【完結】R-15 私はお兄様を愛している

événement principal acte 28 取引

dix-sept

　帰国したオーウェンはすぐさま皇弟として地質学者フェリシテにグルベンキアンの調査を依頼した。
　それでも皇家から皇弟の名で出すのだから急いでも一週間はかかる。フェリシテはエリオットに手紙を出した後、タウンハウスに引き籠っていた。ブラッドリーからの声かけに、疲労困憊となったフェリシテは皇妃に泣きついた。不憫に思った皇妃が流石に行き過ぎだとやんわり釘を刺した為、タウンハウスにまで押しかけられることはなかった。

　それでも長くは持たないと気を揉んでいたところ、待ち侘びていた返事が届いた。今回何故バルクではなくエリオットに助けを求めたのかと言うと単純にブラッドリーと面識があり、どれだけ厄介な相手かすぐ認識して動いてくれると思ったからだった。
　ただでさえ日を空けずブラッドリーに付き纏われ気持ちがささくれていた。ここでもしバルクに頼んで借りを作れば死ぬまで笑われる。だったらまだまともに話を聞いてくれそうなエリオットに頼んだ方がいい。彼なら間違いなく上手く手を回してくれる。そう思ったのだ。

　返事を読んで正直「何故オーウェン？」と疑問に思ったが、とにかく逃げたくて言う通りにすることにした。

　正直気まずいけれど。仕事の依頼だもの。直接関わることはないはず。

　そう自分に言い聞かせ、依頼が来るのを待った。手紙を受け取ってから三日後、待ち侘びた指示書が皇家の使者から齎された。

　堂々と迎えの馬車に乗り、グルベンキアンへと向かう。必要な器具は全て持ち帰っていたため困らなかった。

　とにかく早く皇都を出なくちゃ！あんな好色親父に付き合っていられないわ！

　そうしてブラッドリーが「そろそろイゾルト公爵令嬢を。」と言い出した時にはフェリシテはグルベンキアンへ到着していた。

　何とか、ブラッドリーから逃げ出したフェリシテ。

　しかしここからオーウェンの猛追が始まる。