貴宮の家に遠慮するかもしれないだろ?!身を引くとか言われたら?!そんなの絶対嫌だ!」
「……妄想すげぇな。おい、話戻すぞ。」
冷たく返されて、篤臣はバツが悪そうに俯いた。
「お前がヘンディル潰すってんならオレも一枚噛ませろ。」
「……お前ならそう言うと思ったよ。」
「とりあえず、ウルと叔父さんを隠すか。」
「そのことだが二人とも俺が預かる。」
「?どこに。」
「俺のマンション、防犯上俺が住む最上階フロアの下二階分は空けているんだ。住民専用エレベーターは居住フロア以外停まらないよう設定されている。ウルは俺のフロアに、すぐ下のフロアにウルの両親を匿おう。」
「マジか。正直助かる。本家で匿えれば一番いいが実際には難しいからな。」
ウルの父親は元々栢杠から少し離れた山奥に一人隠れて住んでいた。そこへウルの母親がフィールドワークで訪れたのが出逢ったきっかけだった。二人は密かに愛を育み、やがてウルが生まれた。息子がミックスであることを隠す為、二人はウルと離れそのまま山に住むことを選んだ。三人は毎年決まった時期に人目を避け、親子水入らずで山に籠り過ごす。ちょうどもうすぐ、ウルが山に向かう時期だった。
「色々準備が必要だな。叔父さん夫婦にはオレが話す。」
「分かった。悪いがウルは休ませる。今後の対策と方針が決まるまで外には出さない。ホールに立ってたら、どこで目をつけられるか分からないからな。」
「それでいい。枝反に連絡してバイトの日を増やしてもらうから、こっちは気にすんな。」
「ああ。」
お互い頷き合う。狗狼が立ち上がり、ベランダへと向かった。その場で説明している間、篤臣は思案した。
急に決まったが、すぐにウルの両親が住めるよう手配しなければ。住んでもらって初めて必要なものも出てくるだろう、希望はおいおい聞くとして。ウルとはゲレンク-パラを済ませ、パートナーにするつもりだから、いずれ彼らは義理の両親となる。今後のことも考えると、出来れば良い印象を持って貰いたい。
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「貴宮くん、話は聞いたわ。ウルを、娘夫婦をお願い。」
小さな身体を丸めるようにして頭を下げる、はなの肩に空いている右手を乗せると安心させるように、ぽんぽんと叩いた。
「はい、任せて下さい。」
「……ありがとう。」
そんな二人を、狗狼とふみが子供たちを抱き抱えて見つめていた。
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