【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 4

zweiundvierzig

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 報告書を読んで、フィンレーは頷いた。

『その後、男性はどうだい?』
『はい。専門医療機関に入院しております。身体もそうですが、精神面のケアにかなり時間がかかると診断されました。ご家族には見つかったことだけ連絡しております。』
 誘拐された為、恐らく個人情報は全てヘンディルが握っている。家族に会わせてはやりたいし、帰してもやりたいが再び攫われる可能性が高かった。それにこのまま帰せば家族にまで危険が及ぶ。しかし未だ男性が戻っておらず、接触も確認されなければ、少なくとも家族が危険に晒されることはない。

『では、いつも通りに。』
『畏まりました。』
 こう言ったケースでは、家族の同意を得て新しい身分を用意する。

 フィンレー・グウェインのもう一つの顔。それは犯罪殲滅組織ツェアシュテールの最高責任者と言うものだった。ラ-ガレンを卒業し、そのままグウェイン家のリーダーとして、そしてツェアシュテールの最高責任者として。フィンレーはその責務を全うしている。

『今回のことで、あの拠点は捨てるだろう。』
『はい。アゲンツの侵入を許したとなれば、その方が良いと判断するはずです。』
『……どこに身を隠すかな。』
『恐らく。天蒼ではないかと。』
『外れて欲しいことこそ、当たるからね。私もそう思うよ。』
『側近の女が密入国していますので、合流するのではないでしょうか。』
『愛人二人を渡したのに。対して使えなかったな、あの男。』

 寝取りが性癖の男性を思い出し、嘆息する。彼は側近の女を天蒼に手引きした人物だった。性別関係なく、人の恋人やパートナーを欲しがる悪癖はあっさり女にも利用された。適度に関係を持っていたデイム差し出され、寝取りが上手くいったと喜んだ男性は女に偽の身分証を与え密入国させたのだ。調べがついた時点でフィンレーも男性に同じ手を使うことにした。ああ言う手合いは罠だと分かっていても掛かりにくる。もはや罠でもいいのだ。フィンレーや篤臣のような生態系のトップゾーンにいる男性から寝取れるだけで自尊心が満たされる。安いプライドではあるが。

 そうして差し出した愛人二人。シェリルとレイラ。二人には予め『他の男と性交して欲しい。』と伝えてあった。もちろん断っても構わない。その場合は多少面倒ではあるが別に用意するだけだった。上手くいけば、引き換えに天蒼へ密入国した女の足取りが追える。

 二人はまず、相手がどんな男か聞いてきた。寝取りが性癖で陰茎が二本あり、気に入れば恋人として迎え入れ、贅を尽くした生活が送れる資産家だと告げれば快諾した。
 陰茎が二本あるものは少ない。興味が唆られたのだろう。二人が受けたことで結果的に手離すことになるだろうと予想は付いていた。

『今後、どうされるおつもりですか?』
『ん?ハレムのことかい?』
『はい。』
『そうだね、正直そんな暇はないかな。標的が天蒼になりそうだから。篤臣が巻き込まれないとも限らない。それにせっかくだから、一気に畳み掛けてヘンディルを潰したいかな。』
『畏まりました。』
『お前も当分やりたくもない性交から解放されるよ。良かったね。』
『……ありがとうございます。』
 仏頂面で答えるジュードに笑う。

 さて。天蒼に入るにはフィンレーもジュードも身元を偽って密かに入国しなければならない。ニュースの一面を飾るわけにはいかないのだ。ツェアシュテールを運営しているのはグウェイン家で、最高責任者をフィンレーが務めているのは極秘なのだから。なるべく目立つことは避けたい。

 彪束こづかに手を回してもらうか、と呟いた。

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