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événement principal acte 32 王宮

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 年が明け16歳を迎えた令嬢たちが、きらきらと瞳を輝かせて初めての王宮に足を踏み入れる。

 デビュタントボール。

 淑女としての仲間入りを果たし、社交界へデビューする日。それぞれエスコート役は父親や兄妹、従兄弟など。いるものは婚約者を伴って参加する。
 下位貴族の男爵家から王族に挨拶をし、デビューを寿いでもらうのだ。この時ばかりは王妃マニエラも出席することになっていた。挨拶を受ける場に腰掛け、一言ずつ声を掛ける。

 すっかり面変わりしたマニエラは美貌に翳りが出ていた。

 離宮に押し込められてから、一度として国王ロドスが訪ねて来ることはなかった。今も隣に腰掛けてはいるがマニエラのことは、王妃と言う名の置物として扱っている。話しかけることもなければ視線を寄越すこともない。完全に見限っていた。ただ不仲とは知られないよう、取り立てて邪険に扱うこともない。

 賓客として招かれているブラッドリーは、マニエラの反対隣に席が置かれていた。興味深そうに挨拶に訪れる令嬢たちを眺める。

 まだまだ子供だなぁ。流石に食指は動かん。

 内心品定めをしながら顔には笑顔を浮かべた。ロゼリアとはこの一ヶ月、王宮の中を案内させたりお茶をしたり庭園を散策したりして過ごした。
 この一ヶ月過ごしてみてよく分かった。

 至極退屈な女だな。

 腹黒いのはすぐ分かった。しかし、それだけで些か頭の回転が鈍い。長い間、自分に都合がいいよう周りを動かし、ぬるま湯に浸かってきたせいだろう。思うようにいかなければ途端に責任転嫁し、被害者ぶる。付いている王宮侍女長に当たるのがいい例だった。
 ブラッドリーには気付かれていないと思っているようだが、少し見ていればよく分かる。常日頃から積み重ねてきたものは、ふとしたところで露呈するのだ。

 王太子や王女はデビュタントには参席しない。あくまで主役は16歳になった淑女たち。連日ロゼリアと交流して既にお腹いっぱいだったブラッドリーにとっては良い息抜きだった。

 婚約は内定したが、同盟は難航している。婚姻までには進めたいが、どうしたものか。

 肘掛けに肘をつくと手のひらで顎を支え、挨拶に訪れる令嬢たちを見やる。ぼんやり思案していると、見覚えのある銀髪が視界をよぎった。

 顔を上げ見やると、そこにはフェリシテのエスコートをしていたエリオットと一人の少女がロドスの前に立っていた。

 ほう。なかなか。歳の割にはいい。熟れかけている感じがする。

 内心舌なめずりをしながらティアナを見つめる。
 チョコレートを溶かしたような艶やかな髪。ピンク色のくりくりとした大きな垂れ目。つんとした小さな鼻。ぷっくりとした唇。胸も尻も豊かで腰は薄く細い。何より他の令嬢にはなかった色香がほんのり漂っていた。

 興味深げに眺めていると、ちらりとエリオットが視線を寄越した。途端に背筋が、ぞくりとする。

 ここで威圧を放つか。

 くつくつと笑った。面白い。どうやらこちらが本命だったようだ。フェリシテは王女への牽制だったか。

「おめでとう。」
 簡潔に伝えると、エリオットが一礼しティアナがカーテシーで返した。ひらひらと手を振り見送る。

 ふうん。
 
 別の意味で興味が湧いた。
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