【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 6

einundfünfzig

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 篤臣のマンションに着くと、ウルはソファに座り込んだ。置いてあったブランケットを手に取ると包まる。隣に篤臣が腰掛け、手を握った。

「大騒ぎしちゃった。ごめんなさい。」
「謝らないで。俺だってウルが同じことされたら嫌な気持ちになる。」
「……うん。」
「ウルは、クロエとの話聞きたい?」
「……。」
 正直聞くのは怖いと思った。凄く綺麗な人だったし篤臣と並んだ姿は本当にお似合いだったから。そう思った途端、胸に嫌な気持ちが広がった。クシュダートでは篤臣が誰と付き合っていると噂になっても気持ちを抑えることが出来た。だってその時篤臣はウルのマッシブじゃなかったから。

 でも今の篤臣くんは、僕のマッシブだもん。

「聞く。聞きたい。」
 知らないのはもっと怖い。さっき篤臣は付き合うをしたと言っていた。ずっと友だちだったと。と言うことはメイニーではなかったのだ。どうしてそうなったのか、知っておきたい。

「クロエとはリージョンで知り合った。お互い留学生だったんだ。フィンレー・グウェインと言うもう一人の友人と三人で、よく一緒にいた。」
「うん。」
「ライオンはハレムを持つ習性があるのは知ってる?」
「うん。」
「クロエもクロエの両親もライオンなんだけど父親がね、習性を言い訳にハレムに何人も愛人を囲っているようなそんな人だったんだ。クロエはそれを毛嫌いしていた。」
「そうなんだ……。確かに、僕もそういうのは嫌かも……。」
「で、ここからが問題でね。よりにもよってクロエはフィンレーを愛してしまったんだ。彼はライオンなんだよ。」
「えっ……と、それって。」
「そう。彼もハレムを持っている。当時からね。取っ替え引っ替えって訳じゃないけど、常に複数の愛人がいた。クロエは耐えられなかったんだ、その他大勢の中の一人にカウントされるのが。だから俺に頼んだ。フィンレーを忘れたい、なんとも思っていないと彼に思わせたい、そうすればせめて友だちとして側にいられるから。メイニーの振りをしてもらえないかって。」
「そんな……。そんなの辛いよ。ずっと側にいられる代わりに好きな人が他の人といるところをずっと見なくちゃいけないなんて。」
 クロエの決断を思うと悲しくなる。

 篤臣は、くすんと鼻を鳴らしたウルを抱え上げ、膝に乗せた。

「俺はクロエを助けることにした。当時ウルのことを忘れられなかった自分と、何だか似てる気がしてね。友だちの力になりたかった。それからは人前でメイニーとして振る舞ったけど、彼女とは一切何もなかったよ。」
「……そっか。」
 ほっと息を吐いて胸に擦り寄る。ぎゅっと抱き込まれた。

「フィンレーがクロエをどう思っているのか、俺は知らない。ただ気持ちがどうであれ問題はフィンレーに取ってどうしてもハレムが必要なのかってところなんだ。」
「そうだね。もしどうしても必要なら、クロエさんはハレムを受け入れるか、フィンレーさんを諦めるしかないんだよね。どっちを選んでも辛いよね。」
「ああ。」
「そう言えばクロエさん、篤臣くんに助けてもらいたいって言ってたよね?」
「それなんだけど……どうやらゲレンク-パラの話が出ているみたいなんだ。クロエの実家アシェル家はホテル事業で財を成した資産家なんだけど、恐らく政略の話が出たんじゃないかな……それを断るために恋人が必要になった。だから俺に、頼みに来たんじゃないかと思う。」
「そ……れって。」
「今度はじゃなくてパートナーにしてもらえないか頼みに来たんだろう。だから来てたことは知ってたけど連絡するつもりも会うつもりもなかった。」
「知ってたの……?天蒼に来てたこと。」
「うん。アシェル家はよくゴシップ記事に載るから。それで知ってた。俺にはウルがいるからね。悪いけど、巻き込まれたくなかったんだ。」
 額にキスを落とすと、抱え直す。

「クロエはあくまで友だちで、俺がパートナーにしたいのはウルだから。」
「……篤臣くん。」
 そんな篤臣を薄情だと、そう言う人もいるだろう。でも、ウルは嬉しいと素直に思った。何があってもウルを選んでくれる。篤臣の不公平な愛が嬉しい。

 両手を伸ばし、篤臣の首に縋り付いた。伸び上がって唇に吸い付く。

「篤臣くん……唾液ちょうだい。」
「ウル。」
「お願い……。」
 長い舌を口内に迎え入れる。とろとろと流し込まれる唾液を夢中で啜った。

「篤臣くん、ずっと一緒にいてね。離さないでね。」
「あぁ、もちろん。絶対離さない。」
 キスを解くと鼻を擦り合わせる。その後も離れ難くて何度もキスを繰り返した。
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