【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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neun

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 ちくしょう、面白くねぇな。

 厨房から視線をやると、でれでれと脂下がっている貴宮が見える。あのやろう。

「狗狼。威圧が漏れてるわよ。」
 ばあちゃんに叱られて、慌てて引っ込めた。しかし、ばあちゃんもばあちゃんだ。なんで。

「まあまあ。気持ちは分かるけど。」
「なにがだよ。」
「今までずっと、守ってきた大事な子だもの。心配よねえ。」
「……そんなんじゃねぇよ。」
「ずっと一緒だったんだから。心配なのは当然よ。つまんない見栄張らないの。」
「……なんだよ。分かってんならなんで。」
「そうねえ。いい機会かなって思ったのよ。やっぱり今まで通りとはね。いかないから。」
「……。」
「それに、ウル見てるとねえ。狗狼も気付いてるんでしょ?それこそずっと一緒だったんだから。」

 分かってる。ウルは奴に惚れてる。分かりやすい。元々臆病だから、苦手なものからはすぐ逃げ出す。そんなウルから近寄ってんだ。

「貴宮くん、いい子みたいだし。」
「どこが。」
 奴は腹黒い。この前だってウルに見えない位置で手を力一杯握り潰されそうになった。仲直りの握手だとか嘯きやがって。瞬時にやり返してやったら、ふみには友だちかと揶揄われたじゃねぇか。

「別に他の子にとっては悪い子でもいいのよ。ウルにとって良い子なら。」
「……。」
「言い換えればウルにとって都合の良い子ならいいの。どんな手を使ってもあの子を守ってくれるなら。それこそ、狗狼みたいにね。」
「俺、別に。」
「嘘おっしゃい。18歳まであんなべったり。わざとマーキングして。周りにはマッシブだって思われても否定しないで、そのままにしてたのはウルを守る為でしょ?」
「知ってたん。」
「知ってるわよ、そりゃ。」
「……。」
「でも、よぅく考えて。ふみちゃんには狗狼しかいないけど、ウルは違うでしょう?」
 そう言って、貴宮とウルを見やる。

「……そ、だな。」
「少しずつでいいから。"見守る"って言うのも"守る"ことの一つよ。」
「……分かったよ。」
「素直ねぇ。そう言う可愛げがあるから、ふみちゃん狗狼にベタ惚れなのよ。」
 からからと笑うばあちゃんを見て、かあっと顔に熱が昇った。

「なんだそれ!」
「そのまんまよ。ふみちゃんは狗狼らぶ♡なんだから。知ってるでしょうに。」
「!」
 身内にらぶ♡とか使うなよ!危うくフライパン落としそうになっただろ!

「とにかく。ばあちゃんの言う、都合の良い子かどうかは厳しく査定すっから。」
「はいはい。お兄ちゃんは弟らぶ♡ねぇ。」
「それやめて。ほんと。マジで。」
 ぞぞっと悪寒が走る。誰がお兄ちゃんだ。誰が弟だ。

 くすくす笑いながら、ばあちゃんがアイスティーを淹れる。「ウルー。」と呼ばれて臆病な兎の肩が跳ねた。
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