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Hauptteil Akt 4
fünfundvierzig
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ウルの親友、新を紹介してもらった篤臣はイロフネストに戻り、与えられた投資事業部本部長室へと向かった。前室には秘書室が設けられており、専属秘書が常駐している。
「部長、弟様がお見えです。」
「実臣が?」
「はい。中で待つと仰いましたのでお待ち頂いております。」
「そうか、ありがとう。」
頷いて返し、ノックもせず開けると中のソファで寛いでいたらしい金色の髪が揺れた。
「兄さん!」
飛び上がって立ち上がると駆け寄ってくる。
「実臣。どうした?」
「どうしたって……ひどいじゃないか。連絡しても中々返してくれないから、ここまで来たんだよ。」
「ああ、すまない。」
「忙しいのは分かるけど。返事くらいしてよ。」
一つ下の弟、実臣は篤臣を誰よりも尊敬し崇拝している。いわゆる強火のブラコンだった。
そのまま適度にあしらいながらソファに座る。向かいを促すと座り直し、そのまま身を乗り出した。
「ねぇ、兄さん。この記事知ってるよね?これってどこまで本当なの?」
そう言ってテーブルに置いてあったタブレットを叩き、クロエの記事を画面いっぱいに広げる。
「兄さん、本当にこの人と何かあるの?」
「ないよ。」
「だよね?あー、良かった。びっくりしたよ。だってこの人ライオンでしょ?貴宮のリーダーを務める兄さんの相手は豹でなきゃ。全く!ひやひやしちゃったよ。」
「実臣。俺は別に純血種に拘るつもりはないし、子どもが欲しいと思ったこともないよ。」
「どうしちゃったの?なんでそんなこと言うの?兄さんは優秀なんだから、絶対純血種の子どもを作らないと!その血を残さないなんて、あり得ないよ!」
「あのな。」
「もう!このクロエ・アシェルって人と何もないなら安心だけど、今の感じじゃ心配だよ。大丈夫だよ、僕が探してあげる。きっと兄さんが気に入る純血種の豹を見つけてあげるから!」
「……実臣。」
「誰がいいかな。友だちにも聞いてみるよ。好みのタイプは?どんな感じが好き?僕としては兄さんに釣り合うくらい頭が良くて美人で性格も良い人が良いなぁ。兄さんスペック高いから、釣り合うってなると中々いないだろうけど。任せて!僕頑張るから!」
「実臣。頼むから話を聞いてくれ。」
片手の平を立て、止める。ぴたりと口が閉じられた。
「俺の相手は俺が決める。」
「でも。」
「実臣。」
「……はい。」
「パートナーは一生を共に過ごす相手だ。俺がね。だから俺が決める。誰の指図も受けない。」
「指図なんてそんな。」
「違うならこれ以上は口を出さないでくれ。」
「でも……。」
もごもごと不満そうに言葉を呟き俯く。
「実臣。」
「……はい。」
「分かったよな?」
「はい。」
「勝手に何かしたら、許さないからな。」
「何かって。」
「勝手に相手を見つけてきたり。勝手に会わせようとお膳立てしたり。勝手に噂をばら撒いて外堀埋めようとしたり。そう言う類のことだよ。」
うぐっと実臣が言葉に詰まる。
「お前が俺のためにと考えて行動するのはありがたいとは思う。ただ俺が望んでないことをお前が最良だと勝手に決めて押し付けるのは迷惑だ。」
「兄さん。」
実臣が絶望したと言うように青ざめる。
「俺の弟はそこまで愚かではないよな?」
「も、勿論だよ。」
「よし。分かってくれて嬉しいよ。」
「うん。」
しおしおと俯く。篤臣のこととなると実臣は常に暴走気味だった。少し放っておくくらいが丁度いい。ずっと相手をしていると全てに関わってこようとするのだから始末に負えない。
「そう言えば実臣。お前の方はどうなんだ?お見合いしたんだろう?」
「僕?ああ、お相手が豹だって言うから受けたけど。うーん。あまりピンと来なかったな。悪くはないけど。」
「お前、どうしても相手は豹がいいのか?」
「だって僕純血種だし。出来れば子供もそうであって欲しいよ。やっぱり色々と違うでしょ?知力体力共にさ。より強い方が生きやすいのは事実なんだし、子どもに与えられるものは少しでも多い方が良いじゃないか。」
「そうか。良い相手が見つかるといいな。」
そう言う考え方もあるだろう。否定する気はない。それは実臣にとっての正解であって篤臣にとっての正解ではない。ただそれだけなのだ。
頷いて同意を示すと、実臣は安心したように微笑んだ。たった一人の弟に、出来れば愛し愛される恋人を見つけて欲しいと思うのは、やはり傲慢な考えなのだろうかと息を吐いた。
「部長、弟様がお見えです。」
「実臣が?」
「はい。中で待つと仰いましたのでお待ち頂いております。」
「そうか、ありがとう。」
頷いて返し、ノックもせず開けると中のソファで寛いでいたらしい金色の髪が揺れた。
「兄さん!」
飛び上がって立ち上がると駆け寄ってくる。
「実臣。どうした?」
「どうしたって……ひどいじゃないか。連絡しても中々返してくれないから、ここまで来たんだよ。」
「ああ、すまない。」
「忙しいのは分かるけど。返事くらいしてよ。」
一つ下の弟、実臣は篤臣を誰よりも尊敬し崇拝している。いわゆる強火のブラコンだった。
そのまま適度にあしらいながらソファに座る。向かいを促すと座り直し、そのまま身を乗り出した。
「ねぇ、兄さん。この記事知ってるよね?これってどこまで本当なの?」
そう言ってテーブルに置いてあったタブレットを叩き、クロエの記事を画面いっぱいに広げる。
「兄さん、本当にこの人と何かあるの?」
「ないよ。」
「だよね?あー、良かった。びっくりしたよ。だってこの人ライオンでしょ?貴宮のリーダーを務める兄さんの相手は豹でなきゃ。全く!ひやひやしちゃったよ。」
「実臣。俺は別に純血種に拘るつもりはないし、子どもが欲しいと思ったこともないよ。」
「どうしちゃったの?なんでそんなこと言うの?兄さんは優秀なんだから、絶対純血種の子どもを作らないと!その血を残さないなんて、あり得ないよ!」
「あのな。」
「もう!このクロエ・アシェルって人と何もないなら安心だけど、今の感じじゃ心配だよ。大丈夫だよ、僕が探してあげる。きっと兄さんが気に入る純血種の豹を見つけてあげるから!」
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「実臣。頼むから話を聞いてくれ。」
片手の平を立て、止める。ぴたりと口が閉じられた。
「俺の相手は俺が決める。」
「でも。」
「実臣。」
「……はい。」
「パートナーは一生を共に過ごす相手だ。俺がね。だから俺が決める。誰の指図も受けない。」
「指図なんてそんな。」
「違うならこれ以上は口を出さないでくれ。」
「でも……。」
もごもごと不満そうに言葉を呟き俯く。
「実臣。」
「……はい。」
「分かったよな?」
「はい。」
「勝手に何かしたら、許さないからな。」
「何かって。」
「勝手に相手を見つけてきたり。勝手に会わせようとお膳立てしたり。勝手に噂をばら撒いて外堀埋めようとしたり。そう言う類のことだよ。」
うぐっと実臣が言葉に詰まる。
「お前が俺のためにと考えて行動するのはありがたいとは思う。ただ俺が望んでないことをお前が最良だと勝手に決めて押し付けるのは迷惑だ。」
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実臣が絶望したと言うように青ざめる。
「俺の弟はそこまで愚かではないよな?」
「も、勿論だよ。」
「よし。分かってくれて嬉しいよ。」
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「そう言えば実臣。お前の方はどうなんだ?お見合いしたんだろう?」
「僕?ああ、お相手が豹だって言うから受けたけど。うーん。あまりピンと来なかったな。悪くはないけど。」
「お前、どうしても相手は豹がいいのか?」
「だって僕純血種だし。出来れば子供もそうであって欲しいよ。やっぱり色々と違うでしょ?知力体力共にさ。より強い方が生きやすいのは事実なんだし、子どもに与えられるものは少しでも多い方が良いじゃないか。」
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そう言う考え方もあるだろう。否定する気はない。それは実臣にとっての正解であって篤臣にとっての正解ではない。ただそれだけなのだ。
頷いて同意を示すと、実臣は安心したように微笑んだ。たった一人の弟に、出来れば愛し愛される恋人を見つけて欲しいと思うのは、やはり傲慢な考えなのだろうかと息を吐いた。
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