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Hauptteil Akt 0
eins
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あの日以来、貴宮くんはちょくちょく来店するようになった。
おかげで次はいつくるかな、って期待してしまう。全然、話してもないけど。
「あいつ、又来てんな。」
狗狼が腕を組んで、いらいらしながらホールを見た。そこには、ここ一ヶ月の間ほぼ毎日来る男性客が一人座っていた。
「うん。」
「はー。しつっけぇな。」
「?どしたの?」
「あー。いや。お前は気にすんな。」
狗狼が、ぐりぐりと頭を撫でた後、調理に戻ったのを見て首を傾げる。
クシュダート卒業以来、あんまり触らなくなったのに。珍しいなぁと思いつつテーブルへと向かう。
「お待たせ致しました。」
「ありがとう。」
そっとホットコーヒーを置くと、ビクリと肩が揺れた。
「あの。」
「?はい?」
「もしかして、マッシブかパートナーがいる?」
「へ?」
それを初対面で聞くのはマナー違反だ。そりゃあここ一ヶ月毎日通ってもらってるから初対面ではないけれど。少なくとも友人でもなければ知人でもない。なのに、そんなこと聞いてくるなんて。
「あの……。」
「ああ、いや。忘れて下さい。」
そう言って立ち上がるとその場で会計して帰って行った。
なんだったのかな?
首を傾げつつ、カップを片付けていたら後ろから声がした。
「あいつの匂いがする。」
びくんと肩が跳ねた。だって、嗅がれてる。頭のてっぺん。すんって音がした。
「やっぱりまだ一緒いるのか。」
「え、えと。」
固まってたら凄い速さで狗狼が飛んできた。
「てめぇ。ここで何してやがる。」
「客だが。」
「だったら、こいつから離れろ。」
「それは失礼。」
両手を上げ、降参とばかりに貴宮くんが一歩下がった。途端に今まで近くにあった熱と匂いが離れて泣きそうになる。
「ウル、バックヤード行っとけ。」
「……なんで?」
「いいから。」
有無を言わさない狗狼の剣幕に怖くなる。でも、僕だって。
「やだ。」
「ウル。」
「理由言ってくれなきゃ分かんない。」
「くっそ。」
狗狼が悪態をつく。そのまま貴宮くんを睨みつけた。
「てめぇ、なんのつもりだ。」
「そっちこそ。なんで今までマーキングしてなかったのに今日はしたんだ?」
「関係ねぇだろ。」
「あるから聞いている。」
「はあああ?!」
「手放したんだろ?」
「手放す?なに訳わかんねぇこと言ってやがる。こいつはな、オレが守ってんだ。今までずっとな。これからもそうだ。」
ぐるぐるとお互い喉を鳴らして睨み合いを始めた二人に挟まれて、どんどん震えが止まらなくなってしまった。
こわい。どうしよう。
貴宮くんは豹。狗狼は狼。どっちもフェイで純血種でもあり、上位種でもある。
グラスの僕じゃ威圧に負けちゃう。
「あなたたち。そこまでになさい。」
見かねた、おばあちゃんが割って入った。ほっとして息を吐く。店内には幸いお客様がいなかったけど。さっき帰った人しかいなかったけど。でも、これは駄目だよ。
「二人とも、話し合うなら裏でしなさい。店内では許さないわよ。」
おばあちゃんの一言で二人は威圧を引っ込め、視線を逸らしたけど僕はまだ少し怖かった。
「ウル。休憩してきなさい。」
「うん……。」
こくん、と頷いて再び片付けようとしていたカップに手を伸ばす。おばあちゃんがそっと手を握って止めた。
「いいから。ほら。」
「……ありがとう。」
頷いてバックヤードに向かうけど、後ろから二人の視線が突き刺さる。どうしても振り向けなくて、とぼとぼと歩いた。
おかげで次はいつくるかな、って期待してしまう。全然、話してもないけど。
「あいつ、又来てんな。」
狗狼が腕を組んで、いらいらしながらホールを見た。そこには、ここ一ヶ月の間ほぼ毎日来る男性客が一人座っていた。
「うん。」
「はー。しつっけぇな。」
「?どしたの?」
「あー。いや。お前は気にすんな。」
狗狼が、ぐりぐりと頭を撫でた後、調理に戻ったのを見て首を傾げる。
クシュダート卒業以来、あんまり触らなくなったのに。珍しいなぁと思いつつテーブルへと向かう。
「お待たせ致しました。」
「ありがとう。」
そっとホットコーヒーを置くと、ビクリと肩が揺れた。
「あの。」
「?はい?」
「もしかして、マッシブかパートナーがいる?」
「へ?」
それを初対面で聞くのはマナー違反だ。そりゃあここ一ヶ月毎日通ってもらってるから初対面ではないけれど。少なくとも友人でもなければ知人でもない。なのに、そんなこと聞いてくるなんて。
「あの……。」
「ああ、いや。忘れて下さい。」
そう言って立ち上がるとその場で会計して帰って行った。
なんだったのかな?
首を傾げつつ、カップを片付けていたら後ろから声がした。
「あいつの匂いがする。」
びくんと肩が跳ねた。だって、嗅がれてる。頭のてっぺん。すんって音がした。
「やっぱりまだ一緒いるのか。」
「え、えと。」
固まってたら凄い速さで狗狼が飛んできた。
「てめぇ。ここで何してやがる。」
「客だが。」
「だったら、こいつから離れろ。」
「それは失礼。」
両手を上げ、降参とばかりに貴宮くんが一歩下がった。途端に今まで近くにあった熱と匂いが離れて泣きそうになる。
「ウル、バックヤード行っとけ。」
「……なんで?」
「いいから。」
有無を言わさない狗狼の剣幕に怖くなる。でも、僕だって。
「やだ。」
「ウル。」
「理由言ってくれなきゃ分かんない。」
「くっそ。」
狗狼が悪態をつく。そのまま貴宮くんを睨みつけた。
「てめぇ、なんのつもりだ。」
「そっちこそ。なんで今までマーキングしてなかったのに今日はしたんだ?」
「関係ねぇだろ。」
「あるから聞いている。」
「はあああ?!」
「手放したんだろ?」
「手放す?なに訳わかんねぇこと言ってやがる。こいつはな、オレが守ってんだ。今までずっとな。これからもそうだ。」
ぐるぐるとお互い喉を鳴らして睨み合いを始めた二人に挟まれて、どんどん震えが止まらなくなってしまった。
こわい。どうしよう。
貴宮くんは豹。狗狼は狼。どっちもフェイで純血種でもあり、上位種でもある。
グラスの僕じゃ威圧に負けちゃう。
「あなたたち。そこまでになさい。」
見かねた、おばあちゃんが割って入った。ほっとして息を吐く。店内には幸いお客様がいなかったけど。さっき帰った人しかいなかったけど。でも、これは駄目だよ。
「二人とも、話し合うなら裏でしなさい。店内では許さないわよ。」
おばあちゃんの一言で二人は威圧を引っ込め、視線を逸らしたけど僕はまだ少し怖かった。
「ウル。休憩してきなさい。」
「うん……。」
こくん、と頷いて再び片付けようとしていたカップに手を伸ばす。おばあちゃんがそっと手を握って止めた。
「いいから。ほら。」
「……ありがとう。」
頷いてバックヤードに向かうけど、後ろから二人の視線が突き刺さる。どうしても振り向けなくて、とぼとぼと歩いた。
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