【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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zehn

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「いやぁ!来ないで!駄目!」
「ふみ!」
「嫌だったら!絶対いや!ウルちゃん呼んで!早く!」
「なんで?!オレ父親だぞ!」
「その前に私の男でしょうが!産むとこ見られるなんて絶対いや!死んでもいや!恥ずかしくて死ぬ!」
「お、おい。」
 わんわん泣き出した、ふみにおろおろする。陣痛がきて、もうすぐ生まれるという時になってまさかの号泣。二人の住まうカフェの二階はまさに嵐の真っ只中だった。

「あらあら。仕方ないわねぇ。」
「ばあちゃん。」
「ほらほら。狗狼。ウル呼んできて。」
「でも。」
「ほら、早く。」
 なんでオレじゃなくてウルなんだよ。ぶすくれて三階へと上がる。

「おーい。ウル。」

 程なくして寝癖がついたまま、ひょこっとウルが顔を出した。

「どしたの、狗狼。」
「ふみが産気づいた。」
「え?!え?!そなの?!」
「お前呼べって。」
「ぼく?」
「そ、ほれ。早よ。」
「うん、分かった。」
 こくこく頷くとそのまま出てくる。部屋着のまま、どう見ても今まで寝てたと思われるウルに呆れる。

「お前、あんだけ大声でふみが叫んでたのに。相変わらず太ぇな。」
「朝、弱いんだもん。」
「まぁいい、お産付き合え。」
「うん。」
 そのままウルを連れてふみの元へと急いだ。

 出産は家でやるのが一般的で今回、ばあちゃんが取り上げる。

「ばあちゃん、ふみは?」

 ドアを開けると妊婦が使う腰痛用のテニスボールが次々飛んできた。持ち前の反射神経で全部避ける。

「見ないでぇ!」
「無茶言うなよ。」
 げんなりしつつ、テニスボールを拾いながら、ばあちゃんを見る。

「どんな?」
「もうすぐよ。」
 頷くと、ふみを見た。

「ふみ。待ってっから。」
「うん。うん……。」
 ベッドの中から微笑み返した、ふみを見つめる。

「じゃ、任せたぞ。ウル。」
「うん、がんばる。」
 こくこく頷いてウルが部屋に入るのを見送ると、リビングへと入った。テニスボールを隅に放り、ソファに座り込む。

 あー。落ち着かねぇ。

 腿に肘を付くと項垂れる。ふみと子供たちの無事を祈った。
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