【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 6

sechzig

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 兄さんの様子がおかしい。

 実臣はいらいらと組んだ足を強請った。はっと我に返って止める。いけない、みっともなかった。

 足を解き、ソファに深く腰掛け直す。実臣が愛してやまない兄、篤臣が貴宮のリーダーとなってもうすぐ一年が経とうとしていた。

 本来ならバトラーを選び、帯同するものなのに篤臣は必要ないと言ってずっと単独で動いている。イロフネストの投資事業部本部長という忙しい役職に就きながらも時には本家からの指示で動くこともあるらしい。あるらしいと言うのは、そのことを後で知ったからだった。一時期全く連絡が取れず、伯父である氷午に詰め寄ったところ、そう匂わせられただけで追い返されたことがあったのだ。そもそもあの時バトラーさえいれば、あのいけすかない伯父にわざわざ聞かなくても良かったのにと歯噛みした。以来、兄には折りに触れ勧めているが中々頷かない。
 仕方がないので篤臣がイロフネストで使っている秘書を取り込むことにした。何か変化があれば報告するよう指示してある。

 その秘書からつい最近聞いたのだ。二人の男性がアポイントもなく急に兄を訪ねてきたと。ただ、どう言う関係なのかは分からなかったと言われた。すぐ部屋に籠り、早口の共通言語で交わされた会話は短く、その男性二人はすぐ帰って行ったらしい。名前を聞いたが知らない人物だった。一人はミスク-コンサーンの役員でもう一人はその部下だという。どちらも美しい青年だったと聞いた。

「まさか兄さんに言い寄ってるんじゃ。」

 兄の篤臣は美しい。しかも賢く、気高く、強い。実臣が知る中で兄より素晴らしい人はいなかった。どこかで兄を見初めたのかもしれない。充分にありえると思った。

 女性だけじゃない。男性だって兄さんなら惹きつけてしまう。今までメイニーしかいたことがなかったからマッシブなんて持つはずないけど向こうから言い寄って来る分には分からない。

 いらいらと人差し指で肘掛けを叩く。

 冗談じゃない、兄さんは豹の女性とゲレンク-パラを済ませて純血種の子供を設けるんだ。そしてその子が次代の貴宮を牽引する。そう決まっているんだ。

 篤臣がクロエ・アシェルとの関係を否定したので安心していたが一度徹底的に周囲を調べた方が良いかもしれない、と実臣は考えた。

 兄さんに集る羽虫どもは僕が追い払う。

 ぎゅっと拳を握り込み、決意した。

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