【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

遥瀬 ひな

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Hauptteil Akt 0

zwei

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 父が兎で母が狼。いわゆる希少種ミックスで生まれた僕は、グラスの性質ながら容姿はフェイとして生まれた。だから外ではフェイとして振る舞ってる。

 僕は父と一緒で兎。グラスの中でも下位種と言われ、確認された現存数は、ほぼない。ミックスで兎の僕は更に希少と言える。

 母方の従兄弟で同い年の狗狼は、生まれた時からずっと僕の側にいた。
 深沢みさわ一族の後継者リーダーでもある狗狼は特殊で脆弱な僕を18歳まで守ってくれていた。マーキングして周囲に牽制する。純血種で上位種の狗狼に歯向かうものはまずいないから。

 唯一の例外が貴宮くんだった。

 別に正面切ってやり合っていたわけでもなく、お互い棲み分けていたって感じ。
 純血種で上位種ってところが二人とも一緒。つまりクシュダートでは完全に勢力図が二分されていた。お互い、関わらない。そんな感じ。

 それが、あんなふうにやり合うなんて。

「なんでかな。」

 ぽつりと呟く。二人の威圧を思い出して、ぶるっと震えた。抑えが効かなくなって耳と尻尾が出てしまう。慌ててしゃがみ込んだ。

 僕はロップイヤー。幅広の垂れ耳。ぱっと見は分かんないけど、気をつけないと。

 もぞもぞ動いて端っこによると声が聞こえた。耳が出たせいで集中すれば遠くまで拾える。

「はっきりさせておきたいんだが。」
「なんだ。」
「あの子のマッシブなのか?」
「はあああ?」
「答えろ。」
「なんっで、そんなことに答えなきゃなんねぇんだ。」
「気になるから聞いている。」
「だからって答えるわきゃねぇだろが。」
「そうか。なら好きにさせてもらう。」
「……きさま。」

 なんか険悪。怖い。

 グラスの習性でフェイの威圧は無条件で怖いのだ。生存本能とも言える。

「ウル。」
「おばあちゃん。」
「あらあら。出ちゃったの?おいで。」
 ちょいちょいと手招きされ、なんとか立ち上がり駆け寄った。

「ここ、座ってなさい。いい?」
「うん……。」
 しおしおと項垂れて、おばあちゃん専用の椅子に座る。尻尾が出ちゃったから座りが悪くて少しもぞもぞした。

 そのまま、おばあちゃんが二人の所に行くのをぼんやりと見送る。

 お店、大丈夫かなぁ。
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