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événement principal acte 28 取引
Six
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手紙が届いた翌日には先触れが届き、その日のうちにシークレット・ロータスを指定され夕刻エリオットはラッセルとアントンを伴い足を運んだ。
入室した途端、ダビデががっしりと両肩を掴む。
「アーガン伯爵。あとは任せてくれ。」
「ダビデ殿。」
「私が奴らを叩きのめしてやる。」
「いや、それは。」
「私の孫の婿だ。もう孫だ。孫夫妻に手を出しおって。絶対許さん。」
血気盛んに息巻くダビデの後ろでアリーとルディウスが苦笑する。
サムはと言えば前室の使用人控室に待機しており、ラッセルとアントンの三人で面会が終わるのを待っていた。
「お父様、まずは座って頂きましょう?」
「ああ。そうだったな。」
頷くダビデに背を押され、ソファに腰掛ける。アリーが微笑んだ。
「手紙、嬉しかったわ。ありがとう、アーガン伯爵。」
「いえ。」
「バルクが無理を言ったのでしょう?」
微笑むアリーを見て、力を抜いた。
「私が力になれることがあるなんて。こんなに嬉しいことはないわ。お父様じゃないけれど、任せてちょうだい。」
「ありがとうございます。」
エリオットが返すとルディウスが続けた。
「僕は表立って何が出来るわけでもないけれど。娘と婿に手を出されてじっとしてはいられなかったんだ。無理を言って王都に戻ってしまった。もし、迷惑だったら。」
「いえ。大丈夫です。」
実際ルディウスは社交界にあまり出ていなかったので容姿を知るものは少ない。貴族名鑑には濃紺の髪とピンクの瞳と記載されている為漆黒の髪で赤みが強いピンクの瞳では繋げて気付くものは皆無だろう。
王妃と王太子、側近のキースは月に二度接触していたが彼らとは髪を濃紺に染め会っていた。しかもそんなに長時間一緒にいたことはない。あくまで連絡役だったのだから。
王妃は離宮に蟄居。王太子は後継者教育のやり直し。側近のキースは王太子からの命とは言え王族を害する手伝いをしていた為、側近から外された。表立って処分は出来ないので王国騎士団で鍛え直すことになり見習いにまで落とされている。王宮にさえ行かなければルディウスがロディウスだったと知られる可能性は低いと言えた。
「それで、ティアナを守り、陞爵を断る為にレイリア夫人を紹介すればいいのかな。」
「はい。お願いします。」
「分かった。私から連絡しよう。」
頷くダビデ。
「私は一緒に向かえば良いのね?それだけでいいの?」
「はい。その、バルク殿からミレディス公爵夫人はメアリ夫人のご友人と伺いました。」
「私もお父様からそう聞いたわ。」
「そうだ、二人はとても親しかった。アリーはメアリと同じ色だし目元以外はよく似ている。会うのは初めてだがアリーがいればきっと耳を傾けてくれるだろう。」
頷くダビデにアリーが頷いた。
「そう言うことね。分かったわ。」
「しかし、表向き他国に住んでいることになっています。面会してもいいのでしょうか。」
エリオットはアリーに頼みつつ、懸念していたことを問うた。ダビデとアリーが頷く。
「そのことだけれど、アーガン伯爵の厚意で予備爵を譲ってもらったことを話すつもりなの。」
「しかしそれは。商取引の対価としてお譲りしたものです。厚意などと。」
「私もお父様も。バルクやルディだって。厚意だと思っているのよ。それに対価と言うにはお世話になりすぎだわ、私たち。」
微笑むアリーに胸が詰まった。
バルクが言っていたのはこう言うことか。
「ありがとうございます。」
「お礼を言うのは私の方よ。しかも今回のことではまだまだ恩を返しきれていないわ。これからも義母として頼ってちょうだい。」
胸を叩くアリーと頷くダビデ。微笑みながら視線を向けてくるルディウスの三人に改めて頭を下げる。
「力を貸してください。」
エリオットが初めて、自分のことで誰かに助力を求めた瞬間だった。
入室した途端、ダビデががっしりと両肩を掴む。
「アーガン伯爵。あとは任せてくれ。」
「ダビデ殿。」
「私が奴らを叩きのめしてやる。」
「いや、それは。」
「私の孫の婿だ。もう孫だ。孫夫妻に手を出しおって。絶対許さん。」
血気盛んに息巻くダビデの後ろでアリーとルディウスが苦笑する。
サムはと言えば前室の使用人控室に待機しており、ラッセルとアントンの三人で面会が終わるのを待っていた。
「お父様、まずは座って頂きましょう?」
「ああ。そうだったな。」
頷くダビデに背を押され、ソファに腰掛ける。アリーが微笑んだ。
「手紙、嬉しかったわ。ありがとう、アーガン伯爵。」
「いえ。」
「バルクが無理を言ったのでしょう?」
微笑むアリーを見て、力を抜いた。
「私が力になれることがあるなんて。こんなに嬉しいことはないわ。お父様じゃないけれど、任せてちょうだい。」
「ありがとうございます。」
エリオットが返すとルディウスが続けた。
「僕は表立って何が出来るわけでもないけれど。娘と婿に手を出されてじっとしてはいられなかったんだ。無理を言って王都に戻ってしまった。もし、迷惑だったら。」
「いえ。大丈夫です。」
実際ルディウスは社交界にあまり出ていなかったので容姿を知るものは少ない。貴族名鑑には濃紺の髪とピンクの瞳と記載されている為漆黒の髪で赤みが強いピンクの瞳では繋げて気付くものは皆無だろう。
王妃と王太子、側近のキースは月に二度接触していたが彼らとは髪を濃紺に染め会っていた。しかもそんなに長時間一緒にいたことはない。あくまで連絡役だったのだから。
王妃は離宮に蟄居。王太子は後継者教育のやり直し。側近のキースは王太子からの命とは言え王族を害する手伝いをしていた為、側近から外された。表立って処分は出来ないので王国騎士団で鍛え直すことになり見習いにまで落とされている。王宮にさえ行かなければルディウスがロディウスだったと知られる可能性は低いと言えた。
「それで、ティアナを守り、陞爵を断る為にレイリア夫人を紹介すればいいのかな。」
「はい。お願いします。」
「分かった。私から連絡しよう。」
頷くダビデ。
「私は一緒に向かえば良いのね?それだけでいいの?」
「はい。その、バルク殿からミレディス公爵夫人はメアリ夫人のご友人と伺いました。」
「私もお父様からそう聞いたわ。」
「そうだ、二人はとても親しかった。アリーはメアリと同じ色だし目元以外はよく似ている。会うのは初めてだがアリーがいればきっと耳を傾けてくれるだろう。」
頷くダビデにアリーが頷いた。
「そう言うことね。分かったわ。」
「しかし、表向き他国に住んでいることになっています。面会してもいいのでしょうか。」
エリオットはアリーに頼みつつ、懸念していたことを問うた。ダビデとアリーが頷く。
「そのことだけれど、アーガン伯爵の厚意で予備爵を譲ってもらったことを話すつもりなの。」
「しかしそれは。商取引の対価としてお譲りしたものです。厚意などと。」
「私もお父様も。バルクやルディだって。厚意だと思っているのよ。それに対価と言うにはお世話になりすぎだわ、私たち。」
微笑むアリーに胸が詰まった。
バルクが言っていたのはこう言うことか。
「ありがとうございます。」
「お礼を言うのは私の方よ。しかも今回のことではまだまだ恩を返しきれていないわ。これからも義母として頼ってちょうだい。」
胸を叩くアリーと頷くダビデ。微笑みながら視線を向けてくるルディウスの三人に改めて頭を下げる。
「力を貸してください。」
エリオットが初めて、自分のことで誰かに助力を求めた瞬間だった。
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