【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 2

zweiundzwanzig

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 翌日から貴宮は、ぱたりと来なくなった。もう、一週間以上経つ。

「ウル?おいウル!」
「あ。」
 びくん、と肩が跳ねた。ぼんやりしていて呼ばれたことにも気付かなかったらしい。重症だなと溜め息を吐く。

「これ。」
 そう言ってサラダとスープを顎でしゃくる。

「ごめん。」
「ぼーっとしてっと転けるぞ。」
「うん、気を付ける。」
 頷いてトレイにサラダとスープを載せるウルを見やる。

「連絡ないのか?」
「……え?」
「貴宮から連絡ないのか?」
「……連絡先知らないから、お互い。」

 何やってんだ、あいつは。

 舌打ちしそうになる。あれだけ足繁く通ってたくせに。馬鹿か。

 そのままウルが厨房から出ていくのを見送ると隣にいた、ばあちゃんが溜め息を吐いた。

「どうしたのかしら、貴宮くん。」
「知らね。」
「急に来なくなるなんて。」
 その通りなので黙り込んだ。

「ウル、落ち込んでるわねぇ。」
「枝反のこともあるしな。」
「うーん。それはまぁ。そうなんだけど。それ以外にも何かあったんじゃないかしら。」
「何かって何だよ。」
「それが分からないから困ってるのよ。」
 ばあちゃんに背中を、ぱしんとやられる。

「せめて、来なくなった理由が分かれば良いんだけどねぇ。」
「……仕方ねぇな。」
 ぶちぶちと文句を言いながらエプロンを外す。

「あら。どうしたの。」
「ちょっと。」
「?どこに?」
 ばあちゃんの声を無視して二階へと上がる。

 そっとドアを開けると、ふみが振り返って笑った。

「あれ?どうしたの?クロくん。」
「子供たちは?寝てんのか?」
「うん。ぐっすり。お昼寝中。」
「少し聞きたいことあってな。」
「?なぁに?」
「ウルからなんか聞いてねぇ?」
「……貴宮さんのこと?」
「ああ。来なくなって大分経つ。ウルのやつ、日に日に落ち込んでるからな。ばあちゃんが気にしてんだ。」
「クロくんも気にしてるんでしょ?」
「そ、れは。まぁ。少しは。」
 くすくす笑いながら、ふみが続ける。

「ウルちゃんあんまり、そう言う話しないからなぁ。」
 肩を竦めたふみを見て、頭をがりがり掻く。

「やっぱそっか。」
「まぁ、心配なのは分かるけど。こればっかりは本人たちが頑張ることでしょ?すれ違うたびにお膳立てしてもらわなきゃいけないんじゃ、これから先なんてないよ。」
 厳しい意見に口を噤んだ。確かに。尤もだ。

「そっか。そだな。」
「相談されたら聞いてあげよ。」
「ああ。」
 ふみをぎゅっと抱きしめる。

「オレのふみは良い女だな。」
「へへーん。」
 胸元に顔を埋めた、ふみの頭にキスをする。

「じゃ、仕事戻るわ。」
「はーい。いってらっしゃい。」
 柔らかな唇に吸い付いて腕を解く。そのまま、カフェへと戻った。
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