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高校を卒業したその足で留学先へと渡り、教育の最高学府に編入して、スキップで二年後卒業。そのまま戻って本家が経営する会社に入り、投資事業部の本部長に就いた。
クシュダートに入る前から決まっていた。予定通り。子供の頃はバリスタに憧れていたけど、今は違う。経営学や投資を学んで楽しかったし、リージョンも行って良かったと思う。大切な友人たちが得られたし、いろんな視点で物事を見れるようになった。
でも、ずっと心残りがあった。
ウル。
いつまでも忘れられなかった。初めて見た時、瞳が離せなかった。巣に連れ帰りたい。閉じ込めて俺以外の瞳に触れさせたくない。本能的に思った。甘い匂い。鼻腔に残っていつまでも消えない。ずっと嗅いでたい。
でも同時に別の匂いがした。べったりと、ウルにこびりついた匂い。こいつは俺のものだと。手を出すなと。そういう匂い。
認識した途端、ブレーキが掛かった。
人のものに手を出すほど、節操なしなんかじゃない。
青臭いプライドと言われれば、それまでだと思う。戦って奪い取るくらいの気概があれば良かったのかも知れない。でもその時俺が選んだのは「あれは酸っぱい葡萄だ。」と自分に言い聞かせることだった。
そのせいか、ずっとウルを忘れられなかった。
クシュダートでもラ-ガレンでも。それなりに付き合う相手はいた。デートしたりセックスしたり。相手には困らなかった。純血種で上位種。それだけで生態系のトップゾーンにいるわけだから、なんなら入れ食い状態だった。
でも、満たされない。
相手には悪いけど、心にはいつもウルがいた。だから黒髪や青い瞳の子とは付き合わなかった。ふとした瞬間「ウル。」と呼びそうになってしまうから。一度も呼んだことなんかないのに。
帰国して、すぐに仕事を始めた。うちはフランチャイズやチェーンではなく所謂、投資対象としてカフェを評価し契約する。
少し変わっているのは資金は出しても経営方針や人事に口は出さないと言うこと。買収ではなくあくまでこれは投資だから。ただ、提案はする。
こちらには今までそれなりに培った人脈やノウハウがある。良い豆を安定して供給出来るルートもあれば、名品と言われるカップやケトルを修理する職人たちにも伝手がある。そういうものはやはり貴重で個人経営のカフェが取引するのは難しい。だから大抵契約後は良い関係が続く。カフェがより良くなれば、結果的に顧客も増える。そうすれば自然と収益も上がる。最終的には投資したうちに還元される。
カフェCarmはその投資先候補の一つだった。
ウルのことは探そうと思っていた。でも名前しか知らない。距離をとっていたから。だから人を雇おうと思っていた。見つけたら絶対諦められそうにないのも分かってた。ここまで引き摺ったんだ。逃がさない。恋人を奪い合う私闘もやる覚悟だった。
だから匂いを嗅いだ時、動揺した。ウルの匂い。忘れたことなんかない。オスマンサスに似てる。あれより少し軽い。今までウルからしか嗅いだことない。間違えたりしない。
見つけた。
やっぱり、かわいい。
クシュダートに入る前から決まっていた。予定通り。子供の頃はバリスタに憧れていたけど、今は違う。経営学や投資を学んで楽しかったし、リージョンも行って良かったと思う。大切な友人たちが得られたし、いろんな視点で物事を見れるようになった。
でも、ずっと心残りがあった。
ウル。
いつまでも忘れられなかった。初めて見た時、瞳が離せなかった。巣に連れ帰りたい。閉じ込めて俺以外の瞳に触れさせたくない。本能的に思った。甘い匂い。鼻腔に残っていつまでも消えない。ずっと嗅いでたい。
でも同時に別の匂いがした。べったりと、ウルにこびりついた匂い。こいつは俺のものだと。手を出すなと。そういう匂い。
認識した途端、ブレーキが掛かった。
人のものに手を出すほど、節操なしなんかじゃない。
青臭いプライドと言われれば、それまでだと思う。戦って奪い取るくらいの気概があれば良かったのかも知れない。でもその時俺が選んだのは「あれは酸っぱい葡萄だ。」と自分に言い聞かせることだった。
そのせいか、ずっとウルを忘れられなかった。
クシュダートでもラ-ガレンでも。それなりに付き合う相手はいた。デートしたりセックスしたり。相手には困らなかった。純血種で上位種。それだけで生態系のトップゾーンにいるわけだから、なんなら入れ食い状態だった。
でも、満たされない。
相手には悪いけど、心にはいつもウルがいた。だから黒髪や青い瞳の子とは付き合わなかった。ふとした瞬間「ウル。」と呼びそうになってしまうから。一度も呼んだことなんかないのに。
帰国して、すぐに仕事を始めた。うちはフランチャイズやチェーンではなく所謂、投資対象としてカフェを評価し契約する。
少し変わっているのは資金は出しても経営方針や人事に口は出さないと言うこと。買収ではなくあくまでこれは投資だから。ただ、提案はする。
こちらには今までそれなりに培った人脈やノウハウがある。良い豆を安定して供給出来るルートもあれば、名品と言われるカップやケトルを修理する職人たちにも伝手がある。そういうものはやはり貴重で個人経営のカフェが取引するのは難しい。だから大抵契約後は良い関係が続く。カフェがより良くなれば、結果的に顧客も増える。そうすれば自然と収益も上がる。最終的には投資したうちに還元される。
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だから匂いを嗅いだ時、動揺した。ウルの匂い。忘れたことなんかない。オスマンサスに似てる。あれより少し軽い。今までウルからしか嗅いだことない。間違えたりしない。
見つけた。
やっぱり、かわいい。
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