【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 3

sechsunddreißig

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「デートの前に話がある。」
 狗狼が目の前に立ちはだかる。

「おい。」
 初デートだぞ。何考えてやがる。ミックスで兎。確かに希少種の中でもレア中のレアだ。狙われる確率はかなり高い。バレないように守ってきた従兄弟としては色々言いたいこともあるだろう。だからって初デートを邪魔されてたまるか。知らず喉が鳴り、威圧が漏れる。狗狼が溜め息を吐いて腕を組んだ。

「ウルから聞いた。ミックスで兎なのは知っててあいつ貰うつもりなんだよな?だったら、まだ他にも知ってもらっとかねぇとやべぇ予備知識ってもんがあるんだよ。これは深沢のリーダーとして譲れねぇんだ。」
「……なんだ。」
「まずは座れ。」
 顎でしゃくられ、渋々座る。既に閉店したCarmの中は静寂に包まれていた。

「あいつはな、純血種の兎の父親、純血種の狼の母親。その間に生まれたミックスだ。一方は下位種、一方は上位種。両極端な性質を受け継いだせいでまだ、発情期ヒートが来てねぇ。」
「……は?」
「未成熟なんだ、歳の割には。同年代の中でも言動が幼いだろ?体毛すら生えてねぇ。」
「た、いもう……。」
「陰毛すら生えてねぇってことだよ。ヒゲも臑毛もねぇだろが。」
「なんで!そんなことまで知ってるんだ!」
「落ち着け。興味本位で知ってるわきゃねぇだろ。リーダーとして専門医から報告受けてんだよ。」
「専門医……。」
「深沢でもあいつがミックスで兎なのは一部しか知るものはいない。当然体調管理に不可欠な専門医は決まってる。あいつは想像以上に手がかかるんだ。口が硬い専門医が同行しないことには旅行にだっておいそれとは行けない。」

 そんな窮屈な生活をずっと続けていたなんて。

「お前も分かんだろ。その筋に目をつけられたら。」
「ああ。」
「だから、そういうことも知っといてもらわねぇと困るんだよ。専門医の話じゃ、今更ヒートが来たところで身体は出来上がってるから変化はないそうだ。」
「そうか。」
「つまり、今のまんま。つるっつるだ。良かったな。」
「他に言いようがあるだろ!」
「なんで?あいつにヒゲとか臑毛とか陰毛とか想像もつかねぇだろ?それが生えてこねぇんだぞ?良かったじゃねぇか。」
「いや、良いけど!そうだけど!」
「認めんのか。お前残念なイケメンだな。」
「お前にだけは言われたくない!」
 肩で息をしながら言い返す。

「で、だ。ここから本題だ。もし、突然ヒートが来たら酩酊状態になる可能性が高いらしい。今まで性質が不安定なせいで遅れていたものが一気に来るからその反動だな。下手したら意識混濁を起こす恐れもある。」
 ぐっと言葉に詰まる。

「左耳にイヤカフ付けてんだろ?あれ、幼少期から着けさせてるんだが心拍数と現在地を記録して追跡してるんだ。拉致や誘拐に遭った時のために。で、急激な心拍数の上昇が確認されたら自動で針が出て耳に刺さる仕組みになってる。そこから抑制剤が注射されるんだ。」
「抑制剤って。」
「無理矢理発情促進剤打たれた時の応急措置だ。」
「……そうか。」
「使わずに済めばそれに越したことはないが。知っといてくれ。」
「分かった。」
 頷いて理解したと伝える。

「今まで、そう言ったことがあったのか。」
「ミックスで兎って知らなくてもあいつは人を惹きつける。見た目があれで中身があれだ。分かんだろ。」
「確かに。どっちも可愛い。」
「……おい。惚気んな、きしょくわるい。」
「本当のことだろ。」
「……とにかく。気を付けろ。」
「もちろんだ。誰にも見せない。」
「お前マジで残念だな。」
 狗狼が呆れた顔で呟いた。
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