【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 7

dreiundsechzig

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 いつもは座らないカウンターに腰掛ける新に、ウルは水を差し出した。

「珍しいねぇ。新くんがこっちに座るの。」
「仕事中に悪いんだけど、ウルくんと話がしたくて。ごめんね。」
「んーん。だいじょぶだよー。」
 微笑んだウルを見て、新はほっとした。最後に会った時、ウルはクロエの行動に傷付けられ、取り乱していた。今はいつもと変わらないように見える。

「あのね、クロエさんのことなんだけど。」
「うん。」
「ウルくんを傷付けちゃって、本当に申し訳ないと思ってるんだ。ごめんなさい。」
「新くんは知らなかったんでしょう?わざとじゃないんだし、気にしないで。」
「確かに、詳しいことは何も知らなかったけど。嫌な気持ちにさせたことは事実だから。」
「……実はあの後ね、篤臣くんからクロエさんとのこと聞いたんだ。」
「……そうなの?」
「うん。全部話してくれた。だからもう本当に良いの。」
 にっこり笑ったウルの笑顔に嘘はなくて、新はほっとした。

「新くんはあの後、大丈夫だった?」
「実は、クロエさんと喧嘩しちゃった。」
「そ、そうなの?」
「うん。嘘吐かれてたって思ったら、頭に来ちゃって。」
「……。」
「もちろん、必要な嘘もあるけど。クロエさんの嘘はそうじゃなかったし、言いたくないことならそう言うことも出来たのに。そう思ったら許せなくて。」
「……そっか。」
「……いや、それもあるけど少し違うかも。」
「?」
「クロエさんが僕に嘘吐くはずがないって思い込んでたんだと思う。なんかちょっと嫌だね。傲慢だなぁ。」
「違うよ、信じてたから傷付いたんだよ。友だちなんだもん。」
「そかな。」
「うん。」

 オーダーの紅茶をそっと置く。新がカップを手に取り、口を付けた。

「仲直り出来た?」
「……うん。少し前に。」
「そっかぁ。良かったぁ。今度改めて紹介してくれる?」
 にこにこ笑うウルに、新はぽかんと口を開けた。慌ててカップをソーサーに戻すと身を乗り出す。

「いいの?」
「?うん。僕も仲直りしたいんだ。」
「……ありがとう。喜ぶと思う。ちゃんと謝りたいって言ってたから。」
「そっかぁ。じゃあそのあとは僕とも仲良くしてくれるかなぁ?」
 うーん、と唸りながらウルが続ける。

「篤臣くんの友だちだもん。僕の知らないリージョンでの篤臣くんの話とか、聞きたいなぁ。」
「……きっと話してくれるよ。」
「えへへ。楽しみ~。」
 笑ったウルを見て、これなら少なくとも貴宮くんは謝罪の場にいてくれるだろうな、と新は安堵した。
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